ジョジョリオン』 volume 9 「長男・東方常敏」

Allotopus rosenbergi 切り裂くために生まれてきた── 20 分間の命

カバーの折り返しが毎回おもしろい!
まず、あいかわらず若々しい荒木 飛呂彦先生の顔写真に驚きます。現在 54 歳とは思えないツルツルした肌は、半分くらいの年齢に見える。まさに波紋使いそのものですね!

荒木先生が語る「最後の晩餐(ばんさん)」が興味深かった。やはり先生も人の子でしたね。
(お母さんがトニオ・トラサルディーと同じスタンド使いなんだな、とも思った)

#035 毎日が夏休み その 2

クワガタ・バトルが とつぜんに始まった!
──と装っていただけで、定助つるぎから事前に情報を得ています。その場その場で瞬間的な判断をして切り抜ける──というスタンド戦を見続けていたため、今回のダマし合いは新鮮でした。
もちろん、予定とは違う展開が次々に起こります。勝ち抜くためには「思考の瞬発力」が必要で、頭脳戦が中心な『ジョジョ』らしさが味わえる(力づくで押し切ることも「たまに よくある」けれど)。


筆先に 雌のフェロモンでも 仕込んだか?
──この回で一番 気になったセリフです。常敏は、現時点では定助のことを「クワガタはドシロウト」と見ていたはず。それ以前に、定助には筆に細工をするような時間は無かった。つまり、事前に忍び込んだことを見抜いている。

好意的に解釈すると、「勝つためには雌フェロモンを使うのが定石だが、おまえは知らなかった(ざまぁ」という常敏のイヤミでしょう。
あとでも書くけれど、この「偶然にも核心を突くセリフ」を言ってしまう所だけ、常敏と常秀は似ている。


グロ注意ッ!」が本当に痛々しかった!
手足が吹っ飛ぶことなど日常で、とくにモブは容赦なく使い捨てていく。──それが 荒木 飛呂彦先生の作風です。
ツノ──もといアゴが折れたことは もちろん、首にも重大な障害が残りそう。剣闘士(グラディエーター)として生まれたクワガタは、大事に育てられても、たった一・二回だけしか戦えないのだろうか。

#036 毎日が夏休み その 3

康穂のスタンドは、無意識のうちに発現しています。
いつも襲われている印象の広瀬 康穂だけに、なにやらセクシャルな場面に見えてしまう。その一方で、「ひとりぼっち過ぎる から日常で ヘンな幻覚ばかり 見ている」と自己分析する康穂は切ない──。


常敏と常秀は、まったく似ていません。
それに、常敏は、常秀のことを「どこかの 橋の下から 拾われてきた 子供か?」と言う。いくら つまんない弟とは言え、そして腹が立っていたに しても、肉親に向けて言う言葉ではありません。
とても本当の兄弟とは思えない。父親の憲助に見え隠れする「明るそうな外面──に潜む闇」は、常敏に受け継がれています。一方、常秀には闇や影より弱さしか感じません。

むしろ、常秀は定助と気が合っています。同年代だから、という以上に「似た何か」を感じる。
彼らの父親である憲助は、利用するために定助を養子として迎えました。常秀も、いずれはスタンド能力を持つことを見抜いて養子にしたのかも。


定助が賭けの対象に選んだモノが意外でした。
つるぎのために「果実」を追っていたはずなのに、なぜランボルギーニガヤルドが必要なのか? 注意深く読んでいれば すぐ分かる答えが、ニブい自分には解けなかった。
そして、けっこう切羽詰まった つるぎが、「静かでもガヤルドだ!!」とダジャレをぶっ込んでくることも読めません!


ローゼンベルグの小ささがアヤシイ!
巨大なパラワン オオヒラタに 1 敗したあとで出してきたクワガタだけに、ローゼンベルグ オウゴンオニ クワガタにも仕掛けが あって当然──と読者は予想する。定助も警戒したに違いない。
しかし、「仮死状態」を故意に誘発する攻撃までは読めなかった。これにもトリックがある、と見て当然ですが──。

#037 毎日が夏休み その 4

常敏は、スタンドでクワガタを操作している。
──それは明らかですが、読者と定助の目に見える部分は、不気味な液体だけです。これがパラワンのほうの「出血」(とは言わないと思うが)なら納得がいくけれど、液体が漏れているのはローゼンベルグです。
つまりは、「液体状のスタンド」なのか!

──と完全に騙されました。
常敏は、クワガタたちに愛情を注いで かわいがっているけれど、あくまでも「剣闘士」として育てている。「強いクワガタに仕上げること」以外は無関心です。
上で書いたように、一回でも戦ったクワガタは再起不能の可能性が高いため、「ワックス」の使用も当然でしょう。


土俵では残酷な戦いが続いています。
それと同時進行で、常敏が操るスタンド能力を定助は探っている。限られた情報から相手の能力を暴いていく過程は、繰り返し『ジョジョ』で見てきた楽しみですね!
ただ、この土壇場になってから、急に常敏が使うスタンドが見えた理由は何だろう? 今までは隠れていたのか?
HUNTER×HUNTER』に出てくる念能力の応用技「」みたいに、スタンドを見えなくする能力──なのかとも思いましたが、たぶん「演出」でしょうね。荒木作品には よくあることです。

スタンド戦に読者が気を取られているうちに、「スズメバチのトリック」で勝利した定助が見事でした!
ガヤルドのカギだけ外へ出せば良い、という割り切りの良さも素晴らしい! そのせいで、窮地に立たされるけれど。

#038 東方常敏はスタンド使い

またもや襲われる康穂です!
触っちゃ いけないトコ」とは、いったいどの部位なのか くわしく教えて欲しい! マセガキな つるぎは(物理的な意味で)ペロ ペロしまくっているし、康穂は康穂で喜んでいるようにも見えますね(?)。

現在、アニメ版では第 3 部が放送されています。
「家族の命を救う」というシリアスなテーマのなかで、ギャグを入れて笑わせてくれる。でも、お色気と言えば、ちょうど今やっている「足がグンバツの女」ことマライアくらいなんですよね。
男装した男の娘なショタ少年×お姉さん」という最先端ジャンルを荒木先生が描くなんて、20 世紀には想像も付かなかった……!


常敏のスタンドは「熱を持たせる能力」のようです。
──歴代のスタンド使いたちは、切り裂きや打撃といった攻撃は耐えてしまう。手足の切断すら平気な顔をして、すぐに次の行動を考える。そうしないと やられるからです。

ところが、主人公たちは温度の変化には弱い
第 6 部『ストーンオーシャン』の空条 徐倫は、リキエルの操る未確認生物ロッズ(スカイフィッシュ)に熱を奪われて苦しめられました。
また、何と言ってもアラビア・ファッツが使うスタンド「サン」は第 3 部で最強の技です! 主人公たちを全滅させるだけの攻撃力を誇り、ディオにすら勝てる(はず)。ただし、本人が間抜けという致命的な弱点がある。

常敏のスタンドも、使い方しだいで強力です。
いまは「定助を痛めつける」ことが目的だから、鼻血程度で済んでいる(それでも出血多量の失血死が あり得るから恐いけれど)。常敏が本気で相手を倒そうと思ったら、脳の血管を熱すれば良い
──現段階では「物理的な接触」が必要そうですけどね。ただ、「目玉を舐める」という賭けの報酬も、いま考えると失明を狙っていそうで恐ろしいな……。

あと気になるのは、「奪う」能力ではない点です。
定助の「ソフト & ウェット」を初めとして、本作品のスタンドには「何かを奪う」という共通点が──過去には ありました。最近では だんだんと崩れてきている。
コンピュータの CPU を冷やすペルティエ素子は、強力に熱を奪います。しかし、同時に高熱を放出してしまう。同じように、常敏も熱を奪った副作用で発熱させている──というのは苦しいかな。


常秀の勘の良さには驚きます。
フェロモン入りシャボンを土俵に埋め込んだことも、ドライブレコーダーが定助の狙いということも、常秀は一発で見抜きました。ただし、カンだけは ずば抜けているけれど、残念ながら そこから推理していく頭脳が常秀には欠けている。
判断力と思考力に優れた定助と組むことで、常秀は最大限の働きをするでしょう。そんな見せ場が出てくるかどうか、今はアヤシいけれど。

おわりに

勝利宣言と勝ちポーズが定助の定番に なっています。
しかも今回は、最初は敬語だったのに、最後は乱暴な言葉遣いで言い切っている。どんどん厚かましくなってく慇懃無礼タイプは、第 4 部の東方 仗助と共通していますね。


誰もが思うこと: 「焼肉弁当」を選んでいたら、どうなっていたんだろう……。

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