『バクマン。』 31 ページ 「火曜と金曜」 (週刊少年ジャンプ 2009 年 18 号)

Vintage Postcard ~ Cupid (by chicks57) (by chicks57)

今回の感想の範囲には、『hide out door』の掲載分が含まれる。

蒼樹と中井の作品は、「金未来杯に出る福田組の中では一番下の評価」という前フリが、今までに散々と描かれてきた。それなのに、たとえば見吉のウケは良い。サイコーとシュージンも、中井の絵の完成度におどろいている。

いつものように、「落として上げる作戦」だったのかもしれない。

それだけに、今回で上がった『hide out door』の評価が落ちないか、すこし心配である。

亜城木夢叶と同じく、蒼樹と中井は原作と絵に分かれて描く。だからというわけではないが、『hide out door』は『疑探偵 TRAP』の一番のライバルだと思う。

速報 見た?

服部がこっそりと席を立って、シュージンへ速報を伝える。雄二郎と席が近いから、こういったときには、お互いに意識をするのだろう。

気持ちは何となく分かるが、速報は編集部にいれば誰でも見られるのだから、コソコソする必要はないはずだ。それとも、デビュー前の作家に速報や本ちゃんの結果を知らせることは、禁止されているのだろうか。

結果を聞いた亜城木と見吉は、大喜びする。──今までに何度も、服部の報告でサイコーとシュージンは泣いてきたのだが……。

たのむ……

『疑探偵 TRAP』の本ちゃんを見て、まるでドナルドのような顔で喜ぶ服部が笑いを誘う。しかし、雄二郎と同様に、すぐには喜ばない。編集者を長年やっていると、ぬか喜びに終わることが多かったのだろう。冷静に確認作業へ移っている。

このような、「本当に良い結果が出たのかどうかが確定していない状態」というのは、相当にヤキモキするだろう。

サイコーとシュージンは、自分のほうが上と信じて、連載用のネーム作りに専念している。これは、相当にガマン強い。普通だったら、福田のようにガマンできないだろう。──まぁ、普通の社会人はラーメンをすすりながら電話しないけれど(それほど雄二郎をナメている、ということか)。

ふたつにひとつなの

蒼樹と中井の合作である『hide out door』が掲載された。「という話」だけではなく、ちゃんと絵で描いているのが、やっぱりスゴい。

小説だったら「背景が点描で緻密に描かれている。これには真城も高木も、ただただ驚くばかりであった」とかなんとか書いて良い。読者も「そうなのか」と うなずくだろう。しかし、こうやって絵にしなければ、マンガの読者は納得しないのだ。

「観客が大笑いするマンザイ」なども、描くことは難しいだろう(とくに固有のマンガ作品のことを言っているわけでは・以下省略)

以前、福田は中井のネームを見て、意味の分からないマンガというような評価をしていた。そのせいで、中井の作風を誤解してしまう。てっきり『恋の門』(傑作!)に出てきた「石のマンガ」のような、複雑怪奇なゲージュツサクヒンを中井は描くのかと思っていた。

いざ『hide out door』を見てみると、ちゃんと少年マンガの絵として成り立っている。

女性キャラの顔は蒼樹が下書きを描き、ほかの描写と仕上げは中井が描くのだという。サイコーは中井の絵の弱点を「キャラクタの顔」と言っていた。なるほど、男の子の顔は、ちょっとキャラが弱い。しかし、絵柄には良く合っている。描き慣れれば、もっと表情がよく出てくるだろう。

じつは、亜城木夢叶の当面のライバルは、福田ではなく蒼樹・中井コンビである、と自分は見た。

すっごい キレイな絵

『hide out door』を見て、見吉は素直に好きだと言っている。

週刊少年ジャンプなのに、いまでは女性の票がアンケート結果を大きく左右するらしい。見吉のように、中井の絵柄が好きな女性は多いだろう。少女趣味の男子もいるはず。

蒼樹と中井の作風を評価する人が多いから、亜城木夢叶のライバルになる、というワケではない。別の理由だ。詳しくは、明日の感想で書く。

本当ですか !?

よりによって、『hide out door』の速報が出たのは「8 月 31 日」だった。サイコーとシュージンが決裂するリミットとなった日だ。あれから、もう一年が過ぎたのか……。

さて、速報を聞いた中井が喜ぶ姿は、今週号で最大の問題だ。

どこがかと言うと、それはもちろん、中井の「毛」──ではない。

中井が思い浮かべた蒼樹を見てみよう。──どう見ても幼い! 本人は 20 代だと思うが、想像上の蒼樹は 14 歳くらいに見える。

少年探偵・あるいはジッパー使い:
「ペロッ──これは犯罪の味!」

──冗談はさておき。

絵を描くということは、物を見ることである。絵のウマい人とは、自分が見た通りに描く人のことだ。ただし、それは写実的に描くという意味ではない。

目というレンズに映ったモノを、脳が解釈する。その「見え方」は、人によって異なるのだ。写真家とマンガ家では、同じ物を見ても感じ方が違う。マンガ家のほうが、余分なところを切り捨てた世界を見るはずだ。そして、たぶん、自分勝手な世界を見ている。

中井には、蒼樹が「ああ」見えるのだろう。それでいい、それでいいのだ。中井は、このままマンガと蒼樹に命を賭けて欲しい。

『バクマン。』とは、一人の女性とマンガに人生を賭ける博打打ち・中井の物語である──。あれ?

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