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『バクマン。』 20 ページ 「未来と階段」 (週刊少年ジャンプ 2009 年 06・07 合併号)

john singer sargent: carnation, lily, lily, rose CreativeCommons Attribution License, freeparking

面白いマンガとは何か? 最近、よく考える。

面白いマンガについて誰かに聞くと、たいていは「好きな」マンガの名前を挙げる。それも当然である。けっきょく、多くの人に好かれるマンガが、面白いマンガなのだろう。とすると、ヒット作品・売れたマンガこそが、面白いマンガということになる。──この結論に違和感を感じないだろうか?

『バクマン。』は最高に面白し好きなのだが、少し気になる点がある。

──サイコーもシュージンも、最近はちっとも楽しそうにマンガを描いていない。初めてマンガ作品を仕上げたときの感動は、どこかへ行ってしまった。マンガを描くのが日常で、入賞するも当たり前に感じている。

そんな 2 人を見て、それでもマンガ家を目指す子どもたちは、いるのだろうか。いるとしたら──将来は有望だ。そう、プロの世界は甘くない。だからこそ、面白いし目指したくなるのだろうな。

チャンスはやらねー

エイジの職場(兼・自宅)がヒドい。

まず、新妻エイジと仕事をする、というだけで常人には耐え難いだろう。さらに、アシスタント用の机が向かい合わせで、しかも接近している。これは誰でも居心地が悪いはずだ。ここに人数を追加するとなると、もっとタコ部屋のようになってしまう。マンガ家のアシスタントは、このような環境で仕事をするのが通常なのか?

この爆音が流れる劣悪な環境で生息できるのは、エイジだけだ。そりゃ、下山も辞めるわ(誰? という人も多いだろうが……)。

マンションを用意してくれたのは集英社だし、連載に向けての準備も中途半端だったのに、雄二郎が大きな頭──じゃなくて大きな顔をしている感じがイヤだ。それとも、編集者の一存でアシスタントに「チャンスを与える」権限があるのだろうか? ちょっとこのあたり、マンガ家と編集者・アシスタント・編集長との関係がよく分からない。

前にも書いたが、編集者の仕事について疑問がある。

たとえば、服部がサイコー・シュージンに面会するのは勤務時間内だ。2 人には仕事として会っている(焼き肉を食べに行ったのは例外として)。それは当然だ。将来のジャンプ作家のほとんどは、持ち込みから生まれる。地方の人にはツラいところだが、この持ち込みでの編集者との面会・相談が、デビューへの重要な道のりになっているのだ。編集者にとっても、持ち込みの原稿を読むのは大事な仕事のはずである。

その重要な持ち込みを──たまたま手が空いていた編集者によって読まれて、以降も同じ編集者が担当する。少なくとも『バクマン。』からはそう読み取れるのだが、あまりにも運任せに感じてしまう。

実在する服部雄二郎氏とは違い(?)、『バクマン。』での雄二郎は、グータラな編集者として分かりやすく描かれている。初めての持ち込みで、そんな編集者に当たってしまったら──悲惨だ。有能な編集者でも、相性が悪い場合もある。

バクマン。 - Wikipedia (実在する編集者について記述あり)

編集者が原因でデビューできなかった・売れなかったマンガ家もいるだろう。あまり表には出ない話だろうが……(ときどきリーク情報は目にするけど)。

──まぁ、書きながら思ったけど、それは普通の会社でも同じか。子は親を選べず。部下は上司を選──ぼうと思ったら、いつのまにか辞表を書いていた。何を言ってるのか わからねーと思うが(ry

(いちおう自己フォローしておくと、上の段落はネタであって、自分が会社を辞めた・辞めたいワケではない)

王道じゃ無理なのかな

数ページ前に、金未来杯のエントリーくらい当たり前のようにサイコーが語っていた。エイジも「亜城木先生」の読み切りが載る・1 番になる、と信じ切っている。──まさか、それが死亡フラグだったとは……。

この時の 2 人の落ち込み具合は、容易に想像できる。似たような経験を自分の人生から引っ張り出すのは難しいが、失恋の味に似ているのだろう。そう想像した。受験に落ちた経験がないので共感できないが、それとも似ているはず(落第するようなレベルの高いところを受けなかっただけ)。

初期のころならともかく、最近のサイコーで心が折れた描写は珍しい。初めてではないか。それだけ、今回の作品に自信があったということだ。

金未来杯や赤マルにすら 落ちることでショックを受けるというのは、実際にマンガの持ち込みをしている人から見れば、相当にレベルが高く見えるに違いない。もう、そんな位置まで 2 人は来ている。落ち込んでいるヒマはない──と、第三者からは簡単に言える。当事者にはツラいだろうが……。

聖ビジュアル女学院高等部♪

今の俺たちには ついてけないとシュージンが言っているコマを、よく見て欲しい。微妙に頭身が下がった、ように見える。よくあるギャグの表現で、「ほおがふくれて」見える。『HUNTER×HUNTER』の冨樫義博先生がよく使う手法だ。「ちゃんと、アニメの世界に ついて行ってんじゃん!」というツッコミ待ち、と見た(何が?)。

「たんに、この角度から見たら そう見えるだけ」かもしれない。しかし、次のページ・一番下のシュージンとは、明らかにホホのラインが違う。──どうでもいいことだが、小畑健先生がこの表現を使うのが珍しかったので、しつこく書いてみた。アニメ絵の絵柄も描けるし、本当に器用な人だ。

売れる小説を書くために、あらゆるジャンルのヒット作品を読んだ、とシュージンは語っていた。その割りに「百合」を知らない、というのが気になる。まぁ、ここは読者に向けて分かりやすく書いたのだろう。

自分のように(アナタのように?)、ネットの広大な海にどっぷり漬かっていると、何が常識かを見誤ってしまう。たぶん、「ユリ」と言われても、花の名称以外にはピンと来ないのが一般的だ。まして、「女学校・イコール・百合が当たり前」なんて思考は──どう考えても一般的ではない。──よね?>どなたか

目が笑ってない

ジャンプの主人公は、みな何を考えているか分からない。

ギャグマンガは言うまでもなく、バトルマンガの主人公も普通の考え方をしていない。まず、戦って解決する、という時点で共感できないのだが、それを言うとマンガが成り立たないので置いておく。その上で、理解ができない言動が多い。

たまに「ゴンに共感した」などという感想を目にすると、ちょっと引いてしまう。『H×H』は大好きな作品だが、それは主人公のことを共感・理解できるという理由ではない。「理解できない」から好きだ

自分は、作品や主人公に対して共感を求めていない。『寄生獣』を読んで泣いた、と以前に書いた。そのときに流した涙も、主人公への共感からではない。想像上のキャラクタが、自分の理解できる範囲内でしか動いていなかったら、興ざめだ。もっと自分には想像もできない行動を取って欲しいものだ。

バクマン。 NO.19「デビューと焦り」 マンガの泣きと笑い : 亜細亜ノ蛾

サイコーの次のセリフにはシビレた。

恥ずかしいと 思ったとしたら 後列で映った ことだと思う

自分が好きな女の子が、コスプレをしてテレビに映っている──。それを見た(童貞の)男子高校生の口から出た言葉とは思えない。しかも、服部からのツラい知らせの直後だ。強がりでも何でもなく、サイコーは本心から言っている。自分には まったく共感できないから、スゴいのだ。

ただ──本当に亜豆もサイコーと同じ考えなのかが分からない。シュージンが言うような恥ずかしがり方ではないか。──と思ったけど、自分からオーディションを受けて、声優の仕事をこなし、衣装を着てカメラの前に立っている以上──イヤイヤ出ているわけはない、というのが正解か。

そう考えると、テレビでタレントを見て「こんな事して恥ずかしくないのかね(笑)」などと言うほうが恥ずかしい。「ヒント: 仕事」で終了する。まぁ、「世の中に恥ずかしい仕事などない」と断言できるほど世の中を知っているわけではないが……。

あ、いま気が付いた。この亜豆のテレビ出演について、サイコーはメールを送っていない。たしかに、コメントが難しい。自分なら、なんと書いて送るだろう。何を書いても、うわべだけの言葉になりそうだ。

みんなが認めている

服部がナイス過ぎる!

このラスト 3 ページの展開は神がかっている。それで いいと言う服部なんて、神がかり過ぎて死神・リュークみたいな顔だ。──という冗談はさておき、服部は本当に他人の気持ちが分かる、いいヤツだ。「フ」が付く女子は、こういう男に惚れて欲しい。アゴがとんがっていなくても、いい男はいるもんだ(何の話だ)。

最後のページでは上の人が読んだ批評に注目して欲しい。サイコーとシュージンが「何を描きたいか」ではなく「売れるものが描きたい」と聞いて、この若さで見上げたプロ根性であると感想を書いている。

シロウトの第三者から見ると、「自分が何を描きたいのかを見つけろ」というアドバイスが来る、と想像したはずだ。アンケート至上主義・商業主義、といった言葉が頭に浮かぶ。それは、プロの現場では当然のことだ。売れる価値のある作品を世に出そうと、作家も編集者も努力している。行きすぎの面もあるが……。

それでまた最高に良いのが、シュージンの反応である。涙もろいシュージンが感極まって泣くのは いつものこととして、そのあとで服部に自分で 描いてない ですよねと聞く。泣きながらこのセリフが出てくるのはスゴい。シュージンの発想と切り替えの速さがよく分かるひとコマだ。

今週号では、改めてプロの厳しさが感じられた。作家になる道は、甘い気持ちでは進めない。「夢を見る」だけで終わってしまう。今の自分に何ができるのか、じっくり考えてみr ──って言っている間に面白い文章を書け! が正解。

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