『デクスター ~警察官は殺人鬼』 (Dexter)

How well I could write if I were not here!
(すべては──血が物語る)

最ッ高ーッに面白い海外ドラマです!

主人公のデクスター・モーガン(マイケル・C・ホール)は、マイアミ警察に勤務する「血痕専門の鑑識官」でありながら、「殺人鬼(シリアルキラー)専門の殺人鬼」──という設定だけで、人によっては毛嫌いするか・大好きか、ハッキリ分かれるでしょう。自分は、大・好・物!

彼の義理の妹──デボラ・モーガン(ジェニファー・カーペンター)も、マイアミ署の風紀課にいる。デクスターを「デックス」という愛称で呼ぶ彼女は元気で、彼女がいると場が明るくなります。

シーズン 1ではこの兄妹が中心となって、「冷凍車キラー」と名付けられた連続殺人犯を追う──。

デクスター|DEXTER特設サイト


この素晴らしいドラマの存在を自分が知ったのは、シーズン 4 が発売されている最近でした。上の特設サイトで商品のパッケージを見てもらうと早いのですが──、なんだかコミカルな感じですよね? 血なまぐさい印象はない。

そのため、観る前には「実際の殺人は描かないだろう」と思っていました。ところが、デクスターが「獲物」を殺す場面からドラマは始まるのです!

たしかに、コメディのようなノリは出てくる。しかし、全体的にはシリアスなムードが流れていて、最高にクールなドラマですね。

アメリカのドラマは、たとえコメディでも、見ていて格好いい。どこかの国の「登場人物同士が口論をしてばかりいる」ドラマは、ほんの少しでも見習って欲しいです(韓国ドラマのこと──と思った人のために書いておくと、日本も同じ)。

正義ではない

デクスターには、警察官と殺人鬼という二面性がある。

それを分かりやすく表現するためか、デクスターの表情はほぼ全シーンで、顔の半分が影になっている。そう見えるように光を当てています。

昼だろうと夜だろうと──楽園のような海岸の場面だろうと、彼だけは顔が半分暗い。観ていて、ちょっと笑ってしまう。


デクスターには感情がない

──ここがドラマの中でも重要な点です。それでいて、デックスは無表情ではないし、一見するとさわやかな好青年に見える。絶妙です。

彼を演じている俳優が最高で、デクスターの目が笑っていない引きつった笑顔が素晴らしい。


日本のテレビ局では、絶対に『デクスター』のようなドラマは作れないでしょうね。すくなくとも民放局だと「深夜以外は放送できない」のは当然として、まず警察署が協力してくれないでしょう。警察官が殺人鬼のドラマなんて……。

日本で作ると、デックスは「正義」として描くはず。

現に、日本語版の DVD では、第 1 話が「正義の殺人者」などというタイトルが付けられている。原題は「Resistance is Futile」で、直訳すれば「抵抗はむなしい」でしょう。観れば分かるとおり、この日米のタイトルは、まったく正反対の意味です。

正義のために殺すのか、自分の本能のためか──。

デボラちゃんビッ■かわいい!

『デクスター』を観る前に、デボラのうわさを何度か聞きました。どうも、「不」と「細工」を組み合わせた言葉のような女性らしい──。

身構えながら見てみると、なんだ、かわいらしい女性じゃないですか! お世辞でもウソでもなくて、自分の好みのタイプに近いかもしれない(わしの好みは 108 式まであるぞ)。

彼女がノー・サンキューという気の毒な人には、初回からきびしい展開かもしれませんね。なにしろ、「ホットパンツにヘソ出し」というエッチでビッ■な売春婦の格好で初登場です(※潜入捜査のため)。

そのあともデボラは、なぜかセクシィ路線を担当している。カレシができて、ベッド・シーンがガンガン出てくるのです。

彼女の嬉しそうな表情を見ていると、心がなごむ──。

イケているルディ

デボラのカレシになるのは、ルディ・クーパー(クリスチャン・カマルゴ)です。

ルディは、「冷凍車キラー」の被害者にして唯一の生存者・トゥッチの義足を作る技師として登場しました。やけにイケメンな技師だけれど、すぐに背景にまぎれるような端役──と誰もが思う。

なぜなら、最悪な凶悪犯の毒牙にかかったのに、トゥッチは妙に元気なのです。このドラマで一番陽気な人物かも。病室で寝たきりなのに、デボラを何度も口説いたりする。ルディよりもトゥッチのほうが、観客には目につく。

けっこうウザイ性格のトゥッチですが、ノンキなおかげで病室が暗くならないし、なんといっても被害者だし、調査には協力的です。いいヤツですね。

義足をプレゼントしてくれたルディには、トゥッチも最大の感謝をしていました。ハンサムだし仕事熱心で患者の気遣うルディに、デボラが惚れたのは当然の成り行きです。

デボラはデボラで、トゥッチに「ごほうび」をあげる。風紀課だったころの人脈を生かした行動なのですが、警察官としてのルールをやや外れていて、きわどい場面でしたね。


犯人が判明したあと、トゥッチはどう思ったのだろう?

切ない終わり方

さて──、ドラマを観た人にはお分かりのとおり、ここまでの感想にはいくつもの皮肉が込められています。ドラマ自体に、タチの悪い冗談が埋め込まれているからですね。

事件の真相を知った時には、驚きました。ネタバレになるから名前を挙げることは避けますが、気の毒に思える体験をした人が何人も出てきている。


一番おどろいた話は、「冷凍車キラー」の正体よりも、じつは「危険なカウンセリング(Shrink Wrap)」です。

すでに亡くなった義父のハリー・モーガン(ジェームズ・レマー)だけが、デクスターの理解者でした。ハリー以外には、デクスターは心を開かない。たとえ妹のデボラや恋人のリタ・ベネット(ジュリー・ベンツ)にも本性を隠している。

ところが、「自分は殺人鬼だ!」とデクスターが告白できるような、彼を理解するカウンセラが現れるのです。告白をする前後のデクスターは、シーズン 1 で一番うれしそうでした。

自分を理解してくれて、自分と似た性質を持つカウンセラに、デックスはどうやって接したのか──。

「血」が問題

ドラマを見始めた当初は、「殺人をゲームとして楽しむ『冷凍車キラー』とデクスターとの知能戦」になるかと予想しました。半分はそのとおりです。でも、「なぜ犯人はデクスターをゲームに誘うのか」に意味があるとは思わなかった。

シーズン 1 の見どころは、「冷凍車キラー」の正体を暴いた時に、デックスが「始末」するのかどうか。ほかの殺人鬼たちと同様に扱うのか、途中から気になって仕方がありませんでした。

『デクスター』は、「血」の話である──。

余談

今回もタイトルは、ゲーテの名言から借りています。

Twitter / @ゲーテ名言集: 太陽が照れば塵も輝く。

語られた前後の文脈を知らないため、この言葉の真意は知りません。「天の上にいる存在に比べれば取るに足りない存在の人間も、光が差せば輝く」という、ウェブ上で見つけた受け取り方が美しい。

自分は、まったく違う意味かと思っていました。

子どもが悪いことをしないように、「お天道さまが見ている」とよく言いますよね。そこからの発想で、「社会を照らす善行によって、悪行が暴かれる」と解釈しました。

今回のタイトルも「太陽が照れば悪も輝く」と付けたかったけれど、あまりにも反社会的すぎて『デクスター』からはズレる。デクスターのやっていることは悪行ではあるけれど、彼は悪の崇拝者ではない。

デックスが崇拝するのは、ハリーの掟だけです。

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