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『007 スカイフォール』 (Skyfall)

DSCF1113crop 空が落ちたかのように──静かな島

ダニエル・クレイグジェームズ・ボンド を演じる新しい「007 シリーズ」も、今回で第 3 弾になりました。本作品のテーマは「世代交代」です! ということは──。

冒頭から大迫力のアクションが楽しめる! ──と思いきや、5 分くらいで「いい最終回だった」な空気が流れて、急にオープニング曲が始まって驚きました。本編のシリアスさと「イメージ映像」との融合が素晴らしい!

そして、シリーズ第 1 作の『007 ドクター・ノオ』でショーン・コネリージェームズ・ボンドを演じてから、50 周年を記念する作品となりました!

レトロなアストン・マーチンや古い施設を出しつつも、時代後れにならず「古くて新しい 007」を作り上げています。サム・メンデス監督やスタッフが「007」に かける意気込みを感じました。

お色気シーンも「007」だけに出てきます。もしも お茶の間で流れたら、本編の言葉を借りると「ギリギリ合格ね」な感じ(つまり──)。ちょっと親密になってきた恋人同士や、仲良しの友だちと楽しみたい映画ですね!

舞台を飾る花

最初のアクションで一気に映画の世界へ のめり込みました! カー・アクションからバイクの競争へ移り、電車の上での肉弾戦──と「よく考えつくな!」と叫びたくなるシーンの連続です!

そしてナオミ・ハリスが演じるイヴ・マネーペニーは、「007 を撃ち落としたボンド・ガール」の称号を授かりました! プロが現場で起こした事故とはいえ、3 か月間は罪の意識に支配されていたのでは?

でも、意外にも気にしていない様子で、イヴはボンドと再会しています。──なんだか劣化ウラン並の危険性を彼女に感じました。情報が少ない人物のため、後半までずっと「彼女が真の黒幕」と疑ってしまう。

「007」に限らず『ルパン3世』などでも見られるように、「主役の男は女に優しいが、女は平気で裏切る」という黄金の構図が できあがっている。


ベレニス・マーロウが演じるセヴリンも良かった! 「敵側の女」なのに、ボンドを落とし入れようとしなかった点が珍しい(結果的には 2 人とも罠に はめられたけれど)。

M の本心は

いちばん疑わしい「ボンド・ガール」は、文句なしに Mジュディ・デンチ)です。

奪われたハード・ディスクを回収することは、多くのエージェントを救うことにつながる。──と明かされるのは後半です。それまでは、「007 が知らないような MI6 の暗部が隠されているのでは?」と思ってしまった。


M と ボンドが 2 人きりになると、母と息子みたいに見えます。最後の戦いでは父親代わりが登場して、「家族で悪を倒す」みたいでした。

ところが! M がボンドに気を許すような場面は ほぼ皆無です! せいぜい「信頼できる部下」程度の扱いでした。──最後の場面以外は。

本当は不合格だったボンド適性試験を不問にした理由は、彼に対する M の情に見えます。しかし、実際には「手近に置いてコントロールしたかった」からと、「野放しにすると報復が怖い」だった可能性が高い。

せめて、M とボンド(とオッチャン)が 同じテーブルで紅茶を飲む──、みたいな場面が一瞬でも あれば良かったのに。

ただし、そのプロであり続けた M の姿勢を見たから、ボンドにとっては「誇り高い第二の母親」として思い続けられました。

反発と協力

冒頭で書いた世代交代を象徴する人物が Qです。三十路には見えないベン・ウィショーが若々しく・憎たらしく演じた おかげで、最初のギスギス感が楽しかった。

M の引退を要求するギャレス・マロリーレイフ・ファインズ)もまた、次の時代を臭わせる──。

007 と M の「旧体制」が、Q とマロリーの「新体制」と反目しながらも、いつの間にか協力し合ってく展開が良かった。ベタですが、ベタだけに安心して身を任せられます。「と見せかけて じつは──」みたいな複雑さは いらない。

悪は誰だ?

黒幕のラウル・シルヴァは、『ノーカントリー』で強烈な印象を残したハビエル・バルデムが演じています! 今回も彼の不気味さが すごかった!

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スパイ映画で よくある「奥歯に仕込んだ毒薬」は、たしか『キャプテン・アメリカ』でも出てきました。そう、格好良くは散れないのです……。あの場面はグロテスクだったけれど、罪悪感と恐怖に気圧される M の表情が重要でした。

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シルヴァは「M に盲信したエージェントの末路」を思わせます。彼を見たボンドも、何度か M を疑ったのでは? シルヴァとボンドが、まるで兄と弟に見えるような場面も ありました。それ以上の関係にも──。

捕まることまで想定した綿密な計画──なわりに、シルヴァは警官に変装して普通に銃を持って押し掛けています。ジェームズ・ボンドが子どものころの家(!)へも、わざわざヘリを降りて足を使っている。

いつでも「コンピュータでピコピコ」と M を暗殺できるのに、シルヴァは自分で出向いていく。このチグハグさは、シルヴァの「M に見てもらう! 認めて欲しい!」という気持ちを表わしています。

M に見せた悪趣味な画像からも分かるように、シルヴァは彼女を母親以上の存在──女王として見ている。最後にシルヴァは、けっきょく自分の望みを叶えて去っていきました。ある意味では幸せだったのかな……。


ちなみに、シルヴァが独占した廃虚の島は、日本の軍艦島です。エンド・ロールで漢字が流れて何事かと思いました。

そう言えば「ドラム缶に閉じ込められて共食いするネズミの話」って、日本の たとえなのかなぁ──などと深読みしたりして(狭い場所・小さい体と心・身内で争い)。

おわりに

Q から「借りている」ワルサーを落として知らん顔だったり、ボンド・ガールがいるシャワー・ルームへ「潜入調査」したり、列車を破壊しておいて「服装の乱れ」しか気にしなかったり──いつものジェームズ・ボンドが楽しめました!

その一方で、自分が育った古い屋敷で戦う展開は、じつは一度も なかったのでは?(昔のシリーズは知らない) 燃費と自然に悪そうなレトロ・カーも、一周回って新しい。古典的であることが最新モードな現代に合っています。

上で名前を出したキャプテン・アメリカが出演する『アベンジャーズ』でも、古い精神性の大事さを説いていました。──そうそう、シルヴァが捕まっている場面も『アベンジャーズ』っぽい! 「ハルクに変身して逃げるのか?」とか考えたり。

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最後に表われた「James Bond Will Return」(ジェームズ・ボンドは戻ってくる)の言葉にグッと来ました! しかし、次回もダニエル・クレイグなんだろうか──。

007 カジノ・ロワイヤル』も『007 慰めの報酬』も、「007 らしくない」という感想を書きました。良い意味と悪い意味が込められています。

「スタイリッシュに戦う勧善懲悪もの」ではない新生「007」を 3 作とも楽しみました。今後も伝統を大切にしつつも、新しいことに挑戦し続けて欲しい。ジェームズ・ボンドが生きる英国は、伝統とパンクが共存する国だからです。

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