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『屍鬼』 - 原作: 小野不由美, 漫画: 藤崎竜

20050818_01 夏の終わり
(そもそも、日本の夏には死が似合う──)

『屍鬼』と一口に言っても、小野不由美(おの ふゆみ)さんのホラー小説から始まり、集英社ヴォイスコミック(VOMIC)版『屍鬼』テレビアニメ版『屍鬼』が存在します。残念ながら、これらは読んで・聞いて・観ていません。

この記事では、アニメ版の元となった、藤崎竜氏が描くマンガ版の『屍鬼』について紹介します。いまも「ジャンプスクエア」で連載中ですが、自分はコミックスでまとめて読みました。

さて、『屍鬼』がどんな作品なのかを紹介することは、少しだけむずかしい。

たとえば、『ファイトクラブ』の感想を人に伝える時と、状況は似ています。あの映画も、ジャンルは「○○物」と分かるまでが楽しかった。

『屍鬼』の舞台は、人口が 1,300 人しかおらず、まわりを山に囲まれた、のどかな村です。この外場村(そとばむら)の住人たちが、次々に亡くなっていく。明らかな自然死もいれば、やや不審な死に方もある。村で唯一の医師にも、死の原因が分からない。

村民たちの死因は何なのか?

──この点が、コミックスの第 1 巻と第 2 巻では、大きなキィポイントとなっています。第 3 巻から先は、いよいよ対策を進める。あまりにも過酷な道だけれども……。

ということで今回は、死の謎を追う 2 巻までの感想を紹介します。(天文学的な確立だけど)『屍鬼』を未読の人が、この感想をウッカリと読んだとしても、マンガの魅力を失わないように書きました。

コントラストの高い絵柄

まず、絵に圧倒されます!

──なんて書いているワリには、まったく驚いても感動してもいないことが世の常ですが、『屍鬼』は違った。失礼ながら、「フジリューにこんな絵が描けるのか!」とビックリしてしまいます。

まるで、バンド・デシネ(BD・ベーデー)かアメコミのような絵柄ですね。極端なまでに、影の部分がまっ黒なのです。光が当たっている部分は、まっ白になっている。

写真で言うところの、「焼き込み・覆い焼き」によって、意図的に「黒つぶれ・白飛び」を起こしたような作風です。そういえば、魚眼レンズで撮影したようなコマもある。写真をかなり意識しているようですね。

背景の描写がリアルです。これは、写真素材からのデジタル加工が多いでしょう。それでも、明らかに手描きと思われる部分にも、工夫が凝らしてある。

その写実的な背景を舞台にして、「マンガマンガしている」キャラクタが動き回る痛快さ! かなりリアルな描写のおばあさんが、畑(田んぼ?)からシュ、と瞬間移動してくる場面も面白い。

背景も人物も、ビッシリと線を入れてある部分と、アッサリと描いた箇所があります。描き込みと省略・光と影・シリアスとコミカル──、それぞれのコントラストが美しい。

絵の完成度の高さも、注目すべき点です。

単行本で何冊もマンガを出していれば、1 巻と 5 巻とでは人物の顔が変わっていることが多い。作者も、探りながら描いているわけですね。

自分は現在、『屍鬼』の 7 巻まで読みましたが、1 巻を読み直しても、絵柄に違和感がありません。それだけ、1 巻の時点で絵が完成されている。

ミステリィ的な謎

「プロローグ」では、むごたらしい屍体が 2 体も出てきます。遺体は両方ともバラバラになっており、全身にウジが湧いている。

ただ、それよりも不審な点があります。無残な遺体のすぐ近くには、もうひとり亡くなっており、何日か 死体と暮らしてたと思われる……。

何らかのトラブルがあったのか、または病気なのか。そもそも、事件か事故かも分からない。

おお、これはミステリィなスメルがプンプンしますね! 犯人は誰なのか──というか、探偵役が誰なのかも気になります。とりあえず、最初に登場した清水恵(しみず めぐみ)が主人公と見て間違いないでしょう!

──という感じに、いろいろと作者にダマされながら読み進みました。第 2 巻の終わりごろまでは、こうやってミステリィ作品と思って、登場人物と一緒に死因を探りながら読むと面白いですね。

登場人物たち

『屍鬼』に出てくるキャラクタは、どの人もアクが強くて、しかも印象がコロコロと変わるのが特徴的です。

この「キャラの印象が変わる」という要素は、優れた作品の共通点かもしれません。いつも同じセリフしか言わなかったりするキャラも多いですからね……。逆に、性格が変わりすぎる人物も良くありません。あくまでも、変わって良いのは印象です。

たとえば清水恵なんて、最初は勘違い娘としか認識できません。ところが、「プロローグ」の終わりには、見方が変わる。そしてだんだんと「ウザかわいい」面が見えてくるのです!

「え、プロローグの終わりにああなったのに、清水はまだ出てくるの?」という疑問は、またあとの巻で確かめてください──。

さて、主要人物となっていく 3 人は、最初、それほど重要な人物には思えません。

僧侶の室井静信(むろい せいしん)は、もしかして最初に描かれた氏の首謀者なのでは──、などと思ってしまう。

結城(小出)夏野(ゆうき・こいで なつの)は、たんにワガママな高校生にしか見えない。

また、医者の尾崎敏夫(おざき としお)は、冷たい男に見えます。

この 3 人が、どうやって一連の死にかかわっていくのか──、これが見どころですね。そしてその過程で、彼らを見る目が、自分の中で変わっていくところが面白い。

終わりに

最後に、桐敷沙子(きりしき すなこ)という少女の言葉を引用します。彼女の存在と、この言葉が、とても重要であることが分かるのは、まだまだ先のこと──。

死は 誰にとっても 酷いことなのよ

若くても 老いていても 善人も悪人も 同じ

死は等価なの

特別に酷い死はない

だからこそ 死は恐ろしい!

屍鬼 (2)

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