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『四季 冬』

『四季』四部作の完結編。しかし、いったい、何が終わったんだろう?

『冬』はいつの話なのか、はっきりした描写がありませんが、「S&M シリーズ」や「V シリーズ」よりも後の話であることは間違いなさそうです。そして、四季の「これから」について暗示している場面が多いのです。

彼女は、どこへ向かうのか?

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四季 冬
森 博嗣
講談社 2006-12-15
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by G-Tools , 2007/06/20

どこへ行くのか?

冒頭に書いた疑問の答えとして、懐かしい場面が四季の中で再生されます。

「私たちは、どこへ行くと思います?」

「どこへ?」

「どこから来た? 私は誰? どこへ行く?」

「貴女は、貴女から生まれ、貴女は、貴女です。そして、どこへも行かない」

『四季 冬』 p.208

そうそう、終わりの方で『有限と微少のパン』の一場面が出てきます。四季からの視点で「あの場面」を見るのですが、四季の天才性を端的に示した、いいシーンですね。これ、他の作家が書いた「天才といわれているキャラ」でマネができる人物って、どれくらいいるのだろう……?

──あ、"L"ならできるかな(ここ、読み流すように!)。

わからない!

全編、詩的な表現がちりばめられています。四季がすぐ思索にふけるのが、まるで、某警部が主人公の海外ミステリィ作品のよう(全く似ていないが)。

中でも面白かったのがこの部分。四季にしては珍しく「わからない」ことがあり、それが理由で人に会うのが楽しみになった、と彼女は言う。

「自分に新しいところがないのに、他人に会ってもしかたがないでしょう? そういうのは苦痛」

「それ、僕には意味がわからないよ」

「そうね、男性にはその概念がないのかもしれない。塗り分け問題のようなものなんだけれど」

「それ、よけいわからないよ」

『四季 冬』 p.31

確かに(男性の)自分も理解に苦しみますが、自分の知り合いの女性が、これと似た発言をしていたのを思い出しました。女性には、よくわかる感情なのでしょうか?

男性にはない概念を使った、つまり男性読者の盲点を突いたトリックが書けるのでは、と発想しました。

また、過去の事件について四季に尋ねるシーンも疑問。

「(……)失礼かと思って遠慮していたけれど、やっぱり、いつかはきかなければならないと思っていたことがあるんだ」

「何?」

「彼が命乞いをしたら、殺さなかった?」

『四季 冬』 p.102

その問いに対する四季の答えが、とても意外でした。「彼」の言動の謎も、『四季』シリーズで何となくわかりましたが、四季の思考はトレースできませんね。

やはり、この作品に相応しい言葉は「わからない!」ですね。わからない、で正解、という感じ。森ミステリィから勝手に学んだことのひとつが、「わからない、と言うのは思考の放棄だけではなく、わからないのが正解ということもある」ということですね。

まだしばらくは、四季という女性、そして森作品に対して「わからない!」と叫び続けたいです。──そう、百年ほど。

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