『バクマン。』 143 ページ 「お金とリサイクル」 (週刊少年ジャンプ 2011 年 35・36 合併号)

兎と亀
(先に息切れするのは──はたして どちらか)

ベテランの作家であれば、最初だけ面白くて すぐ息切れ というのも 少ない──と服部がサイコーとシュージンに語っている。この話は、雄二郎が福田に言った皮肉と同じです。それなのに、受ける印象がかなり違う。

何度も短期で打ち切られた亜城木に向かって話していても、服部が言うと、それほどイヤミに聞こえません。

発言で重要なのは、内容よりも、誰が言ったのか──。

ただ、そんな好印象の服部も、今回は「おやっ?」と疑問に思ったセリフが多かった。山で霞でも食っていそうな彼も、聖人君子や仙人ではなかった ということです(当たり前)。

ベテランで埋めるべきじゃ ない

若い作家を育てるために──と「週刊少年ジャンプ」の編集者の口から聞くと、なんだかモヤモヤと負の感情が湧いてくる。服部みたいに熱くて誠実な編集者ばかり──ではないですからね……。

ベテランだけの 読み切り 3 連弾は、あくまでも特例として編集部では決まりました。しかし、「アンケート至上主義」の雑誌だから、読み切りで票を集めたら、今後は分からない。「ベテランを使っていくべきだ」という意見に すり替わりそうです。

それが響たちの狙いなのでしょうか。

今からの成長は 期待できない

シュージンは、何だか必死になってベテラン作家の評価を下げようとしています。服部に不満を言ったところで、編集部まで伝わるかどうかも分からない。──それでも、言いたくて仕方がなかったのでしょうね。

若い「影の原作者」たちがストーリィを作っているのだから、シュージンの伸び代はないという指摘は当てはまりません。むしろ、彼らの成長に恐怖する日は、これから延々と続くのかもしれません……。

「ぱんちらファイト」なのに パンチラがないと 言ってもいいくらいというのも、じつに、分かってらっしゃる! 見えないからこそ夢が生まれて、妄想の翼で羽ばたいていく。

おそらく、原作者やモニタの間でも「見せまくる派・控える派」に分かれて議論が盛んに おこなわれた上で、アニメ化を視野に入れ、最終的に「絶・パンチラ」と落ち着いたに違いない。

メインのヒロイン以外にも いろんな需要に応えそうなキャラを用意した点と言い、複数人で作るメリットを最大限に発揮していますね。


東美紀彦の描く『ぱんちらファイト』は、ものすごくイマドキの絵柄です。ハッキリ言ってしまえば、「小畑絵」まる出しになっている。つまりは、サイコーよりも絵が上手という設定でしょう。

こんなに絵が描ける作家を野放しにしているのは、非常に もったいない! 東や新井が職を失ってたのは「話の都合」でしたが、現実世界でも「描けるのに食えない作家」が数多くいそうです。

週刊連載での執筆は、体力の勝負になるので、作家の体調による向き・不向きはあるでしょう。しかし、絵は一生描けるとも思います。リタイアしたマンガ家の再出発する先は、いくらでもありそうだけれど──、実際には難しいのかな……。

専属契約したい

このページが、今回では最大の謎でした。東も服部も、2 人とも不思議な態度に見える。

まず、東が原稿料に不満を持ったのは、分かるようで分からない話です。「SINJITSU.CO」に著作収入の 6 割を持って行かれるため、手取りがすくなくなる。だから物足りない気分になるのは当然だけれど、最初から高額の原稿料を もらえるはずがない。

もしかして、東には借金があるのでしょうか? 響たちと契約する際に、何十万・何百万の契約料が必要だったりして。それとも、手に入る原稿料が思ったよりも すくなかった──という単純な話なのかな。もっとシンプルに、お金には がめついだけとか。


もっと 下手に来ると 思っていたという独白は、どうも服部らしくありません。これまでの東の行動からすれば、十分に理解できる感想だけれど……。何だか服部が偉そうに見えてしまう。

まぁ、天下の集英社の社員だから、当然かな。

ちょっと コーヒー

久しぶりのダブル服部コンビです。イヤイヤついていく服部と、積極的な雄二郎が、対照的で面白い。

東の影にいる原作者に、いままで誰も気がつかなかった。編集者の中ではマンガを見る目がある──と思っていた服部も、雄二郎に言われるまで その可能性すら考えていません。作品の良し悪しは見抜けても、人を見る目が足りない──のかも(それは言い過ぎか)。

編集者の中ではトップクラスの するどさを誇る吉田なら、すこしは東たちの背景が見えていそうです。ただ、それで文句を言って連載を止める──といった権限まではないでしょうね。たとえ原作者の存在が発覚しても、不正でも何でもないし。


また 新妻くん ですか? も笑えました。服部が自分で見抜けなかったことを指摘されたから、完全に雄二郎の手柄とは思っていません。よく考えると、先輩に対して失礼な話です。まぁ、相手が雄二郎だから、しょうがないにゃあ・・

ところで──、「見抜く」という言葉が、このごろは使いにくい気がする。

見抜きとは (ミヌキとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

そう決めつけるのも

エイジの言葉を繰り返しているだけなのに、「(キリッ」とした表情で語る雄二郎は、完全にギャグですね。このアフロは、エイジのありがたい原稿と考えを運ぶだけのメッセンジャなのでしょうか。それとも、新妻エイジの伝道師かな。

自分で考えて ないんじゃないかというセリフも、服部らしくない発言に聞こえます。あれれー? 「ぼくの服部像」が崩れていくよー? 普通に「どなたか原作者が いるのでは?」と聞けばいいと思う。


「ジャンプ」にばかり売れない ベテラン作家が 持ち込んでくるのは、不自然だし不思議で仕方がない。編集部からすれば(いまのところは)メリットしかないけれど、そろそろ疑いの目が向けられる時期です。

これでもしも、「ただただ本当に面白い作品を載せて『ジャンプ』で 1 番が獲りたかったんだ!」という さわやかなエンディングだったら、それはそれで大どんでん返しですケド。

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