『バクマン。』 24 ページ 「ノートとキャラ」 (週刊少年ジャンプ 2009 年 11 号)

Frenchie Bone-a-Part (by akahodag) (by akahodag)

物語の中に描かれたキャラクタのセリフを、そのまま作者の意見として取るのは問題だと思う。

それでは、鳥山明さんや冨樫義博さんは「ちょっぴりエッチでバトルマニア」になってしまう(『てんで性悪キューピッド』って知ってる?)。尾田栄一郎さんは(現実世界の)海賊を応援していることになる。──という冗談はさておき……。

今週号の『バクマン。』では、福田がジャンプのシステムに対してかなり突っ込んだ意見を編集者にぶつけている。そこに作者の見解は入っていると思うが、「福田 = 大場」と 100% 信じ込むのは危険だ。

この福田と雄二郎との会話を聞いて、「大場つぐみは福田と同じようにジャンプに対して不満を持っている」と思う人は多いだろう。なぜなら、福田のセリフを考えて書いているのは大場さんだからだ。しかし、その考え方が通用するならば、雄二郎の言い分──「編集者のやり方に口を出すな」も大場さんの意見として見なければ公平ではない。

「あくまでも大場さんの意見は福田と同じで、それに対する編集者の反応を象徴しているのが雄二郎だ」という見方はいくらでもできるが、少しゆがんだ考えにも思える。それに、実在する「服部雄二郎」氏と雄二郎は同じ名前だから、同じ意見だろう、となってしまうのではないか。

もちろん、福田の意見が自分の考えとして見られることを、大場さんは熟知した上でネームを描いたはずだ。『バクマン。』をただの「バクロ・マンガ」として読んでいる人も、想定の範囲内だろう。そして、どの程度まで再現されているかは知らないが、そのネームがマンガとして週刊少年ジャンプに載っている事実もスゴい。ジャンプの懐の深さを感じた。

ただ、意地の悪い見方が好きな自分からすると、「この程度までならジャンプ誌上に載せられるのか」と少し思った。もっとヤバいこともあるのだろう。──『NINKU -忍空-』の作者とか……(「にんくう」が「人喰う」と変換されて、ある意味では合っている、と思ってしまった)。

天下取ってからに しろ

福田と雄二郎との議論──トークバトルは続いている。

雄二郎が言う口ばかり達者というのは、誰だろう。急に良い関係へとなりつつあるエイジにすら、雄二郎は口達者と思っているのだろうか。ますます自分の中で雄二郎が嫌いになっていく。

それに、福田に対して、編集者の立場から圧力を掛けるような言い方もズルい。編集部で言うなよという言いぐさは、どちらかというと「自分が見込んでエイジのアシスタントに付けた人間が暴言を吐くと、自分の立場がアブナい」という自己保身にしか聞こえないのだ。

だんだんと坊主憎けりゃ袈裟まで憎いな書き方になっているので自重する。なぜ雄二郎にこれほどいらだちを感じるのか、その理由は明確である。マンガ自体に対する雄二郎の意見や姿勢が描かれていないからだ。

いまのところ、雄二郎はジャンプ編集部のシステムしか語っていない。「典型的なマンガ雑誌の編集者」の悪い面として雄二郎を描いているフシがある。サイコー・シュージンと服部との打合せのような、熱い場面が雄二郎にはないのだ。たぶん、作者が意図的に そう描いているはず。このあと、エイジと雄二郎との打合せが出てきたときに、雄二郎への評価が変わることを期待する(もっと雄二郎のダメな面が出そうだけど……)。

読み味が同じ

福田が言うとおり、ジャンプの新連載マンガは、どれも同じに感じていた。

面白いマンガ雑誌を作るためのアンケートのシステムが、いつの間にか作品の展開までを決めてしまっている。

この場面は、最終的に福田が言い負かされる形で終わっている。それでいい。言い負けるまで自分の考えを通そうとした福田も見事だし、ジャンプ編集部としての正論を通した雄二郎も良い。

キャラとしては嫌いな雄二郎だが、言っていることすべてが悪いとは思っていない。少しだけ雄二郎は揚げ足取りをしているようにも聞こえるが、たしかに福田は自分のことを棚に上げている。ジャンプのやり方の中でも、いくらでも面白いマンガは描けるはずだ。福田自身も、そのようなネームを描いている。

ところで、ジャンプは一年間で何本の新連載が載るのだろうか。実際に生き残る本数を考えれば、年に 5 本くらいでも構わないような気がする。でも、それだと確実に長期の連載ができる作品しか載せられないか……。それがある意味では理想だが。

今回の福田と雄二郎とのやり取りを聞くと、自分には「福田は編集者向き」という思いが一段と強くなった。これからも編集者とぶつかりながらマンガ家としてやっていくのは、福田にとって良いことなのか。他誌での連載を考えても良いと思う。福田が自分の意志を貫き、ジャンプのシステムと戦いながら、それでもジャンプ誌上で連載を始められるのだろうか。

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