バクマン。 #112-1 「パンチと一人立ち」 「走れメロス」と温室

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『バクマン。』 112 ページ 「パンチと一人立ち」 (週刊少年ジャンプ 2011 年 01 号)

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(メロスは感動した──温室が美しかったからだ)

明けまして、おめでとうございます!

──って、「ジャンプ的に」という意味ですケドね。今週号が、2011 年の 1 号目です。雑誌や本の世界では不思議なことに、出版した日付は現実世界よりも未来になっている。なぜでしょうかね?

いろいろと説があるらしい:


正月とは関係がないけれど、今回の『バクマン。』は、おめでたい内容でした。亜城木夢叶の進む道が見えている。先週まではけっこう重苦しいムードだったので、まずは一安心です。

──いまのところは……。

1 番獲ろうぜ!

久しぶりに帰ってきたシュージンに向かって、シュージン… 俺を 殴ってくれとサイコーは言っている。最初は、意味が分かりませんでした。

読者からすると、(作者の演出によって)シュージンのほうが迷惑をかけてきたように見えるので、殴る立場が逆なら分かりそうなものです。

とくにカヤは、殴る蹴るの暴行を加えてもいいかも?


ここで『走れメロス』の名前が出るのは、小説好きのシュージンらしいですね(でも、ミステリィや SF しか読まないんだっけ?)。

面白いことに気がつきました。

おそらく、『走れメロス』の内容は、覚えている・知っている人が多いのでは? どうしてメロスは走っているのか、途中で何があったのか、書き出しからオチのひと言まで含めて、自分はだいたい覚えています。

この太宰治の傑作とは対照的な例を挙げましょう。


最近になってようやく、『伊豆の踊子』を読みました。表紙で「ジョジョ・ガール」が踊っているほう(↓)──ではなく、昔の版です。

世界的に有名な川端康成の代表作ですが──、

『伊豆の踊子』の内容を知っていますか?

あらすじだけでもこの作品のことを知っている人は、たぶん、日本人でも一割もいないと思う。


自分が『メロス』を知っていたのは、教科書に出てきたからです。もしも学校で習わなかったら、オトナになってから読んだかどうか分からない。ほかの人も、同じではないかな。

もし原作を読んでいなかったら、森見登美彦さんの『新釈』は、半分しか楽しめなかった。

『新釈 走れメロス』 森見登美彦 – 男の友情とは「ちょっと手加減」 : 亜細亜ノ蛾

ということは、『メロス』は知っている・『踊子』は知らない人が多そうなのは、学校で習うかどうかの一点ですね。

なぜ、『踊子』が教科書に載らないのか──は、読んだら分かる。同じ作者の『雪国』もそうですけれど、「いたいけな少女と、どーのこーの」という話ですからね……。

結構全力

シュージンがサイコーを殴る! こんな場面を目にする日が来るとは、思わなかった。

殴られたほうのサイコーも、ひとからパンチをもらうのは初めてなのでは? そのわりには、シュージンの殴り方に不満を持っている。

マゾ……?

──ではなく、サイコーは「顔芸」が達者だから、表情筋が豊かでクッションになっているのでしょう。冷血人間だから、血液も硬そうだし。

何か スッキリ しない…

殴り合って 友情深まる とかいうマンガ 実際には そうないし──とシュージンは指摘しています。さすが、マンガを研究しているだけはある。


映画だと、殴って友情を深める場面は多いです。

たとえば、『ファイトクラブ』は主題(のひとつ)そのものだし、伊丹十三監督の『タンポポ』にもそのような場面が出てくる。

少し系統は違うけれど、傑作(B 級)SF 映画の『ゼイリブ』では、「この世の真実を見られるメガネ」を仲間に付けさせるために、延々と殴り合うシーンがあります。体感にして、映画の半分くらいは殴ってる


カラッと乾いた人間関係が特徴的な『バクマン。』だけれど、シュージンとサイコーとの仲は別です。じっとりと密着している。「シュージンは偽装結婚したンとちゃうかー」と思うくらい(?)。

ガード すんのかよ

普通だったら一発ずつ殴り合ってすぐ終わる場面なのに、わざわざ公園まで移動して、ネチネチと 2 人で「殴り方のルール」を話し合っている──。

このクドい描き方、良いなー! 自分は好きです。

二人とも見るからにヒョロヒョロなのに、サイコーは意外と腰の入った殴り方をしているし、シュージンは本能でガードする。このギャップが、好きな人にはタマラナイ! サイコーは、マンガからパンチを学んだのでしょうね。


「戦う前に場所を移動する」と言えば、『HUNTER×HUNTER (9)』に出てくる、クラピカ対ウヴォーギン戦が忘れられない。

ウヴォーの所属している「幻影旅団」を一掃することは、(この時の)クラピカの人生そのものです。だから、彼が逃げるはずはない。

──それは分かるけれど、(おそらくクラピカの運転する車で)2 人とも仲良く移動して、クラピカはウヴォーが用を足すのを待っている。想像すると、笑えてきます。

アゴは危ないって──

「ルールあり・手加減あり(・愛情あり)」のケンカだけど、その場面を見たカヤが勘違いをして──、というベタな場面です。

でも、加減を知らないサイコーと殴り合っていたら、しだいにイライラしてきて、シュージンもキレるのでは?


『バクマン。』は毎週 19 ページなので、いつものように感想は 5 ページずつを 3 回・4 ページを 1 回の合計 4 回に分けて書きます。

すると、この場面で今日は終わるのですが──、「カヤが転倒して終わり」って不吉ですね!

もしも「感想を書く直前にしか該当のページを読めない」というルールだったら、気になって仕方がない。ケガでもしていたら……。

カヤ:
「ケガしちゃった…… 責任取ってよね! ////
シュージン:
「もう取ってるだろ……(キリッ」
サイコー:
「(おいおい寒いぞ…… 二重の意味で)」