鬼頭莫宏 『なにかもちがってますか

Memorial to the Murdered Jews of Europe - Berlin, Germany 何人眠れば──世界は良くなる?

なにもかも間違っている「中三病」患者の話です!
同じ作者の鬼頭 莫宏が描く『なるたる』や『ぼくらの』とは まったく違うジャンルでありながら、同じ系列と見て間違いありません。しかも、前者の 2 作よりも「牙を剥く」時期が早い
「その瞬間」は いきなり来るぞ……!

主人公で間違いない?

この作者には珍しく主人公はクズだと感じました。

過去の鬼頭 莫宏作品にも「悪人」は存在したけれど、多くの場合は独自の思想で悪の側に回っています。悪いヤツでも共感できる部分もあった(もちろん、「豚食い」など最底辺の人間は除く)。

ところが、日比野 光(ひびの みつる)は、とくに なんの考えも持っていません。それどころか、「間違えた相手が好きな人じゃなくて良かった」と安心しています。
自分の過ちを認めて警察へ出頭することを決意──した数十分後には、「エッチな想像」をして「人生 最良の日だ」などと(顔は見えないけれど)ニヤケている。

こいつが「主人公」で本当に良いのだろうか──。

中学生らしさ

「好きな子を守るために『悪』と戦う主人公」と見れば、少年マンガの王道展開です。
ただし、日比野は自分の頭で考えていない
たとえば、携帯電話で通話しながら車を運転する加害者や、巻き込まれた被害者のなかに、自分や鶴里の家族が含まれている可能性を、なぜ一瞬でも想像しなかったのか。
その「想像力の欠如」すら一社は計算済みだろう。

しかし、それこそが中学 3 年生らしい
自分が光と同じ能力を持っていたら、もっと分かりやすく悪用するはずです。例を挙げると、【自主規制】──挙げられなかった。
とにかく自分ならヘマをして、警察──よりも恐い施設に捕まり、「鬼頭作品らしい扱い」を受けるでしょうね。

度胸か鈍感か

日比野は、普通ではなくて とても変わっています。
カメさん」と気やすく接する友だちの亀島 俊夫(かめじま としお)を消すように言われて、光は拒否する前に「どうして?」と聞き返している。
ほぼ初対面で意味不明のことを語る転校生に対して、たとえ話(「頭脳と手足」)矛盾点を突く。
頭が良いと言うよりは、言い訳を探し慣れている

不良たちや一社に対して光はオドオドしていません。ものすごく度胸だけはあるように見えましたが、鈍感な だけでした。いや──、それよりも、
「この世界に生きている感じ」が希薄なのかも。

転校生は演説好き

一社 高蔵(いっしゃ こうぞう)も命知らずです。
海で行なった実験は、不必要に目標物の近くで一社が立っている。この実験方法であれば、誰かが近くにいる必要は ありません。
屋上での悲劇(と思っている人物が少なすぎる)の直後なのに、どうして高蔵は自分が標的になると考えなかったのか。
日比野も、あぶないから離れるように言うべきです。──が、そこまで彼は頭が働かないだろうなぁ……。

時に無鉄砲だけど、一社にはカリスマ性がある。
おまえ程度に 自分が間違ってる と思ってるヤツなんて いっぱいいる」と説き伏せる場面が良かった。日比野と同学年の時に こんなことを言われたら、自分でも一社に従いたくなります。
ただし、高蔵の理論は大まかには同感ですが、「巻き込まれたやつは より良い社会への 殉教」などの細部は納得できない。
遅かれ早かれ、自分も 1 巻ラストの結論になる。

嫁は空気のように

新瑞橋 恵理(あらたまばし えり)は、自分が大好きな「不憫ちゃん」的立ち位置です。
日比野を「ミッツ」と呼んで嫁ポジションを確保している──つもりが、ダンナからは「新瑞橋さん」と冷たく返されている。
おまけに、新瑞橋には素っ気なく受け答えする日比野は、一社に名指しされて照れています。この場面で恵理は「疑いの目」で見ていますね! すでにジェラシィの炎を燃やしている。
やはり女のカンは良く当たる──!

しかし、新瑞橋は影が薄すぎますね。今後、物語に深く関わってくるとしても、やっぱり──「事故」に巻き込まれる役目に なるのでは……。
それに、どちらかと言えば亀島との「かけあいマンザイ」のほうが似合っているから、(近い)将来は「亀島 恵理」と呼ばれそうです。

冷たい床の下で

不憫と言えば、奥田 優里(おくだ ゆうり)以外に適任は いません。苦しまずに逝けた点以外は、良いところが何一つない──。
脳幹」の死因は、『ハンニバル』の「お食事」に次ぐ残酷さです。ほかにも残虐な作品や場面を知っているけれど、どちらも当事者の悪意が薄いだけにタチが悪い。

壊れるヒロイン

鶴里 純(つるさと すみ)も あやうかった。
親しい友人が「あんなふう」に されて悲しむ──までは分かるけれど、日比野に対して鶴里は必要以上にアピールしています。本能的に「女の武器」を使っている。
さらには、現時点で「どうか しちゃっても いい」と自暴自虐の傾向が見え始めています。
名前のとおりに純粋すぎるのか、ヨコシマなのか──。

もしも鶴里が「犯人」を知ったら、どんな顔をするのだろう。その場面を想像すると、いまから──ワクワクします!

おわりに

第 1 話 「ぼくらはっすぐ歩けない」のカラー・ページだけ、一社はメガネをかけている。本編では まったくメガネが出てこなかったから、かなり気になりました。
まさか、あんな伏線だったなんて……!(棒)

「突然の転校生に見つめられて照れる」場面は、『魔法少女まどか☆マギカ』の某シーンを思い出します。「パンくわえ遅刻少女」みたいに、わざわざ作品名を挙げるほどでもない「定番ネタ」なんでしょうかね?

魔法少女まどか☆マギカ 第 10 話 - 頼らない、倒れない | 亜細亜ノ蛾

さて、第 2 巻は いったい何人が──。

[2] このページの一番上へ戻る