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古くて新しい

『ウッドストック行最終バス』は20年ほど前の作品ですが、いままでにないような新しい感覚で読めるミステリィ作品でした。

密室や時間差を使わなくても謎を深める書き方ができる、というのが面白かったです。

あらすじ

ヒッチハイクした車に乗り込んだ女性のうち、一人は殺害され、もう一人は行方不明になります。その後、誰も名乗りでない、というのがメインの謎。

──誰が彼女を殺害したのか?

──また、もう一人の女性はどこへ消えたのか?

その謎に立ち向かうのが、モース主任警部とルイス部長刑事。モースがホームズで、ルイスがワトソンと思って間違いないです。

変わっているのが、凶器から指紋を調べたり、被害者の女性の体内に残った体液を分析したり──というシーンが全く出てこないところ。科学捜査が発達していないような、昔の話でもないのに。

この小説は、モースの捜査方法が独特なのが特徴です。ちゃんと足を使った聞き込みもしますが、ほとんどがモースの妄想を元に話が進んでいきます。頭の中だけで推理を進めていくのはよく見ますが、この作品ではそれが徹底されているのが面白い。

ウッドストック行最終バス

ウッドストック行最終バス

  • 大庭 忠男、 コリン デクスター
  • 早川書房
  • 1988-11
  • ¥ 714
  • Book

ほとんど妄想

モースは、目撃者の女性が覚えていた、

「あすの朝は笑い話になるわ」

というセリフから推理を進めます。──そして、ほとんどその一言から解決まで持っていった、というような印象を受けました。

──いや、ちゃんとした聞き込みや、現場検証も行っています。しかし、ほとんどのページでモースは自らの思考に浸っています。もう、ほとんど妄想に近いような推理で最後まで突き進んでいく感じ。

解決後もモヤモヤ

最後に、事件は解決します。「犯人」は逮捕され、「事件の真相」は暴かれます。

──なのですが、「解決編」もモースの独白で、真相なのか妄想なのかも曖昧。ところどころルイスが突っ込みを入れないと、何を言っているのかも判らないくらい。

そんなわけで、「犯人」が捕まってもスッキリとはしない。しかし、描写が甘いとか、トリックが陳腐というわけではありませんよ。

最後の方で、切ないシーンが出てきたり、事件の真相も悲劇的だったりで、読み終わったあとはちょっと胸苦しい感じが良かったです。

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