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『HUNTER×HUNTER(ハンター×ハンター)』 No.10 「9 月 3 日」

Defenestration 根性が座った──華麗なる脱出

極上のミステリィ小説を読んだような「やられた!(にんまり)」が味わえる後半でした。なにしろ「密室トリック」が出てきます!

この密室で描かれたシンプルな謎と「回答編」は、10 年以上の時間が流れた今でも色あせていません。これ以上のトリックを「ジャンプ」で読めた作品は、『DEATH NOTE』くらいです。

No.089 「9 月 3 日 5」

3 億以上は見込める蔵の中身を置いて どこかへ行くなんて、ゼパイルには信じられなかったはず。──いや、それは誰でも同じか。

だまし・だまされの生活を送ってきたゼパイルには、仲間から「任せる」と言われた経験が少なかったと思う。ゴンとキルアに信頼されて、彼は うれしかったでしょうね。


「仲良くデート中」──には絶対に見えないノブナガとマチです。でも、世のカップルの何割かは、こうやって不機嫌な顔で一緒にいたりする。

2 人ともウボォーギンのことを絶対的に信頼しているけれど、両者が信じている点はズレています。

ノブナガはウボォーの強さを疑わない。たしかにクラピカとの戦闘中でも、経験と頭で善戦していました。常識破りな鎖の能力がなければ、ウボォーギンは負けなかったでしょう。

マチは、「ウボォーギンは集合時間に遅れない」と信用している。なんと言うことのない点に思えますが、つまりは「旅団の掟を守る」気持ちが強かった。


キルアは、ノブナガとマチの強さをヒソカ程度と判断している。相手の強さを見抜く精度は、3 人の中でキルアが一番でしょう。

実際にヒソカと戦ったゴンですら、旅団の実力が分からなかった。いかにキルアが相手の実力を見極めてきたかが分かりますね。実戦で命を懸けて修得したに違いない。


鎖野郎」の対応についても、ノブナガとマチとでは意見が違う。「まだ 何も 言ってない」と口にしながらも、マチは団長と「鎖野郎」を会わせる気だったに違いない。

幻影旅団のルールで、コインの裏表を当てる場面が よく出てきます。しかし、彼らの実力からすれば、たとえゾルディック家の執事・ゴトーを相手にしても 100% 的中できそう。

とくに この場面のマチは、コインを普通に投げて普通に受けています。これなら素人でも当てられるのでは? それとも、じつは受け止めた瞬間だけ高速に動いているのかな。

ノブナガもマチも、いつも誰かと揉めていますね。そんな 2 人を組ませたのは、むしろ被害を最小限にするためかも。


あきらかに やつれているクラピカは、ようやくボスであるライト・ノストラードと対面できました。ボスから礼を言われても、クラピカには少しも うれしくないでしょうね。

いまのクラピカは、「人体収集家」であるネオンと、「たんなるボス」であるライトと、どちらに怒りを向けるか迷っている段階なのでは……。

HUNTER×HUNTER 9 巻 「9 月 1 日」 1 - エサ×ヒル×夜 | 亜細亜ノ蛾

センリツとバショウに変装の指示を出すライトですが、バショウの格好は気にならないのかな。ボスと会うのに上半身裸なんて、バショウも度胸がありますね。


ゼノが掲げている「生涯現役」は、けっしてダテではない。猛獣のような顔をしたシルバと言い、普段から気を抜いた表情が ほとんどない彼らは、完全に「仕事モード」ですね。

クラピカとゴンたち・暗殺者──、3 者の状況は まるで違うが、どこも緊張感が漂ってきた。

No.090 「9 月 3 日 6」

3 つの時から 命がけの「尾行ごっこ」をしていたキルアの相手は、暗殺のターゲットだろうか、それともイルミなのか──。

「絶」を使うと、存在感が薄くなるらしい。──クラスに 1 人は、つねに「絶」状態の名人が居たなぁ……(自分は悪い意味で目立っていた)。

完全な「絶」状態の尾行者を察するノブナガも達人です。人が すくない場所では、わずかな音を立てただけでも相手を見つけるはず。

そのため、尾行を中止する合図が「携帯電話のコール」なのは危険だと思う。ただ、ほかに良い方法がないかな。


ノブナガの読みが確信を突いていて、なおかつ冷酷です。「ウボォーの状態」まで冷静に予想している。さらには、マチの勘も的中しています。ゴンたちは、こんな連中を相手に捕まえようとしているのか……。

追跡者を見つけたノブナガの視線には、2 人と一緒にゾッとしました。こんな奴に睨まれたら、足が すくんで動けなくなる……。

キルアの動きは常人をはるかに超えているけれど、(『ドラゴンボール』のピッコロに似た)フィンクスは余裕で動きを追っている。最小限の動きでキルアを捕まえたところも、彼の力量が分かります。

ところが、「腕相撲ランキング」で 2 位のフィンクスから、自力で逃げ出したキルアも すごい! まるで実力が近い 2 人の戦いに見えますが──もちろんフィンクスは全力を出していないでしょうね。

アクションも見応えがあったし、「二重尾行」の作戦が鮮やかでした。ノブナガとマチの動きにキルアが神経をすり減らしているころ、うしろからフィンクスたちが追っていたのか……。

No.091 「9 月 3 日 7」

パクノダとマチは、ゴン自身が「鎖野郎」だとは考えていないように見える。その可能性に気がついた人物はフィンクスだけでした。

この「子どもだから油断している」ような態度は、実戦経験の多い旅団員にしては おかしいのでは──という疑問は、遠い遠い未来で答えが出ます。


フィンクスは、キルアの生死についても質問の内容も、すべてノブナガに任せている。これは団員同士でも上下関係がある──のではなく、たんに役割分担でしょうね。

今死ぬか 後で死ぬか どっちが いい?」なんて 2 択を即座に思いつけるノブナガは、相手に重圧をかける役にピッタリです。

役割と言えば、飛び回っているキルアをフィンクスは片手で捕まえた。一方のマチは、ゴンが動き出す前に押さえつけている。さらわれていくウボォーに反応した人物も彼女だけでしたね。

「後の先」と「先の先」の違いを感じます。


「天然」なシズクの おかげで場が和んだ──のは一瞬だけで、張り詰めた空気は変わらない。ノブナガの ねちっこい性格が、場の温度をさらに下げている。

もしも この場にシズクが居なくて、ゴン・キルアとヒソカとの関係がバレていたら──どうなっただろう? ──誰と顔見知りだろうが、ノブナガの気は変わらなかった かもしれませんね。

幻影旅団が仲間のために 泣けることを知って、ゴンは逆に怒っています。もしも機械のように血も涙もない 連中だったら、怒る気も しなかったでしょうね。

No.092 「9 月 3 日 8」

この扉絵は ふんいきが最高です! ウボォーギンの葬儀に出る幻影旅団──のイメージでしょう。実際に葬儀が行なわれた可能性はあるけれど、「ある人物の存在」からして、この絵どおりには実現できない。

葬儀の時くらいは、ヒソカも化粧をしないようですね。それなのに団長の額にある十字架は そのままだから、タトゥーなのでしょう。これで どうやって変装するんだよ……。


鋭いトランプを首に押しつけたキルアは、「ヒソカは本気で切るつもりだった」と見ている。そう思っても不思議ではない殺気です。

自分の考えは逆で、ヒソカはキルアの命を守ったのだと思う。ほかの団員が先に動いていたら、すでにキルアの首は飛んでいたかも……。

なかでもフェイタンは、相手が子どもだろうと容赦がない。たとえ 2 人が「鎖野郎」と無関係でも、「生意気だ」というだけで、平気な顔をして拷問にかけそう。

団員同士で揉めた時のルールとして、ここでもコインで決めています。ただ、どうもノブナガが投げたコインは、表側しかない気がする。マチとの時とは あきらかに投げ方が違うから、「裏側があるかどうか」を見られないように投げたのでは?

──と思ったけれど、団の掟を破ってまで、ノブナガが「ゴンの指の爪」を守るのも おかしいか。


パクノダの「記憶を探る 能力」については、興味深いことにライト・ノストラードが すでに「自白させる能力」として見抜いていました(ほかの幹部からの入れ知恵かも)。

というか──、だったらフェイタンに拷問された人たちは、気の毒にも ほどがある! なんのためにいたい思いをしたのだろう……。

ただし、パクノダの能力は貴重だから、あまり危険な場所へは行かせない可能性が高い。服装的にも危ないし。


ぶっきらぼうな乱暴者に見えるフィンクスですら、「鎖野郎」が普段は鎖を身につけていない可能性を考え出しました。やはり幻影旅団の団員は、頭が切れる者ばかりです。

そんな優秀な頭脳が集まっているのに、なぜかゴンとキルアを解放しようとする。完全にアジトがバレたから、ネットで情報をばらまかれて、マフィアや警察・対抗組織などが一斉に動く──なんて考えは ないのかな。

そんな事態になったら、さすがの幻影旅団でも──対応が面倒くさい(その程度か)。


つい先ほどまではゴンとキルアのことを、憎んでも憎みきれない「鎖野郎」の仲間かと疑っていたのに、「旅団に 入れよ」とノブナガは軽く誘う。ほかの団員も、あくまでも団長の判断まかせにしている。

幻影旅団の異常さが際立つ場面です。

そもそも欠員は 1 人だけなのに、キルアも入団させる気でしょうか。2 人で 1 人の「半人前」扱いなのかな。コルトピ師匠と戦えばキルアが勝てるだろうから、問題なく入団できるけれど。

さわやかで いつも陽気に見えたシャルナークは、ずっと表情が引き締まっています。自分のせいでウボォーギンを失った──と自分自身を責めているのかもしれない。

責任感や使命感は、キルアも感じているのだが──。

No.093 「9 月 3 日 9」

H×H』の──冨樫義博作品の真骨頂! といった話でした。パラパラッと 3 分間くらいで読めるけれど、この回を描ける天才は 30 年に 1 人だと思う。

今回の脱出について、かなり以前にネタを書きました。

『ハンター×ハンター』 10 巻の密室にジャンプキャラが挑む! | 亜細亜ノ蛾

現在の「ジャンプ」で連載している作品のなかで、ここまで鮮やかな場面を描けるのは、『めだかボックス』と『SKET DANCE』くらいじゃないかな……。次点は『クロガネ』と『magico』あたりでしょう。

そもそも、おそらく今回の脱出法を「ゴンに思いつかせる」ためだけに、ゼパイルとの やり取りを描いた可能性が高い。たとえカベに穴をあける方法をゴンが発想しても、ノブナガが見張っているから、キルアに伝えられなかった。

その構想力が恐ろしい……!


ノブナガ・キルア・ゴン──それぞれの心理の見せ方も見事でした。

まず、ノブナガが なぜ少年たちに こだわるのかを、フランクリンとシズクの凸凹コンビを登場させて、客観的に語らせている点が良い(シズクを「凹」と呼ぶには一部分が出っ張りすぎだけれど)。

素っ気なさを限界まで極めたシズクと一緒にいると、大ざっぱなフランクリンでさえも人情家に見えます。団員たちのなかでも、とくに 2 人は仲良しに見えますね。

ところで、回想シーンでウボォーギンが「ひのきのぼう」を二刀流にしているけれど──、アンタ、武器なんて いらんやろ……。


キルアが自分から危険に飛び込もうとしている理由は、単純に脱出したほうが安全だと言うよりも、イルミの呪縛に勝てるかどうかに こだわっているからです。ほとんど命を捨てに行っている。

こうやって考えていくと、ゴンが一番 意地を張っているようでいて、何かに対する信念や こだわりが見えてきません。

たとえば、ゴンが「人殺しは良くない」と思っている理由は、一般的・道徳的な感情でしかない。幻影旅団に入る気がないことも、「人殺し集団だから」とか「クラピカの敵だから」といった程度でしょう。

どちらかと言うと、いつも冷静なキルアが異常な状態だから、彼を解放するために脱出方法を考えた──という感じがしました。「オレはいいの !! でも キルアは だめだ !!」という言葉に すべてが表われています。

──それで良い! 友だちのために本気で動けるなんて素晴らしいし、「こだわる」ことは心を不自由にする。

でもキルアの一生のうち半分くらいは、「ゴンに振り回される」と なりそうな予感がします。たぶん、的中する。

では、残りの半分は? それは──。

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