亜細亜ノ蛾 - Weblog

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December 01, 2007

『時計館の殺人』 大がかりなトリックの影に潜む思い

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『時計館の殺人』

じつは、綾辻さんの小説は初めて読みました。──という、イマドキのミステリィ・ファンを名乗るのが恥ずかしい、asiamoth です。

『時計館の殺人』は、『館』シリーズの 5 作目です。超が付くほど有名なシリーズで、さすがに名前だけは知っていました。

ref.: 綾辻行人 - Wikipedia

読んでみると、──これは面白い! 古典ミステリィへの愛が ふんだんに感じられる作品ですね。たぶん、元にされたのは海外のミステリィだと思いますが、劇中に時計台が出てくるので、『女王蜂』(石坂 浩二 版)を思わせますね。

本が分厚いところやペダンチック(衒学的)なところ、探偵役が犯人当てをする お馴染みのシーンで饒舌になるところ──などは、京極夏彦さんを彷彿とさせますね(こう言うと失礼か)。初めて『姑獲鳥の夏』を初めて読んだ頃を思い出しました。

ストーリィ

有名な建築家・中村 青司(なかむら せいじ)の設計による、「時計館」。館主と その娘を含め、この館の関係者が何人も死んでいるという──。

出版社に勤める 江南 孝明(かわみなみ たかあき)は、雑誌取材のため、霊能者や大学の超常現象研究会の面々と この館を訪れる。「時計館に少女の亡霊が出る」という噂の、真相解明のためだ。

三日間、館内に閉じこもった一行に、様々な怪奇現象が襲いかかり、やがて死者が出る──。

一方、江南と三年ぶりに再開した 島田 潔(しまだ きよし)も また、時計館に向かっていた。珍しい時計を一目見ることが目的だった彼は、やがて事件に巻き込まれる。

はたして、江南と島田は、無事に この館から出ることができるのか? 殺人犯の正体は? そして、この館が建てられた、本当の目的とは?

「ミステリー研」

W** 大学の超常現象研究会、という伏せ字にしても丸わかりの大学にある会が出てきます。

面白いのは、作中で「超常現象」のほうは「ミステリー」、推理小説は「ミステリ」と書かれています。ある会員が、推理小説が好きなのに、騙されて「ミステリー研」の ほうに入会させられた、というくだりがあります。──案外、こういう人、多いのでは?

まぁ、ほとんどの人、つまりはミステリィを読まない人にとって、mystery と occult(オカルト)の差、なんてわからないですよね……(これも京極さんがネタにしていたな)。

トリック

さて、ミステリィには付きものの、トリック。本作品も、大がかりなトリックが用意されています。

「新本格派」と評される、綾辻作品なので、当然のように「事件を解く手がかりは、すべて読者に公開されている」というルールが厳守されています。それに、伏線も あとで必ず回収されるので、ミステリィ・ファンには、すぐ本筋のトリックは わかるでしょうね。「大どんでん返し」を期待した人は、ちょっと肩すかしかも しれません。

しかし、いつも思うのですが、ミステリィって「パズル本」じゃ ないですからね。トリックの善し悪しだけで語るのは、ミステリィ作品に対して失礼な気がします。

たとえば──、本作品の「犯人」が、10 年もの間 ずっと胸中に抱いていた思いは、どんなものだったか? 館主が、時計館を建てるに至った心境は? 事件の真相を知り、館を去った者は、今後「犯人」を どうするのか(何ができるのか)?

──そういったことに目を向け、ゾクッとしないような感性の人は、ミステリィを読んでも楽しくないだろうな、と想像します。

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