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ぼくのエリ 200 歳の少女』 (Let the Right One In)

Rubik 不揃いのままで──生きられたら

ずばり、主演のカーレ・ヘーデブラントの美しさを楽しむ映画です! パッケージの上段にいる金髪の子がカーレくんで、ずっと この子が「エリ」かと思っていました。

「Google イメージ検索」でカーレくんを調べてみると、なんとなく──将来はマコーレー・カルキンエドワード・ファーロングみたいに なりそうな気配が見え隠れします。しかし、われわれは現在に生きている。いまを味わおうでは ありませんか!

カーレくんの役名は「オスカー」で、しかも自分で 256 回くらい「女の子じゃない」と言う子を好きに なります。──完全に萩尾望都先生の『トーマの心臓』じゃないですか! 「ぼくのユーリ」じゃないことが不思議ですねー。


すっかり「オスカーに食われた」(二重の意味で皮肉)感のあるエリですが、エリ役のリーナ・レアンデションは「濡れた場面」でキラキラ光る女優さんでした。

オスカーとエリとの関係を中心に描き、美しい背景を抽象的に重ねる映像を味わえます。そして、それだけでも満足できる映画でしたね。つまり、物語としては……。


あと、この映画には美少年・オスカーの裸が何度も出てきたり、見た目は年齢 12 歳の少女であるエリが着替え中で裸の場面が映ります。だからと言って、これからアナタが映画を観る理由は尋ねませんので、ご安心くださいね!(にっこり)

日本語版の最悪な点

邦題が最悪です! ネタバレだから──では ありません。まぁ、内容に関連してはいるのですが、このタイトルのせいで内容まで見誤ってしまう。

エリのことを「200 歳の少女」と呼ぶ点と、数カ所のセリフ(の日本語訳?)と、ある一場面の「修正」のせいで、エリの人物像が ぼやけています。それこそ、ボカシ修正のように。

何度も「自分は女の子じゃない」とエリが言う理由は、日本語版だと「200 年も生きているから」──つまり「老女どころの年齢じゃない」という意味にしか取れません。

ところが──なんと、ボカシのない無修正版を観ることで、原作に書かれた設定が(なんとなく)分かるのでした。ぼかしたことで、よけいにエロティックさだけが強調されるという典型的な例ですね!

STUDIO MINO トーマス・アルフレッドソン監督『ぼくのエリ』☆☆☆☆

ただし これは、映画としても失敗だと思う。もうすこし分かりやすく──たとえば「エリの下半身は醜く焼けただれていた(または縫い合わされていた)」といった映像を見せるべきです。そうしないと、わざわざ着替えを出す意味がない。

原作に書かれていること

映画版の『ぼくのエリ』は全体的に説明不足で、原作を読んで初めて物語が補完されます。エリの言う「女の子じゃない」という意味も、原作では明確に理由が書かれている。

エリを守ろうとする中年男・ホーカンペール・ラグナル)が、純粋な愛情からではないな──という点は、映画でも なんとなく分かりますけどね。

ぼくのエリ 200歳の少女(ネタバレ)|三角絞めでつかまえて

物語としては及第点以下だと思います。ところがウェブ上の感想では、むしろストーリィを絶賛している人が多くて驚きました。彼らとは違う映画を観たのかな……。

映画ならではの表現

自分は「原作至上主義」だけれど、それは「原作どおりに作れ!」という意味とは正反対です。原作は原作として、映画は映画だけの表現を見せて欲しい

ぼくのエリ』に限らず、映画は決められた時間が短いから、余分な要素は詰め込めません。ところが この映画では、4 コママンガ的な「起承転結」で言うと、

  1. 『起』が なくて、
  2. 『承』から始まって 4 ページくらい続き、
  3. いきなり見開きで『転』が来て、
  4. 『結』は なくて次の『承』に続く

映画版の『ぼくのエリ』は、完全に開き直って抽象的な映像美を重ねていくか、「これは吸血鬼映画ですよ!」と説明的になるか、どちらかを選ぶべきだったと思う。

──という映像で 8 割くらいは構成されています。おだやかな空気の風景が続いたあと、とつぜん急展開が襲ってくる。

オスカーの「抱きつき」やエリの「ベッド侵入」(ごくり……)が唐突すぎるのは、「ラブコメにはアリガチなこと」ですけどね! (ラブコメだったのか!?)

ギャグにしか見えない

一番ビックリしたのは、ラスト直前のプールの場面に「感動しました!(涙)」と言っている人が いたこと。最低でも 2 人は確認しました。

え!? アレって、この映画で最大のギャグですよ!?

だって、オスカーを助けたいだけなら、ちょっと突き飛ばせば良いだけじゃないですか。それに、まっさきにオスカーを引き上げるべきです。連続コンボで点数を稼いでいる場合じゃありません。

自分もラストの場面を最初に観た時には、「心暖まる終わり方だな」と一瞬だけ思いましたが──違う、そうじゃない。

目撃者をプールに残したせいで、あわれオスカーくんは逃亡生活を送るしかないのでした──。


ホーカン先輩の行動も苦笑の連続です!

  • 屋外で堂々と手際の悪すぎる採血
  • どう考えても見つかる学校での捕獲
  • 発覚しにくい雪山ではなく用水路へ死体を投げ捨て

また、硫酸をかぶったところで歯型や指紋で身元が分かるのだから、学生たちに硫酸をかけながら逃げれば良かったのに。

ホーカン先生が退場した後半では、超人的なエリの姿が明かされるため、「最初から自分で血ぃ吸えるやん!」とツッコミを入れたくなります。

そして、これだけ献身的だったホーカンを、アッサリと突き落とすエリも笑ってしまう。ただ この点は、「人間じゃない」エリの非情さを描いている──と好意的に受け取れますね。

オスカーの将来も、第 2 のホーカンだよなぁ……。

そして一番笑えるのは、オスカーの鼻水だったりして。オスカーくん、出番の 98 割は鼻水ずっるずるです!

おわりに

文句ばかり書きましたが、映像美は素晴らしかった!

この映画から美しい映像だけを切り貼りして、30 分間くらいのプロモーション・ビデオを作れば、おそらく本編と同じくらいの満足度を味わえるのでは?

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