鬼頭莫宏 『なにかもちがってますか

Pabst + Hollow Point 積み上げてきたものが──一瞬で終わる

なにもかも間違っている第 3 巻です!

日比野 光一社 高蔵の強みは、「誰にも能力を知られていない」の 1 点だけでした。それすらも、一社 春にはバレている。こうなると、ただの「ボンヤリくん」と「中三病患者」なだけですね。
──いやいや、いまや 2 人とも「×立派な(よくある間違い)」→「○れっきとした」犯罪者ですよ! これ以上、能力に気づかれては ならないのですが──。

緊張感あふれる描写以外も楽しかった!
前巻から方向性が「姉萌え」へ切り替わりかけましたが(?)、この巻では──もっと大きく間違っていきますよ!

ぞんざいなボクら

日比野と一社の知能が低下していく──。
犯行声明」の失敗は ほほえましいとして、ポイ捨てした人物への粛正がズサンにも ほどがある!
走行中に携帯電話で話すターゲットが減った件でも、喜ぶのは変にしても、落ち込むほうも異常です。

何も できない」と珍しく弱気になった高蔵を見て、光は役に立ちたかった。それは分かる。あの場面の一社は、演技ではなく本当に弱っていました。
一方で日比野は、鶴里のために「キレイな社会を作る」目的──免罪符を 256 枚くらい発行された状態です。他人へのツッコミが激しくなってきたし、自分の能力に自信が付いてきたのでしょう。
増長して失敗する──いかにも中学生らしい。

失敗の原因

日比野の能力が外れる条件」は予想と違っていた。
最初は空き缶や肩を入れ替えたから、やはり「相手に意識されていると当たらない」かと思ったけれど、あとでは実行できている。
それでも、対象者に見られながらだと無意識に外してしまうようです。まだ完全には割り切れていない。
また、日比野は「誰かに命令されると正確に動ける性格」だから、自主的に動くと また大きな失敗を引き起こしそう。

初めての

日比野と一社は何人も処分してきたけれど、相手の最期の顔は初めて直視しました。この場面の高蔵は、さすがに驚いた顔をしている。
──と思ったら、このあとも一社は目を見開いたコマが多い。「自分に命令する人物」のほうが「珍獣」だからですね。

じつは、この作品で血を描いた場面は今回が初めてでした。多くの命を奪いながらも、彼らは直視していない。
鬼頭 莫宏作品は、意外と血のニオイが しません。

ニコニコしない彼女

高岳 似子(たかおか にこ)が今回の主役です!
扉絵の大半はニコが埋め尽くし、本編では見られないようなサービス用の表情も見せている。「前かがみでアッカンベー」は、読者も前かがみさせようとしています!
「世界を救う少年少女の萌えマンガ」に近づいている。

現役の女子中学生である高岳が大金で援助されて赤面で お礼を言う場面や、独身男性の自宅で同居する展開は、危険が いっぱいでケシカランですね!

魂が 見える」発言のあとにもニコは顔を赤らめています。「スピリチュアルなメンヘラさん」と思われた──と考えたのでしょうか(当たってる?)。

彼女の謎

高岡が使う「サイコ メトリング」──「空間に残された 履歴を 読み解く 能力」だけでは、一社と日比野の行動を完全には読み取れなさそうです。どうやって真相に たどり着いたのか?
自動車事故や奥田の事件をニュースや新聞で知って、自分と同じ超能力者の存在にニコは気がついた。そこからは、ニコが独自に調査したのでしょう。地味で地道な調査も多かったに違いない。

そんなことよりも、ニコ最大の謎は これだ!
一社の姉・春と出会ってから意気投合してパジャマに着替えるまでに、何分も かかっていないはず。「いい性格」をしている女同士だから話が合ったにしても、いくら何でも早すぎるのでは? なんだったら、ひとっ風呂浴びていそうな感じもする。
この省略された時間を一コマ一コマ、じっくりと解析するべきですね!(ごくり……)

高岳が、母親の件をなかなか語らない点も気になる。
それこそサイコ メトラーなら、犯人の顔くらい すぐに分かりそうです。能力に目覚めた時機が最近なのか、特殊な状況だったのか──。

あやしい刑事

桜山 幹雄(さくらやま みきお)は、いかにも怪しい外見です。内面は もっとアヤシイ。
補佐する 役目」や「顧問」という言い方は、裏に「大きな組織」の存在を感じました。──もちろん、「警察署」ではなく。
今後は「超能力集団」が登場したり、「敵の超能力者と能力バトル」展開も巻き起こる! ──のかなぁ……。「日比野 修行編」とか? 「じつは父親も超能力者」はカンベンな!

高岳は能力者だから分かるとして、あまりにも事情に通じている桜山が不思議でした。
いくら警察官だから捜査能力に優れている──と言っても、「ポイ捨て犯に対する処罰」なんて推理で導き出せません。
あと、ニコのチェーン・ロックを切った件も地味に気になった。目をそらして「ウソである」点を強調している。
ということで──。

日比野と高岳と同じ能力を桜山も使える」説を推します!
なんとなく、「──と思わせる描写」に見えるから、わざと引っかかってみましょう。

日比野を一社と結びつけておく理由も見当が付かなかった。彼の能力に関係するのでしょうか。
ミッツひとりにしておくと暴走しそう──なら分かるけれど、それならニコと くっつけたほうが(きわめて俺得な意味で)都合が良い。

計画後のファミレスにて

ファミリィ・レストンランで計画を練る場面は、全員が不注意です。当然、大声で話すことは危険だし、それ以前の問題がある。
そもそも中学生 3 人と桜山が会っている時点で危険です。どこかの記者に嗅ぎつけられたら、事故や事件とは無関係なスキャンダルとして書かれそう。そうなったら、各種の事件と結びつけるウワサも出そうです。

携帯電話を運転中に使う人間には、自分も怒りを覚える。少しは一社に共感します。
しかし、こんなに早い段階でゴミのポイ捨てまで粛正の対象にするなんて、『DEATH NOTE』の夜神 月もビックリする。 考えなしに見えるけれど、イッサには本当に壮大な計画があるのだろうか──。

おわりに

日比野が乗っているマウンテン・バイクは、丸石自転車の「BLACK EAGLE」です。──と調べただけで、くわしくは知りません。
スタンドもカゴも付けていない本格さと、高岳の自転車にも激しく反応しているから、日比野はマニアックな自転車好きですね。バドミントン部なのに。
「中学校 自転車部」で検索すると──なるほど、お坊ちゃん・お嬢ちゃんが通っていそうな学校ばかり出てきます。なるほど。体形が変わる育ち盛りの子どもに、ロード・バイクを買ってあげられるような ご家庭や学校しか、部活動が成り立ちません。


まさかの「春日記 その 2」に作者も読者も驚いた。
おじさんも おばさんも春も、本当に良い人ばかり 少なくとも春が自室に引きこもった理由は、家庭環境では ないはず。でも、怪しげな商売を黙認してくれる優しさが、ヒキコモリの原因のひとつでしょう。
いつかは、この幸せな家族も──。

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