諫山創 『進撃の巨人

Newspapers ただの紙に刻まれた言葉が──事実が世を動かした

驚いた表情のエレンが特徴的な表紙です。
当然のようにエレン・イェーガーの活躍する巻かと思いきや、彼の出番は終盤の数ページでした。ところが、物語の最初から追ってきた謎が、ようやく解け──かけた重要な場面が描かれます。
──いったい、エレンは何を目撃したのか……!?

姓名問題

「あなたは──生き別れた兄さんだったのね!」
「ミカサ──!」
(ひしと抱き合う兄妹)

──みたいな状況は見られませんでした(未来永劫)。
前巻でケニーが投げかけた「『リヴァイ・アッカーマン』問題」は棚上げされた ままです。

そもそも「切り裂きケニー」が勝手に言い出したことですからね。彼自身も「ケニー・アッカーマン」が本名か どうかは不明です。
ミカサの反応も、「彼女は なにかを知っている」ようにも見えるし、「どっかのキチg ──クレイジィなオッサンがアッカーマン姓を名乗りだした!?(迷惑そうな顔」とも取れる。

われわれは、「クリスタ・レンズ」だと思っていた女神様は「ヒストリア・レイス」という女王様だった──という事実を胸に刻むべきでしょう。
この次は、誰の本名が暴かれるか分からない──。

巨人か人か

ずっと「人を食う巨人」と調査兵団は戦ってきました。
最近になって急に「巨人は人間だった」(という可能性が高い)ことを彼らは知る。いままで肉を切り刻んできたモノは──。

それでも、「人形をした化け物を倒す」ことと、「人間を殺す」ことの間には、決定的に大きな違いがある。
──少なくともアルミン・アルレルトは そう強く感じました。

さんざん登場人物の死を見てきた読者には、アルミンの苦悩をすぐには理解できません。
だからこそ、夜営の場面をていねいに描いたことが印象に残ります。リヴァイがキツい言葉で慰めていて、じつに彼らしくて良かった。


ゲスミン」も健在で最高です!
すぐに自分の暗黒面へ他人を引きずり込もうとする。リヴァイが いなかったら、ジャンが あっちの世界へ持って行かれる所でした。
マルロとヒッチを拘束する場面の「声は出さない でね?」と言うアルミンなんて、完全にド悪党の顔ですよ!

戦闘系サイエンティスト

ハンジ・ゾエが格好良すぎる!
これまでのハンジ分隊長の印象と言えば、見た目どおりにナード(オタク)な科学者タイプで、拘束された巨人にしか暴力を振るえないだろう──という感じです。

ところが、まず、物音一つ立てずに室内に潜入している。ナイフの一本でもあれば、2 人とも暗殺できました。
さらには、「ワイルドすぎます!!」な右フックですよ! 向けられたショットガンをギリギリかわしつつ、拳は正確に相手のアゴを狙っている。これは、対人戦も そうとう慣れているに違いない!
普段からリヴァイとタメ口で話しているハンジは、立場だけ ではなく戦闘能力も近いのかも?

痛みをともなう代償

一方、ジャンは猿芝居の罰(?)で殴られていた。
下手をすれば本当にナイフで刺されたり殴り殺されていたわけで、ジャンも無鉄砲な本物の バカに近づきつつ ある。


ヒッチ・ドリスの気持ちも分かります。
いままで身を案じていた同性の「仲間」であるアニ・レオンハートの正体を知ったばかりな上に、突然の自分と仲間の死が見えてきた。
さらに、どうやらマルロ・フロイデンベルクは本当にヒッチに気が無いようで、そのこともツンデレくせ毛さんの心に残っていたに違いない。
だから、「この馬面がぁあああ」と逆上しても仕方が ありません! ──そんな状況で とっさに出てくる叫び声だから、よっぽど しっくりきたんだろうなぁ……。自分をフったマルロと似た顔の長さだし、カリアゲだし。

一堂に会する役者

ピクシス司令ザックレー総統が渋かった!
こちらも一歩間違えば即座に命を失っている(あるいは自分から処刑される)状況にも かかわらず、優雅に午後の紅茶を楽しむような余裕です。実際、ザックレーは それくらいウキウキした気分だったでしょう。
まるで、往年の名俳優が共演したような場面です。絶対の安心感と、同時に畏怖をも感じさせる。


役者で言えば、フレーゲルは二流か新人でしょう。
しかし、この巻で一番 死に近かった人物でもある。相手が質問に答えもせずに銃を撃った可能性のほうが高かった。
そんな追い詰められた状況で、あれだけのタンカを切ったり演じられたことを評価します。きっと、父親のリーブス会長と同じくらいに尊敬されるリーダに なるでしょう。


一番の大根役者は、もちろんフリッツ王ですね!
起きろ 老いぼれ!!」の場面が描きたくて、作者は いままでの状況を作り出したに違いない! 作者の真骨頂は、この「ナンセンスな笑い」だと確信しています。
改めて見ると、「王様」の格好は、日曜日に散歩しているオシャレでカジュアルな おじいちゃん丸出しですよ! 王政側の油断が、王の衣装に すべて現われている。

人類か自分か

ナイル・ドーク師団長の保身も役に立ちました。
自分自身だけでは なく、家族を守る必要がある。いけ好かない男ですが、「世界を救った」人間の 1 人です。
人よりも 人類が尊い」という使命を負っているエルヴィン・スミスで さえも同じでした。けっきょくは自分の夢のために多くの部下を死なせつつ、王制を倒しています。
ザックレーも、自身が言っていたように、人類の命運 よりも個人を優先させました。しかし、彼が いなければ革命も成功しなかったでしょう。

自分勝手な行動が、結果的には人類を救った
いや、救われたか どうかは、今後の行動次第か──。

過去の罪

エレンが見(せられ)た映像は何だったのか?
彼の父親であるグリシャ・イェーガーが最期に見た光景で間違いないはずです。ずっと探していた父は、「エレンの すぐ近く」に いたのか──。

自分なりに映像を解釈してみます。

  1. グリシャがレイス家・礼拝堂の地下へ潜入
  2. グリシャ、レイス家を襲撃
  3. ロッドの妻(?)が巨人化して対抗
    • (彼女が「巨人を操る能力」を持つ者か?)
  4. グリシャも巨人化して対抗、勝利
    • (目的はレイス家から能力を奪うため?)
  5. 幼いイェーガーに注射をするグリシャ
    • (巨人化用の注射?)
  6. 巨人となったイェーガーがグリシャを食らう
    • (グリシャからイェーガーへと能力が渡る)
    • (この結果はグリシャには予想外?)

能力を入手する方法

さて、エレンは今後どうなるのか?
ハンジは、別の巨人に「エレンが 食われる」と予想しています。しかし、それは今すぐ起こる危機では ないでしょう。

現在、ロッドは巨人を確保していないと思われます。
なぜなら、エレンよりも懐柔しやすい巨人(化できる人間)が いたら、とっくにエレン(の能力)を食わせているはずです。わざわざ地下室へ連れて行かないはず(※)。
つまり、エレンを監禁・拘束して洗脳・調教するために、ヒストリアが文字どおりに一肌脱ぐ というトリした作戦でしょう! なぜエレンとヒストリアが逆の立場じゃ ないのか!

ということで次の巻は、ジェラシィの炎に身を焦がすミカサとジャンが、ロッドを襲撃してエレンを救出する展開でしょう!

(※: あの映像をエレンに見せた理由は、一家を惨殺されたロッドの報復かも しれない。次回あたりで、エレンを食うための巨人が あっさりと登場したりして)

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