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HUNTER×HUNTER No.300 『保険』 (週刊少年ジャンプ 2010 年 15 号)

Dundrennan Abbey (by etrusia_uk (Away for a while)) (by etrusia_uk (Away for a while))

今週号の『ヘタッピマンガ研究所R』は、前回と引き続き、冨樫義博先生がゲストです。今回はさらにネーム作りの真髄に迫っている感じで、必見です!

冨樫先生は「ヒーロー戦隊もの」について言及されていますが、これ、どう考えても少年マンガに対する苦言ですよね……。

ポーズ決めてる 主人公に一切 手を出さない敵に 納得がいかなかったん ですよ(……)

敵が自分の能力や 弱点を大事なとこで ベラベラ喋っちゃったり とかね

『ヘタッピマンガ研究所R』 Step17

たとえば、敵の総大将の能力を封じるためだけに生物兵器を作るような小心者なのに、その肝心の兵器をフラフラと出歩かせて、そのあげくに破壊されかける──そんなラスボスは、あり得ないんですよ。少なくともそんな人物は、『H×H』の世界ではタコ(「タコってゆーな!」)にも劣る。

『ヘタッピ』のサイトウ氏は、「ハンター」のキャラは 全員知将の風格という評価をしていました。某マンガに出てくるキャラは、「全員がちしょう」という感じですね……(池や沼が好きそう、という意味ですよー)。

あのマンガ(どれ?)の世界観や人物は好きなのに、そいつがちゃんと 生きてて 自分で判断してる感じがしないのが、どうにもイヤなんです。そうやって「お約束だから」と逃げて損しているマンガは、たくさんありそうですね……。

みんな 無事かな…

たった 30 分間! タコ──イカルゴが地下に潜って帰ってくる間のわずかな時間で、地上では数多くの戦いが火花を散らしました(ほとんどがユピーひとりが起こした被害だけど)。本当に、(現実世界では)長い長い 30 分間でしたね……。

イカルゴがシャッタを開けて地上に出てきた場面では、珍しく彼の機敏な動きが見られます。ガレキを伝って高い塀へ駆け上るなどという、そんな動きがイカルゴにできたのか。てっきり、もっとニブいキャラかと思っていました。

そうか !! でも良かった !!

キルア・パーム・イカルゴが集まり、久しぶりに討伐隊たちが和む場面が見られました。たぶん、王・ユピー・プフが「ラブラブしている」のと時期的に同じ、というのがなんとなく面白い。このまま平和的に終われば、マンガの中の世界としては、良いのですが(マンガ的には面白くないケド)。

プフの繭で生まれ変わったパームには、ショックを受けました。しかし、よく考えてみると、パームは初登場のころからコロコロと変化している。ゴンとのデートとか、逃げたキルアを追いかける場面とか……。それから比べれば、いまさら額に水晶ができたり、ウロコがついたり、小さな事ですね!

一番の気掛かりは、今の姿になってから一度も、パームはノヴの名前を口にしていないことです。「今のノヴの姿」をパームは知らない以上、彼に幻滅したとも思えない。突入前にノヴに愛想を尽かした、という描写もありません。何なんだろう?

あとは 個人の考え方 次第だ

さらに仲間が増えて、討伐隊の 5 人が集まる。

いまさらながら、5 人が 5 人とも絵柄が異なるところがスゴい。ポップスとロックとジャズ・フュージョン・テクノを全部やるバンド、みたいな感じです。──なにげなく音楽のジャンルを挙げてみたけれど、これくらいだったら実在のバンドでありそうですね。

まったく予備知識がない状態で、しかもあまりマンガ家の名前を覚えないようなころに、『レベルE』を読み始めましたが、「あ、『幽☆遊☆白書』の作者だ」とすぐに分かりました。それくらい、線に特徴があるのです。

ナックルは、あの悪鬼のようなプフ(の分身)の顔を見て、それでもまだとことん 奴等と 語り合う(やりあう)と言う。さすがに根性が座っています。自分の納得のために──つまり、すでに自分との戦いになっている。

ほかのメンバも、ナックルの言うことに賛同しています。ということは、会長に 王討伐を託すことで、討伐隊の役目は充分に 果たしたと思っていることになる。

──え? そうなの !? ユピーひとり・プフひとり生き延びただけで、人類の危機はまだまだ続きそうな気がしますが……。または、ザザンの「審美的転生注射(クィーンショット)」のように、キメラアントを増産できるアリがいたら、という発想はないのでしょうか。

これがまた、某マンガだったら、「敵のラスボスを倒せば勝利、あとは知らん」で納得ができるんですよ。ああ、そういうノリだよね、と。『H×H』だとそうはいかない。敵でも味方でも、一人一人が文字通り「生きている」から、誰一人として無視できないのです。

まぁ、前回の展開が、このあまりにも広大に広がった風呂敷をたたむための、第一歩ですね。

先刻の 殺気も…

前のページでリラックスしかけた空気を、一気に緊張させる。この流れがまた見事です。

しかも、「なぜゴンが施術が 完了した事を 知ったのか」を探ることで、どこまでピトーの考えをゴンが見抜いているのかを察するという、細かい心理戦が素晴らしい。たしかなことは何も分からないはずなのに、終わったなのひと言だけで、今後もピトーは一瞬たりとも油断ができないのです。

すぐに ペイジンへ 向かう

どこまでも作者は残酷だ。起き上がったコムギには花をそえて、彼女を見るゴンにはあどけなさが残るいつもの表情をさせています。ところが、コムギを気遣うピトーに対しては、ゴンの非情な宣告を浴びせる。

ピトー自身が分析しているように、今の立ち位置と力関係であれば、ゴンがコムギのところにたどり着く前に、なんなくピトーはゴンを打ち取れるでしょう。なのにそれができない。ゴンの勘の鋭さを何度も見せつけられていると、「万が一」が起こる可能性を考えてしまう。

前回の感想では、ピトーも母性的な愛情に目覚めている、みたいに書きましたが、甘すぎました。ピトーは王以外には興味がない。王が大事に思っている人だから、と言う理由だけでコムギを護っている。

ゴンもまた、カイトを直させるためだけに、コムギを利用しています。二人にとってコムギは、道具でしかないのですね。コムギの家族にとっても、同じ事でした。異形のアリの王だけが、コムギを人として尊敬の目で見ている。なんという皮肉でしょうか……。

ありがとう ナックル

オレは ピトーを 信じるよのコマとその前後には、ゾクゾクします。どんな思考の末にゴンがこの言葉を発したのかを考えると、寒気がする。普段は他人を思いやる心を人一倍持った少年が、恩人のためにこんなにも冷徹になれるのか……。

ページをめくればすぐ分かるとおり、1mm もピトーのことをゴンは信じていない。ナックルの提案よりも、もっとヒドイ方法で、ピトーを縛り付けている。お前も オレを 信じて くれるだろ?、と言葉は優しげですが、『ハンター』が始まって以来の、もっとも非情な取引ではないでしょうか。

ここでゴンを責めるのは、オカドチガイというものです。ピトーがカイトにしたことは、ゴンにとってはそれだけ許せないことなんですね。

ただ、ピトーの人間味を色濃く描くことで、読者はピトーの味方をしたくなってしまう。さらに、最近のピトーはなんだか女の子みたいです。作者のイジワルな性格が、よく分かりますね。「けけけ」とせせら笑っているに違いない……!

いいのか キルア

イカルゴから見れば、心中する 覚悟でいたキルアがゴンについていかないのは、不思議に思う。ところが、その後のキルアの説明を聞いて、納得と同時に驚きました。そこまで考えていたのか……。

『ヘタッピ』で出てきたように、キャラ達と 相談する感じで徹底的に考え抜かないと、こんな発想は出てこないでしょう。いやそれでも、凡人がいくら頭を使っても、人質交換の可能性まで考えるかどうか……。

いつの間にやら話の中心にされている、コムギ自身は何も知らないというところが面白い。しかし──、すべてを知った上で、コムギは笑えるのだろうか……?

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