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『チェンジリング』 (Changeling)

ポンデリング ショコラとアーモンド
(間違えたリングを交換しにいく話──ではない)

最高に胸くそが悪くなる映画でした。

──って、「できが悪い作品」という意味ではないですよ! 出演者たちの演技も映像も脚本も、すべて一級品です。

ところが、見終わったあとで「あー、面白かったー!」とニッコリできる映画ではありません。映画の中で起こった「史実に基づいた事件」が痛ましくて、エンド・クレジットが流れている時にボーッとしてしまいました。

なにより、犯人に腹が立つ!

でもこれは、クリント・イーストウッド監督と犯人役の役者に対する、最大の賛辞ですよ。最大の惨事でもあるけれど……。


見どころの 1 つは、主演を演じているのがアンジェリーナ・ジョリーであること。セクシィな彼女は、本作品でも「入浴シーン」を披露するのですが──、けっして色っぽくはない。貞淑な母親であるクリスティン・コリンズを見事に演じていました。

彼女の一人息子──ウォルター(ガトリン・グリフィス)が行方不明になるところから、物語は動き始めます。毎日毎日、息子のことを気にかけるクリスティンの元へ、5 か月も経ってからウォルター発見の知らせが届くのですが──、

戻ってきた「ウォルター」は、まったくの別人だった。

ウォルターを名乗る少年──アーサー・ハッチンズ(デヴォン・コンティ)の目的は分かりません。自分は途中まで、ミステリィかと思って観ていました。


もう一つの見どころは、1920 年代後半のロサンゼルスを再現した映像です。クリスティンの勤める電話会社や街並みが、古くて新しくて美しい。

いつもなら、衣装の内側からあふれんばかりの肉体美を誇るアンジェリーナ・ジョリーだけれど、この時代の洋服を身につけると、おしとやかに見えます。彼女の変わった一面を見るためだけにでも、ぜひご覧ください。

ダーティじゃない監督

クリント・イーストウッド監督は、本作品で制作・音楽でもかかわっています。

彼が監督でもあること当然のように知っていましたが、音楽まで担当するとは驚きました。しかも、映画によっては作詞・作曲──演奏までしている!

ダーティハリー』で「どうなんだクソ野郎!」なんて叫んでいる彼が、ミュージシャンでもあるなんて、誰が想像できたでしょうか。

──って、そう言えば、ハリーは犬ちゃんには逆らえなかったなぁ……。

クリント・イーストウッド - Wikipedia

涙のジョリー

もしも誰かに「アンジェリーナ・ジョリーって、どんな人?」と聞かれた時には、ピッタリの画像が Wikipedia にあります。

アンジェリーナ・ジョリー - Wikipedia
アンジェリーナ・ジョリー - Wikipedia
(→ ファイル:Jolie.png - Wikipedia

どうですか、この「\どや/」っとした勝ち気な表情は! これが、彼女の持ち味です(断言)。下の 2 作品でも、必殺のジョリー・スマイル(いま命名)を見せつけていました。

『チェンジリング』を見終わったいまでは、いっそう──彼女には笑っていて欲しいと強く思う。それくらいに、クリスティンは深く心に残った。

たとえば──、自分が大好きなアン・ハサウェイは、健気な女性の役がよく似合います。クリスティン役にピッタリですね。でも──、いかにも「お涙ちょうだい映画」になっていたでしょう。

腐った街

21 世紀にいるわれわれの目には美しく見える街も、外見だけのことです。内側は腐っている。当時のロサンゼルス市警は、信じられないくらいに汚れきっているのです。

腐るなら二次元だけにしておけ!(?)

この映画でロス市警の悪を象徴しているのは、 J・J・ジョーンズ警部(ジェフリー・ドノヴァン)とジェームズ・E・デイヴィス署長(コルム・フィオール)です。

とくに警部役のジェフリー・ドノヴァンの演技が、素晴らしく──むかつく!

上で『ダーティハリー』のことを調べた時に、犯人役の人が迫真の演技だったため、同じような役ばかりが来たことを知りました。ドノヴァンも、似たようなことが起こりそうな気がする……。

あやしい牧師

長老教会の牧師であるグスタヴ・ブリーグレブは、絶妙のキャスティングです。なにしろ、「あの」ジョン・マルコヴィッチが演じている。

息子の行方が分からなくなり、他人の子どもの面倒まで見なければならない──。そんなクリスティンのところへ、牧師は救いの手を差し伸べてきます。

──あやしい! あやしすぎる!

悪役を多く演じているジョン・マルコヴィッチが登場した時には、「こいつが犯人・あるいは黒幕か……!」と失礼ながら思ってしまった。──よね?

いちおうは牧師も「下心」があって、ある意味ではクリスティンを「利用」している。では、本当に牧師は、彼女の力になるつもりはあるのか……?

──と、ここでもミステリィ要素を期待して観ました。

みなさんも、「へぇー、協力してくれる人もいるんだぁー、ふぅーん」とぼんやりしていないで、あれこれ疑いの眼を向けてみると、いろんな面が見えてきて──、

疲れるよ。

犯人の匿名性

ウォルターをさらっていった犯人がひどすぎる! この犯人のせいで、気分が悪くなったのです。

最悪な犯罪者の真に迫った演技で、クリスティンと一緒に、画面に向かって叫びたくなる。この演技も見ものです!

この見事な犯人役の俳優は、なんと、Wikipedia に個別ページもない(2011/01/11 現在)くらいに無名な人でした。

なるほど、この映画の犯人も、そうと知らなければ特徴があまりない人物です。へたに演技派で知られる役者を使ったら、逆に興ざめになる。そこまで計算した配役だったのかもしれませんね。


ということで、犯人──ゴードン・ノースコットを演じた役者の名前をここで出しても、大丈夫でしょう。

ジェイソン・バトラー・ハーナーよ、最ッ高ーに吐き気がする演技を、ありがとう!(褒めているんですよ!)

事件の事実

じっさいには、どんな結末を迎えた事件だったのか。

気になって調べてみると、分かりやすくまとめた素晴らしい記事に巡り会いました! ぜひ、映画を見終わったあとでどうぞ。

チェンジリング | 映画のメモ帳+α

余談

しつこく今回も、タイトルはゲーテから借りました。

人間がほんとに悪くなると、人を傷つけて喜ぶこと以外に興味を持たなくなる。

ゲーテ格言集 (新潮文庫) [文庫]』 p.26

もちろん、ゲーテが言葉を向けた相手は、連続殺人犯ではありません。日常的に、「根性悪(こんじょわる)」な人は見かけるでしょう。

この映画に対してつけたタイトルは、ゴードン・ノースコットのことだけではなく、私たち全員の心に潜んでいる「悪」を指しています。

人を傷つけるには、斧はいらない。ひと言で充分です。

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