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HUNTER×HUNTER No.315 「帰郷」 (週刊少年ジャンプ 2011 年 40 号)

晴耕雨読。
(こんな時にピッタリの酒で──さあ 乾杯しやう

今週号の「ジャンプ」は、『CYBORG じいちゃん G』の宣伝が『H×H』の直前に載っていました。なんだかウェルフィンたちと『じいちゃん』との世界観が妙に合っていて、笑えます(足の骨格とか)。

冨樫義博先生への質問も おもしろかった!

Q. 最近ハントした物はなんですか?

A. 「えんまのまそう」を GET しました。

『週刊少年ジャンプ』 2011 年 40 号 巻末

いやー、本ッ当に、冨樫先生はゲームが好きですねー。ギリギリ……(血が出るほどに唇を噛みしめている音)。担当の編集者も、これには苦笑い(ギリギリ……)。

ジャイロと NGL

イカルゴは、ウェルフィンもブロヴーダも「仲間」だと言っています(『HUNTER×HUNTER (29)』 No.309, No.310)。

あの時の文脈では、「NGL の住民であり、『前世』の記憶がある者」を仲間と呼んでいる──と納得しましたが、いまごろ違和感に気がつきました。

自然を愛する「ネオグリーンライフ」の活動と、世界に悪意を ばらまくジャイロの計画(麻薬の製造など)とは、あきらかに同じ方向を向いていません。──やや狂信的である点では一致しているけれど。

NGL の「善良な」住民にとって、ジャイロの部下たちは煙たい存在だったのでは? 「引っ越し~! 引っ越し~!」と追い出し作戦を熱心に展開する人もいそうです。

いや──、それ以前に、影の「国王」であるジャイロのことも麻薬のことも、NGL の大半の住民は知らない。

たぶんブロヴーダは、「ジャイロ」という人物を、ただたんに「ウェルフィンの友だち」と思っているのでしょうね。彼は言動が少年っぽいから、大人の事情は詳しくないのかも。もちろんシドレも、何も知らないはず……。

「前世」の記憶の有無

ウェルフィンは、「前世」を覚えていなかった(そもそも護衛軍には存在しなかった)ために、モントゥトゥユピーを「敵」と見なして攻撃しました。

その彼が、ほぼ「前世」の記憶がないブロヴーダと親しげに話しています。──なんだか、ちょっとモヤモヤする。まぁ、「ほとんどない」と「皆無」とでは、「まったく」違いますからね。

「人間だったころを覚えている者」のことを、「覚えてる方」と形容するセンスも素晴らしい! 当たり前で単純な言葉のようでいて、なかなか出てこないですよ。

人間が死ぬ時

オレは !! 死ぬまでは死なねェ

──これは、王に食い殺される直前、ウェルフィンの脳内に渦巻いていた言葉のひとつです。No.313 の感想ではスルーしてしまいましたが、「シリアスな笑い」として楽しく読みました。

まさかこの言葉が、おめーも 死ぬまで 死ぬなよというジャイロの あいさつが元だったとは……! 父親からヒトとして扱われなかったジャイロの言葉だから、下のような意味が込められていると解釈しました。

「死ぬ瞬間までは、人間として意志を なくすなよ」

ジャイロの行動は褒められたものではありませんが、この言葉は美しい。ブロヴーダを通じて、NGL でも日常的に使われそうです。

どこまでも前向きに

おもしろいことに、ウェルフィンも・ビゼフ(元)長官も・ヒナも、「直接は人間を殺した描写がない」というだけで、言ってしまえば「悪党」なんですよね。

善人と言える人物は、この作品にいるのだろうか……。

ザザン率いるキメラアントとの一件(『HUNTER×HUNTER (22)』)があるから、この 3 人の小悪党を流星街は受け入れないのでは──と思いました。

しかし、流星街が報復する相手は、「住民に対して直接的に被害を与えた者」に限られるはず。ウェルフィンやヒナを、アリだというだけで拒まないでしょう。

ヒナは もちろんとして、ウェルフィンも毛が抜けて、何だか人間っぽくなっている。この点も好都合だったりして。


この作者のことだから、ジャイロを探して流星街へ向かうの次に「──途中で地雷原に」とか「──薔薇の毒がウェルフィンから」などと続きそうで、ページをめくるのが恐かった……。

奇跡の再会

シドレを一目見て、レイナだと見抜く母親の場面は、本当に涙が出ました。自分の子どもたちがいなくなった時から、彼女の時間は ずっと凍り付いていたのでしょうね。

お母さん だもん !! というセリフも、いつかのキルアを思い出して良かったです。

キルアが「友達だもん」と泣くのがよかった | 亜細亜ノ蛾(ひどい感想を書いているな……)

おかえり レイナ ちゃん──と温かく迎え入れる村民も泣けます。同じような姿の「化け物」たちに、何人も連れて行かれたことを考えると……。

今まで しゃべれなかったシドレが、急にレイナとして なめらかに会話をしたり、デフォルメ顔に なっているところが、また一段と ずるい!

好意的に考えると、母親と再会した瞬間に、レイナも人間だった時の記憶が一気に戻ったのかもしれませんね。

──うん。また、オレ、泣く。

今夜は「ごちそう」

男の湿っぽい涙で塩辛くなってきたので、みんなで 食事に しましょうのネタで笑いを取りましょう。

ばあさん:
アンタも いっしょに どうだい?
ブロヴーダ:
ん? いや オレは いいよ
ばあさん:
「いや…… アンタを料理しようかと思ってね(ゆらり……)」
ブロヴーダ:
「!?」

トリコ』に出てくる凄腕のシェフ・節乃(せつのん)に似ている おばあさんだな──と思って書きました。笑えないよ……。

人を からかふ者

まさか、菊池政夫(きくち まさおう)先生の『人といふもの』を、『H×H』で目にするとは思いもしませんでした! 「乾杯」の場面も感動しましたが、この直後も味わい深かったなぁ。

菊池正央 - Google 検索

──もう、冨樫先生めー☆(ギリギリギリ……)


このページには、皮肉が もう一つあります。

晴耕雨読の生活──晴れた日には田畑をたがやし、雨の日には家で読書すると言いながら、思いっきり晴れた真っ昼間から、ディーゴは酒を飲んでいる。

たんに刈り入れ時などの忙しい時期じゃなかった可能性もありますが、農作業などは人に任せて、働かなくても悠々自適に暮らしているんだろうな──と思わせるシーンでした。

まるで犬のように──どこかのマンガ家のように。

ほぼ全裸の女性たちが踊る姿を見ながら食事をする(『HUNTER×HUNTER (21)』 p.83)「ディーゴ総帥」の立場も良さそうだけれど(王が来なければ)、本物のディーゴの暮らしも あこがれます。

会長の遺言

キメラアントを「駆除」する件は、当事者や読者からすれば、かけがえのない話でした。

しかし、ハンター協会の副会長派からすれば、すべて「ネテロを後任させるための作戦」だったのでしょうね。そんなことのために、何人もの命を使い捨てにした。そこから何が得られたのでしょうか……。

ネテロは、「積極的に自分から動く」会長でした。それに対して「副会長」は、まったく顔が見えません。多くの人間を使い、自分からは動かない──。そのような印象を持っています。

ハンター協会は大きく変わるでしょう。悪い意味で。


最後のコマで背を向けて中央にいる人物は、ゴンの父親・ジンだと思いました。もしも彼だとして、ネテロの遺言を理解した上で、どんな行動に出るのだろう? あるいは、何もしないのか……。

おわりに: 今週の毒

何だか いい話で「キメラアント編」が終わりそうだな──、と思った人へ向けて、ここから先は自分が苦しんでいる「作者が残した毒」を おすそ分けします。この記事のサブタイトルが不穏なのも、毒の影響だったりする。

「毒つけたぞ」(超絶不謹慎!)

コルトは今

コルトとシドレは、キメラアントの女王が食した最初の人間・クルトとレイナ兄妹だったと判明しました。この事実は、さらに残酷な物語を生み出しています。

自分と妹を殺して食った「化け物」の女王に仕えて、忠実なる僕(しもべ)としてコルトは献身的に働いた。女王のために、何人も人間を さらっている。もしかしたら、自分がいた村の人間も……。

さらには、「憎むべき敵」である女王が残した子ども取り上げ(『HUNTER×HUNTER (21)』 p.65)、我が子のように・自分の妹のように育てている(『HUNTER×HUNTER (24)』 p.181)──。

すくすくと異常な速度で成長する あの子とコルトは、いま、どうしているのだろう。

コルトはレイナの面影を子に求めるのでしょうが、そんなモノはない。「キメラアントらしいキメラアント」として成長し、「レアモノ」を欲するかもしれません。

もしもそうなったら、人間として「クルト」は、あの子を「始末」できるでしょうかね? それとも「コルト」として、子を守り続けるのか──。

あるいは、「オーラを矢に変えて放つ念能力」や「自在に蜂を操る能力」を子が発揮しても、それはそれで──痛ましい。

NGL の今後

ニュースのレポータは不吉なことを言っている。NGL にも機関の強制捜査のメスが入ることは必至──と。

これは、ブロヴーダやシドレが平和に暮らす(であろう)村にも、いつかは機関(ハンター協会?)の人間が やってくることを意味しています。

ネテロ会長やモラウ・ナックルのような、「甘い」人たちばかりでもないでしょう。「アリ・即・斬」とばかりに排除しようとする動きも出てくるはずです。

レイナの母親や ほかの村人も巻き込みながら……。

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