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回転木馬のデッド・ヒート』 村上春樹・著

村上春樹氏が人から聞いた話をまとめた 1 冊です。

いつものように日常からファンタジックな世界へ急に突入する──といった場面は ありません。しかし、なにしろ話の聞き手がハルキだけあって、普通のエピソードでは終わらずに、どの話も幻想的です。

全 8 話の短編小説として読むこともできるし、「不思議だな」と読み流すこともできる。読み終わった後に背筋がゾクッと来る話もありました。

どの語り手も いわゆる「一般人」のため、芸能人のように派手な生活ではないけれど、それでも ありきたりの話では済まない。聞き手が良いことも ありますが、村上春樹氏の言葉を借りると、

話のほうから「話してもらいたがっている

──という印象を受けました。そう、どんな人にでも、胸の奥に仕舞っておけない話が 1 つや 2 つは あるのでは? 一流の話し相手が見つかると幸運ですね!

「はじめに」

まず、冒頭の言葉が おもしろかった。

  • パン屋のリアリティーはパンの中に存在するのであって、小麦粉の中にあるわけではない。
  • 僕自身と僕の現実生活だってぴたりと合致してはいないのだ。
  • 面白味というものは、我慢強さというフィルターをとおしてはじめて表出してくるもの
  • 自己表現が精神の解放に寄与するという考えは迷信であり、好意的に言うとしても神話である。

こうやって「ハルキ語録」が 7 ページ弱の間に詰まっています! やはり小説家だけ合って、インプットするだけではストレスが溜まるのでしょうね。

寒気のする話

アマチュア・カメラマンとしては、望遠レンズで女性をのぞき見する「野球場」という話が興味深かった。犯罪行為に手を染める気は ありませんが、「人物の写真を撮る」ことの延長線上は「素顔を見たい」ですからね。

自分が一番好きな話は、最後の「ハンティング・ナイフ」です。村上夫婦がバカンスに出かけた旅行先のエピソードで、ほかの話と同様に何一つ不思議なことは起こらない。それにも かかわらず、何もかもが奇妙に思えます。

最後の最後に出てきた「ナイフ」の切れ味が鋭い

ただ、あまりにも鋭く切られたため、読者の大半は「あれは何だったんだ?」という感想を抱くでしょう。バッサリと切られていることにも気づかずに……。

おわりに

「怖い話」の不作が続くなかで、『回転木馬』は久しぶりにゾクゾクしました。やはり自分には、より実話に近くて身近なほうが怖い。

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米びつの底を見てみたら、ビッシリと小さなゴk

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