『バクマン。』 125 ページ 「焦慮と逆転」 (週刊少年ジャンプ 2011 年 16 号)
(「ログを取る」とは──こういうことか)
今回の『バクマン。』は、またまたセンタ・カラーです。この作品のカラー率は、ほかの人気作品と比べても多いのでは? いつも美しいイラストで心がなごみます。
さて──、今回の扉絵は「夜空を背景にして、携帯電話からメールを発信する各キャラクタ」でした。星に願いを──というか、今回の大震災と内容がシンクロしているような……。もちろん、この絵は地震よりも前に描かれているはずだから、偶然ですケド。
地震と言えば、次の号の「ジャンプ」は発売が延期になりました。何百万部も発行している雑誌だけに、これは仕方がないですね。逆に、1 週分しか延期しなくて済むところが すごい。日本の流通は世界一だと思う。
「週刊少年ジャンプ17号」(3月28日発売)を、4月4日(月)に発売を延期いたします。
以降は毎週月曜日の発売予定です。
一刻も早く災害から復興するために、自分には何ができるのかを考えたいですね。
東北地方太平洋沖地震 – 自粛するよりも募金しよう : 亜細亜ノ蛾
なんとかしねーと…
『有意義な学園生活に必要なそれ』(七峰透のアゴ並に長い)は、急激に人気が下がっていきました。七峰や「判定人」はもちろん、編集部もこの結果は予想していなかったでしょうね。
これは編集部──編集長からすると、「担当編集者の小杉に経験と力がないから、こんな結果になった」と思うのでは? 七峰のことを「才能があるマンガ家」と編集長は見ていたはずです。
たとえば、集英社の「週刊少年ジャンプ」編集部が、普通のサラリーマンたちが働く職場だったとする。すると、せっかく仕入れた「新製品」の売り上げが落ちてきたら、すぐに担当者に何らかの指示を出すか担当替えをするはずです。
ところが、「ジャンプ」の編集部はそんなことをしない。マンガ家と担当者は、よっぽどのこと(例: 岩瀬)がない限りは離れられません。二人三脚のまま、激流の川に飛び込むようなものです。
担当者が「はずれ」だったら、それまでよ──。
──と、また「ジャンプ」編集部批判みたいなことを書きました。でも、仕方がないよなぁ──とも思う。マンガは一般的な商品とは違って、「芸術作品」です。当然、扱い方も特殊になる。
ただ──、本当にマンガが芸術であれば、芸術家であるマンガ家のほうが担当者を選べるはずです。昔の芸術家は、パトロン(現代で言うと編集者やスポンサ)は選べなくても、気の合わない担当者と仕事をすることはなかったと思う。
このあたりが、商業主義と芸術が混ざり合った業界ならでは ですね。──その比率は、8:2 か 9:1 くらいだったりして。
「PCP」がやるネタを先にやる
七峰は、どこまで墜ちていくのか──。上ではいろいろと出版業界に対する批評を書いたけれど、七峰の場合は援護できませんね。才能がある人間なのに、このまま精神がくさってほしくない。
小杉だけが七峰を救える! と信じたいところですが、この 2 人にはそこまでの信頼関係がありません。それはこれから──で間に合うのだろうか。
盗むしか ない!
のコマは、明らかにネタとして描いているだろ! 『DEATH NOTE』の「計画通り」を上回るくらいの一発ギャグです。七峰は、完全に顔芸キャラになりましたね。
読者である自分には「人ごと」だから笑える場面だけれど──、週刊連載をしているマンガ家が見たら、七峰に共感するかもしれません。毎週毎週、プレッシャの中で作品を描き続けていたら、何をしてでもネタが欲しい──と思うはず。
ほら これです
以前に自分も予想した「内通者」が現われました。編集部にログを流したのは、おそらく「判定人」を抜けた人物でしょうね。「判定人」自信が密告しなくても、いずれは知人・友人などから漏れていたはず。
港浦が言うとおり、ログなんて いくらでも 捏造
できる。七峰も、このような事態が起こった時には、「言いがかりだ!」と突っぱねるつもりだったと思う。
でも、すでにそんな状況ではない……。
まさか 心当たり あるのか?
相田の反応が意外です。もっと頭ごなしに小杉をしかるか、なんだったら殴るかと思っていました(それなんてブラック企業?)。
「ジャンプ」の編集部は体育会系ノリかと思っていたけれど、まったく違いますね。相田の服装と服部の髪型だけか、スポーツ系なのは。
興味深いことに、「判定人」のことを公言していたなら ともかく
という条件つきで相田は問題視しています。ようするに、「複数人でアイデアを出しながらマンガを描くこと」を最初から公表しておけば良かった。
ただし、色々な情報の 漏洩の心配もある
から、やはり七峰のやり方は許可されなかったと思います。見ず知らずの 50 人
という点だけがダメだった(あくまでも相田個人の意見では)。
そもそも、「女性マンガ化集団」の CLAMP 先生(たち)の例もあるから、「複数人のマンガ家」は問題ありません。それならば、プロとしてアイデアを出すだけの担当者が複数いても大丈夫なはずです。「プチ原作者」みたいな感じ。
七峰のシステムは、どこかが練り直して採用しても良いと思うなぁ……。このまま消えるのは、もったいない!
何考えてんだ !!
異動願を突き出す社員と、急いでデスクにしまう上司──という図を見ると、なんだか『美味しんぼ』を思い出しました。あのマンガで山岡士郎が出すのは「辞表」だし、上司は破り捨てていましたけどね。相田にも捨てて欲しかった。
とてもシリアスな場面ですが──、「アニメかアイドルの写真を相田が奪っている」みたいなコラージュ・マンガが頭に浮かぶ……。
自分の職と引き換えにして責任を取る──。これは、かつて港浦もやっていました(『バクマン。 (7)』 p.84)。
港浦はいつも小杉のことを気にかけているから、考え方も似てくるのかも。港浦の場合はたんなるヤケで、小杉のほうが一枚上手ですね。