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『フィッツジェラルドをめざした男』

ホーギーが探偵役(?)として活躍する、デイヴィッド・ハンドラーの人気シリーズです。

元スター作家、現ゴーストライタのホーギーの元に、若き天才作家・ノイエスの伝記を書く依頼が入ります。

愛犬・ルルと共にノイエスに会い、彼に昔の自分の姿を見るホーギー。さっそく執筆のための取材を始めます。しかし、取材中止の脅迫を何者からか受け、ホーギーの元妻・メリリーまで危険にさらされます。

──はたして脅迫者の正体は? その狙いは? 天才作家の過去に何があったのか?

また、ホーギーにいい感じの女性が現れ、メリリーとの仲が危うくなったり、警部補・ヴェリー(出るたびに格好が違う人)が初登場したり、盛りだくさんの内容です。

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フィッツジェラルドをめざした男 (講談社文庫)
デイヴィッド ハンドラー David Handler 河野 万里子
講談社 1992-01
楽天ブックス: フィッツジェラルドをめざした男

殺人小説家 (講談社文庫) ブルー・ブラッド (講談社文庫)

by G-Tools , 2007/09/30

ホーギーの憂鬱

どのページを開いても、ReBlog ──もとい、引用に耐えうる、魅力的なセリフばかりです。

自分から見ると、スチュワート・ホーグは、何不自由ない暮らしをしているように見えます。別れたとはいえ人気女優といまだに関係が続いているし、(ゴーストとはいえ)書いた本は軒並みベストセラ入りしているし、着ている物はいつもキマっている。

そんなホーギーが、こんな弱音を吐く場面があります。

一方僕は、僕にとって輝かしい太陽の季節は終わったのだという、暗い現実に直面していた。僕はまもなく四十になろうとしているのに、それにふさわしいようなものを何一つとして持っていない──(……)

未来など、どこにもありはしない。だが僕は、懸命に自分の未来を手探りしようとしているのだ。

『フィッツジェラルドをめざした男』 p.42

今をときめく(恥ずかしい言葉だ)スター作家、ノイエスと比較してのこととはいえ、いつもクールなホーギーらしからぬセリフです。

それでも、"懸命に自分の未来を手探り"していくホーギーの姿は、応援したくなります(年上だけど)。

──まぁ、実際は、メリリーに振り回されたり、愛犬・ルルの魚臭い息に悩まされたりしている姿のほうが多いですが……。

そう、このホーギー・シリーズは、ハードボイルド小説というより、一種のラヴ・コメディとして読むこともできるのです。メリリーとホーギーとの会話は、レベルが高すぎて、そこから何かを学ぶのは難しいですが……。

愛しのメリリー

ということで、離婚したあともホーギーとメリリーはたびたび会っています。お互い、もう「いい大人」なのですが、どこか子供のような純情。

メリリーは、こんなことを言ったりします。

「こんなに淋しい思いをするのは、あなたのせいだわ、ホーギー」

『フィッツジェラルドをめざした男』 p.87

また、ホーギーにいい感じの相手ができた、とわかったメリリーは、

「あー、私たちって、終わりなのかしら?」

「離婚した時に、もうそういうことになっちまってると思うんだけど」

「あれは形式だけのことよ」

「形式だけでするのは結婚だけと思ってた」

『フィッツジェラルドをめざした男』 p.300

──こんなことを言う。ホーギーも、わざとのように間の抜けたことを言っていますが、内心は、どうだったんでしょうね。

また、メリリーが隣の部屋にいる、という状況のホーギーが面白い。

僕は、トルーマン・カポーティとともにベッドに入った。僕としては第二志望の相手でしかないのだが、まあしかたがない。

『フィッツジェラルドをめざした男』 p.276(強調部分は、原文では傍点)

こんな感じで、なんというか、安い青春小説のような状況なのに、こんなにも洒落た書き方ができる、著者のデイヴィッド・ハンドラーはやっぱり凄い。

トルーマン・カポーティ - Wikipedia

タイトルの意味

作中に起こる事件、については皆さんで読んでもらうとして──。

というか、ミステリィ部分もちゃんとしていて、最後に(やっぱり)どんでん返しがあって楽しめますよ。

最後のほうで、タイトルの「意味」がわかるところで、やられた、と思いましたね。

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