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扉は閉ざされたまま』 石持 浅海・著

the door that doesn't open II / 開かずの扉2 にゃんとしても──開けられない扉

倒叙(とうじょ)ミステリィの傑作です!

まず殺人事件が起こり、「犯人」視点で話が進む──。
刑事コロンボ』や「古畑任三郎」シリーズで有名な手法ですね。探偵役が いかにしてトリックを見破るか、ドキドキしながら犯人と一緒に読者は心理戦を楽しめます

登場人物は「クールな犯人役」と彼以上に冷たい「美少女の探偵役」で、「豪華な洋館」を舞台に「密室殺人」が起こり、とある事情で「なかなか警察も やって来ない」──。
アリガチな配役と設定で物語に入って行きやすかった。

ところが、よくあるパターンの作品では ありません。
「なぜ、貴方がそれを知っているのですか?」「──あ!」なんていう場面は、本作品には出てこない。密室を開けるために「鍵のかかった扉を、斧でたたき壊す」ことも ないのです。
古典の皮をかぶった新本格ミステリィでした!

文章の書き方に「5W1H」が あります。ミステリィでは「Who(誰が・犯人)」と「How(どのように・トリック)」が注目される。
しかし本作品では、ほかのミステリィでは後回しにされがちな「W」が最重要でした。その点が新しい。
ミステリィ初心者でも「犯人は誰だ?」を考えずに楽しめるし、ミステリィを読み尽くしたファンなら「意外な W 探し」に頭をフル回転したくなる名作ですよ!

意図的な違和感

上に書いた「W」とは「Why」のことです。
「なぜ」──つまり犯人が犯行に及んだ「動機」は本作品の特徴でした。「そんな理由で親友を!?」と驚いたり あきれる人がいるでしょう。自分も犯人の心理は最後まで理解しきれなかった。
しかし、あれこそ「人間らしい動機」だと思う。

自分は「怪しいな」と思った部分にはリポーター・スマートで印を付けておきます。
本作品では動機のヒントが序盤に出てくるけれど、まったく見逃していました。なにげない会話の中に、わざと違和感を埋め込むことで特徴付けをする「飾り」かと思ってしまう。

犯人と探偵

犯人である伏見 亮輔(ふしみ りょうすけ)と探偵役である碓氷 優佳(うすい ゆか)の会話は絶妙な緊張感でした! 恋人寸前だった過去と現在が交差する心境は、自分に経験が無くても感情移入が しやすい。

警察に自分の推理を告げることが、「正義の一般市民」である優佳の義務です。そういう行動に出ると思っていたから、ふたりだけで最後に会った場面では意表を突かれました。
あの場面では首に手を伸ばさなかったけれど、今後も伏見は彼女に「首を握られたまま」ですよね……。あ、でも それって、一般的な恋人や夫婦も同じことか(悟り)。

引き立て役

大倉 礼子(おおくら れいこ)と石丸 孝平(いしまる こうへい)の会話も おもしろかった! ふたりの関係が分かったあとは、一段と距離感が味わい深い。
とくに「丁稚(でっち)」と呼ばれる お調子者の石丸が、ふいに研究者の顔をする場面がピリッと締まって良かった。この作品だけで退場するには もったいない人物です。いつも殺人事件に巻き込まれる役で再登場しないかな。

テレビ・ドラマ版

おわりに

最後に扉は、開かれた──か?
いや、社会的地位をすべて賭けてでも犯人が閉ざしておきたかった「扉」は、まだ閉ざされたままです。やがて警察が やってきて、いずれ「開かれる」まで静かに待っている。
──浴室の中で。

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