鬼頭莫宏 『なにかもちがってますか

IMG_3174 見たかった光景まで──あと少し

前巻とはジャンルが間違っている第 2 巻です!
なにしろ この作者だから、主要人物だって容赦しない。いったい何人のクラスメイトや「善良な市民」を巻き込みつつ世直しが進むのか──とドキドキワクワク緊張しながら読み進みました。
それでも──まったく予想できない展開です!

外れた理由

一社 高蔵への疑問が深まりました。
日比野に能力を向けられる場面では、たしかに「死は 不可避な もの」と悟りきっているように見えます。中学三年生で そこまで達観とは、どんな人生を歩んできたのだろう……。
ただ、「日比野の能力は自分には当たらない」と一社は知っていたようにも思いました。非暴力主義者じゃない非情な光に自分を信じさせるため、わざと標的のフリをしたのでは?

現時点では、「目標物に意識されていると外れる」という仮説を立てました。いままでの「標的」は全員、自分が消されるなんて(そして事故するなんて)一瞬たりとも考えていなかったはずです。

適応能力の大切さ

(憎々しいことに)一社は勉強も得意でした。
ただの「中三病」なだけ──ではなく、キッチリと小テストで 100 点を取っている。それだけではなく、勉学に対する考え方が興味深い。「学校の勉強なんて なんの役にも 立たない」と考えていそうだったから、かなり意外でした。

いや、彼は最初から「社会への適応能力」を見ている。
この点が、多くの独善的な選民主義者と一社との大きな違いです。将来は政治家を目指しそうな高蔵だけれど──、多くの人から共感を得られる人格ではないからムリかな。

「枠組みの中だけは秀才」という「一見天才(風)」が多いなかで、一社は どこまで広く・深く世界を見ているのだろう──。

ボンヤリ主人公

日比野 光は、不注意にも ほどがある!
妹の(かなで)が隣の部屋にいる──どころか横にいる状態で、ブツブツとアブナイことを話しています。一社の部屋でも、姉が聞いているのに気にしていない。
普通の人に 迷惑をかけるのは イヤ」と言いながら、交通事故の巻き添えを食う人間のことは考えていません。
そこが光らしいし、中学生らしいけれど。

極めつけは「心中」(しんじゅう)の場面です。
誰が見ているか分からない公園での行動は、自分も後を追うつもりだったにしても、無計画さに あきれてしまいました。自分自身に能力が使えなかったら、どうする つもりだったんだろう?
勘違いで一社を消さなくて良かった──と喜ぶよりも、「なぜ当たらなかったか」を気にする点も、安定の「日比野節」です。
光には善悪も生死も区別が付かないのだろうか──。

持ちつ持たれつ

鶴里が悲しんでいることに違いはないのに、「自分のせいじゃなかった」と知って日比野は安心する。たとえ よく知っているタレントを消しても、チャンネルを切り替えるように光は忘れられるはずです。
それに「色々な犯罪に巻き込まれる鶴里」の妄想に花を咲かせたりする日比野だから、一社からしたら、本当に「扱いやすい道具」でしょうね。

「ダメな自分」を丸ごと受け入れてくる一社は、日比野にとっては「救世主」に近い存在です。友だち以上の関係だと感じているはず。
──そのわりには、一社にツッコミを入れる回数が増えてきました。イヤなところをチクチク突くところは、いかにも鬼頭 莫宏キャラっぽくて楽しい!

なぜか青春

バドミントンに誘う場面は、ここだけ「青春ラブコメもの」みたいでした(誰と誰が!?)。
まったく関係のない場面と見せかけて、ちゃんと一社の「計画」に つながってくる。鬼頭 莫宏作品には、「無駄な時間って 本当は 必要な時間」しか出てきませんね。
ミッツ」・「イッサ」と来て「おトモ」というオチ(落ちてる?)は、この回だけの遊びっぽいけれど。

日比野が使う能力は、「体を動かす想像」の延長だと見ました。想像力の強さで命中率を上げられる。対象物の大きさも、そのうち人間ひとりくらいは入れ替えられそうです。
ぼくらの』と同じ物理法則でしょうね!

こちらも想像力を発揮?

新瑞橋 恵理は、亀島 俊夫に声をかけたりして やっぱり仲良しに見えます。幼なじみで同じ部活である日比野と新瑞橋の仲は、これ以上の長続きは むずかしいだろうなぁ……。
からかいながらもミッツイッサの仲を恵理はジャマしません。友だちがいなかっただろう一社に気を遣っている。彼女の良さですね。

二人だけで 楽しいことをヤってる場面」を目撃した新瑞橋が、「ふたりのウワサ」を流した張本人では?
あるいは、となりにいたメガネをかけた女子は、いかにも「そっち」方面に詳しそう! 「春を 見られた」という言葉にも「(意味深)」と思うに違いない!

ますます壊れていく

鶴里 純が夜中に ひとりで公園にいる」危険性に、日比野は いままで気が付かなかった。この配慮のなさも日比野らしい。
そして鶴里だって、普通の状態ならば時間帯か場所を変えるはずです。「変な 破滅願望」(ごくり……)の件を同級生の異性に打ち明ける点も理解できません。

不憫ちゃん」のほかに自分が好きな、「不幸の嵐を巻き起こす女」の素質を鶴里は持っています。
本当は、鶴里は止めて欲しかった──のではなく、日比野に壊して欲しかった。そのメチャクチャな願いに乗っかろうとする光の本質を、純は見抜いていた可能性が高い。

間違いが加速する

自分たちの「敵」を「悪」と決めつけた上で根絶させようとするバトル・マンガの主人公たちと、日比野の思考の方向性は同じです。
「好きな子のために戦う大義名分」を得た日比野の晴れやかな表情に笑いました。笑い事ではない事態だけれど……。

いよいよ「キレイな社会作り」が本格的に始まる!
──と思った矢先に「メガネっ娘イッサ」に驚く。読むマンガを間違えた!?
一社たちには女装というか変装をする理由も ちゃんとある点が憎たらしい!

となりの姉は

一社 春(いっしゃ はる)は引きこもりのはずなのに、なぜ普通に日比野とデートを楽しんでいたんだろう?
かなり変わった人格であることは間違いないけれど、春は犯罪に対して普通に嫌悪感を抱いている。「春日記 その 1」からすると、日比野を「真の悪党」と思って積極的に接触しているのかも?
隣の部屋で堂々と計画を練っているような弟だから、姉も冗談半分と思っているでしょうね。
また、「弟に友だちが できた」と喜んでいそう。

「女子にとって大いなる代償」を払った末に、春は日比野の能力も知ってしまった。ここまで来ると、「絵空事の計画」とは思われずに、今後も春の妨害が増えそうです。
それとも、春も協力者に なって、資金面で援助してくれるのだろうか? (女子高校生援助──)

おわりに

日比野が誰かに尾行されていたり、警察が屋上を調べに来たり、「知ってるよ」の手紙が届いたり──。
不安な要素しか先にありません! 意外にも第 2 巻では犠牲者が出なかったけれど、次の巻は油断できないぞ──。


今回の「ちがってるサブ・タイトル」は、「実施」と間違えています。ひとりっ子なのにどうして「実姉」(じっし)なんて言葉がスラスラ出てくるかというと──。

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