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キウイγは時計仕掛け』 森博嗣・著

Stained fruit 完全な内部と──完全な外部

また「ギリシャ文字の前に単語が入る」タイトルです。
2 作前の『目薬αで殺菌します』・『ジグβは神ですか』からの傾向だし、アルファ・ベータ・ガンマの順番に なっている。
スカイ・クロラ シリーズ」が(あとから発行された)『ナ・バ・テア』から始まるように、この「G シリーズ」も『α』が本当の事件の始まりなのでは……?

『キウイγは時計仕掛け』森博嗣|講談社ノベルス 『キウイγは時計仕掛け』森博嗣|講談社ノベルス

すべての謎は解けた?

「そうそう、絆ね。絆って、牛をつないでおく綱のことでしょう?」

「ネットというものが、元来そういう装置なのでしょうね」

「人を縛りつけておく装置?」

「そうです」

「トリックよりも人間関係を楽しむ作品」
──そんな声が聞こえてきそうです(幻聴)。
しかし、「メイン・トリックがアッサリしすぎている」という批判は、森先生の第 2 作目(発行は 3 作目)である『笑わない数学者』から言われてきました。「最後に笑った人物は誰?」という謎にも挑まずに。

「素足ではなくストッキングを履いていた」と 2 回も書かれている点が引っかかります。
その状態での正確な実行(記述されている限りでは一発で成功)は、かなり むずかしいはず。言うまでもなく、「初めての経験」だろうし。ちょっと頭の中で想像するだけでも、難易度の高さが分かります。
銃の扱いに慣れていて、顔見知りだったら、十分に偽装が可能なのでは? 消音器つきの銃で仕留めて、2 発目で偽装すれば硝煙反応も ごまかせるはず。

人間味のある動機

「恐くない?」

「何がですか?」

「恐くないってだけで、もう普通じゃないよ」

そもそも動機が疑問でした。
ハリウッド映画的な家族愛」を嫌い、ナチュラル・ボーン・アマノジャクな森先生が、「親子の愛情」を動機にするだろうか?
『四季』シリーズで『F』をひっくり返したり、「へっくん」や「林さん」で読者の度肝を抜いた作者だから、大どんでん返しが今後の作品で見られるのでは──と期待しています。

とはいえ──、G シリーズは「痴情のもつれ」「狂信者の先走り」「承認欲求」「ただの自殺」など、「一般的で比較的分かりやすい動機」が多い。
詩的私的ジャック』の動機や『数奇にして模型』の犯人の心理が分からない──と読者から毎日 128 通くらいメールが届いていたりして。

忘れ去られたキウイ

「私は、あのキウイの意味が知りたいですよ。あと、γっていう文字とか」

「どうして知りたいの?」

最大の疑問は「温泉キウイ」の放置です。
プルトップがない上に設置場所から考えても、「事件とは無関係」なことが強調されている。しかし、そんな偶然が あり得るだろうか。(犀川の「意味なしジョーク」以外に)この作者は無意味なことを書かないはずです。
加部谷も雨宮も、温泉で見たキウイのことを事件と結びつけません。この点も怪しい!

おそらくキウイを設置した人間は、このホテルに犀川と西之園が泊まることを知っていたのだと思う。2 人に対して何らかのメッセージを込めていたのでは? ──西之園が温泉に入らなかった点は苦しいけれど。


海月 及介や犀川という「探偵役」が語ることが「正解」──とは限らない。彼らにも「実現が可能なこと」しか分からないし、被害者や関係者のことを考えた発言をする。
それでも、知人や友人(と読者)を納得させるために、その場限りの推理を(嫌々ながら)披露しています。それを聞いて まわりの人間が安心する一方で、だれも事件の真相を知ろうとしない。そして、それが普通です。


また、古くからの森 博嗣ファンとしては、
手榴弾の、リュウって、どんな字だったっけ?
というセリフを読んで、ニヤリとしながらも疑問を抱きました。発言者が漢字を知らない場合は、以前だったら「シュリュウダンの──」と表記するはずなのに。
もしや、キウイのこと手榴弾も本当は知っていた!?

重い思い

「犀川先生も、教えてくれないのよ。なんか、もぞもぞするだけで」

「ええ、そういう感じです」

「重さは軽いけれど【重い】モノ、なーんだ?」
そんな(答えたくない)クイズを連想させる加部谷 恵美の「残念な贈り物」でした。被害者相手のためにも本人のためにも砕けて良かった──と思いきや まさかの 2 発目です!
勘違いから始まる恋は多い(ほぼ全部?)けれど、どうなることか──。

序盤でサラッと出た雨宮 純の本音も気になる!
今までのどの彼氏よりも、山吹さんは、ええと思う」なんて、最大限の賛辞じゃないですか! 「一番の本命とは結ばれない」と信じていて、あと親友のためにも身を引いているのかな。
当の山吹 早月は、ボケボケしているようでサクサク出世していきそうだし、知らぬ間に職場で結婚していそうですが、全員がハッピィになれるエンディングは用意されているのでしょうか。

結婚と言えば、犀川 創平西之園 萌絵ですが──、なんだ このモドカシイ回答は!
もしかして、「西之園家の お嬢様が『婚前ナントカ』なんてケシカラン!」ということで口を閉ざしているのでしょうか。でも、「ヒント: 佐々木 睦子」だよなぁ。
「G シリーズ」最大のトリックは、犀川 & 萌絵コンビの関係ですね! 「2 人とも別々の結婚相手がいる」という大々々どんでん返しだったりして……。

おわりに

「西之園さんが先生なら、男子は寝ないでしょう」

「駄目。コスプレして、歌でもうたってやろうかしらって思うくらい」

あの国枝 桃子先生が、「終始ニコニコ笑顔」(※)で「ジョークを連発」(※)するほど「最高に上機嫌」(※)だったことに驚きました! なにか「おめでた」いことでも あったのかな……(ゲスの勘ぐり)。 (※→従来の国枝比)


何も話が進んでいないようで、見逃せない点もある。
それは、島田 文子の存在です。ここに来て彼女を再登場させた理由と、彼女の今後の勤務先が、シリーズを超えてカギになるのかも。優秀な彼女なら、天才科学者の目に留まる作品を作れるでしょう。

あと、島田の性格は、どうも瀬戸 千衣を思わせる。
彼女の語った「スイッチ」(『ハンニバル』っぽい)から連想して、真賀田 四季の中にある人格が他人に転移する可能性もありそうです(こっちは『マトリックス』?)。
つまり、「すべてが四季になる」。

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