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鬼頭莫宏 『のりりん

New Brighton, Wirral, Milk Race 1966 いつの時代も好敵手は──自分自身

勝負は性格の悪い方が勝つ
──そう思わせるレースの結果でした。終わってみれば すがすがしくて後味の良い試合なのに、こまかい所では「いかに勝負に徹するか」を問うような状況が目立ちます。
そして、「性格ワルっっ!」なキャラクタを描かせたら、この作者ほど上手な人は なかなかいません。
しかし、『のりりん』の作風では 2,048 分の 1 くらい薄めてあるから、みなさんにも安心な飲み口でした!

レース外での攻防

「逃げ」グループへの「逃げツブし」に感心しました。
相手の力を利用したりツブしたりして、じつに檜山グループらしい戦略です。自転車レースでの ありふれた駆け引きだとは思いますが、マンガ的に「悪役が使う技」みたいに見せていて面白い。


ここで、キマチに対する疑惑が沸いてきました。
まず、木町 茂の視点が妙に多い。トチギを利用して楽々と先頭集団に追いついたり、檜山 周作を呼び捨てにしたり、「キマチが真のラスボスか!?」とダマされました(勝手に想像してインネンつけるヤツ)。
レース後に振り返ってみると、自分から嫌われ役(ローテーションを引かない逃げグループ)を買って出たり、ノリたちと檜山とを繋ぐ役目を負ったり、やっぱりキマチもいいヤツでしたね。
陽子さんが言うように、「自転車競技は カケヒキのスポーツ」だから、キマチの行動は責められない。むしろ、たった 1 人で何人もの逃げをつぶした見事な作戦と褒めるべきでしょう。

生き生きする策士

しかし、戦略家としては陽子さんのほうが上でした!
ノリ・リン・トドローのチームが勝った(1 人だけ負けた)最大の要因は、陽子が用意した秘密兵器・通称「ドラフティング殺し」の おかげです。 まんまと陽子の術中にハマった芳賀は、なんだか気の毒でしたね。檜山ボスから役割を仰せつかっただけなのに、結果的にチーム全体の足を引っ張ってしまいました。
そんなハガに向けて言った陽子さんの「よっぽど ナメてるのねえ」が恐ろしい! 最近になって読んだ『狼の口』(名作!)に登場するヴォルフラムと同種の冷酷さを感じる……!

順調が不安

うまく いきすぎ てる?」にドキドキしました。
フツ~の ほのぼの自転車マンガ」の皮を被っているけれど、なにしろ 鬼頭 莫宏作品だからな……。最後まで順調なレースが描かれるとは限らない!

──で、等々力 潤が途中で感じた不安は、あとでパンクという形で現われました。一歩間違えたら転倒事故にも つながってしまう。そうならなくて幸いでした。
でも、よりによって 1 人だけタイヤの経が違う。自分が悪いわけじゃないのに苦労する所が、いかにもトドロキらしい!


トドローと言えば、バクチを打つ場面が面白かった。
リンに そそのかされて、ゴールの はるか前からダッシュを仕掛ける。そう決断するまでの「ぐる ぐる ぐる」と思考しているコマは、まるでノリの ようでした。
だんだんと影響を受けて似てきている!

自業自得

情けは人の為ならず」を思わせる展開でした。
さわやかモブ顔くんだけではなく、敵チームのキマチにまで助けられている。それも みんな、ノリの善意から出た行動のおかげです。やはり人助けは良いものですね!
──と単純には終わっていない。

そもそも、事の発端は なにか。
檜山のゴミ捨てと暴言に対してケンカを売ったのはノリです。そのせいでレースに参加した。さらに、熱中症の寸前まで衰弱した檜山を救ったのもノリです。
その結果、ノリだけは「試合に勝って勝負に負けた」ため、4 時間の全力疾走の直後に(自分で言い出した)ヒンズー・スクワットという地獄を味わいました。
また、敵チームの力まで利用して勝とうとした檜山は、これまた陽子さんの策略にハメられて自滅してしまう。
因果応報」という言葉がピッタリな試合でした!


それでも、楽しんだ人の勝ちですからね!
レースの酸いも甘いも一度に経験できて、とくにノリは自転車乗りとして(社会人としても?)成長できたでしょう。
レース直後の会話も楽しい。檜山もキマチも「いいヤツでしたー」という種明かし(?)でスッキリしました!

持続と回復

自転車のスプリントの持続時間が短くて意外です。
中・高校時代に自分は短距離走の選手で、100m が専門でした。それ以上の距離になると、途端にバテてしまう。そんな自分は もちろんのこと、400m 走の選手でも、最後の直線 100m は かなり減速します。
でも、自転車に乗っていたら 2 倍以上の速度で走れる。それなのに、大体 200~300m しか全力でダッシュできないとは予想外です。
──ん? 200km くらい走った後の話なのかな?

おわりに

ノリは、回復力だけは化け物(リン)並です。
回復力バツグンな男(意味深)なノリと、シゴキが大好きな女(意味深)のカラモモは、ものすごく相性が良さそうなカップル(候補生)ですね!

──と思いきや、新たな もめ事の予感が……。
三ツ渕 進こそがノリの嫌っていた自転車乗りで、リンのホレている相手でしょう! ゆるふわなノリ・リン・モモの三角関係に三ツ渕が加わり、泥沼な四角関係が誕生するに違いない!
いや、ごく当然のようにノリとカラモモ・リンと三ツ渕が くっつけば、すべては丸く収まるはず。ところが、面倒な やっかいごとに対して、ノリは自分からダイブしていく人間です。
中 日向も交えた互角関係が見える……。

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