諫山創 『進撃の巨人

London broil
人を楽しませ──時には狂わせる

前巻に引き続き、表紙でエレンが平和ボケしています!
本編でもエレン・イェーガーはボケボケしているのかと思いきや、彼にしかできない仕事をキッチリと こなしていました。

調査兵団が初めて民衆に感激された記念すべき巻です!
普段は民衆から叩かれている兵団は、まるで現実世界の自衛隊員や政治家のように見える。いまは都合の良い時だけ国民から祝福されていますが、もしも平和が訪れたら その感謝も忘れ去られるのだろうか。
そう思うと、調査兵団がノンビリしている世界こそ望まれます。もちろん、巨人の脅威が無くなってしまうと連載も終わってしまうけれど。

親子を眺める目

キース・シャーディス教官が語る過去に驚きました!
訓練生のエレンを調査兵団へ入れないようにシャーディスは細工をしています。その理由は、エレンの母親であるカルラを侮辱した償いだったのか。それとも、カルラに選ばれなかったことへの仕返しだったのかも。
誇り高い親子の姿を見て、シャーディスは傍観者であることを受け入れました。元・団長だったシャーディスが、いまでは自分のことを無毛な頭無能な頭」と呼ぶ──。

特別な存在」「選ばれし者
──グリシャが本心から言った言葉は、本来であれば調査兵団への祝福や賛辞に当たる。ところが、シャーディスには「呪い」として つきまとう。
上の者を凡人と呼んでいたシャーディスは、やがて自分自身のことだと気がつく。それまでに数え切れないほどの人命が失われてしまった。
そんな教官を見て、ハンジ・ゾエが怒る気持ちも分かります。ところが、多分に私的な理由が大きすぎるから、ただたんに「ドS」にしか見えません!

伝わる愛

カルラは、シャーディスの言葉を正面から受け止める。
気高くて優しい母親の想いは、しっかりとエレンに受け継がれています。
人が人と違うこと、自分にできること──。カルラ・イェーガーの言葉をハッキリとは覚えていなくても、エレンには その意思(遺志)が伝わっていく。

その向こうへ

エレンとアルミンとの思い出話が なごみます。
アルミン・アルレルトの自由を夢見る目にエレンは救われている。壁の外の世界はシャーディスも夢見ていました。ほとんどの人は、巨人だらけの危険な大地にしか目が行かない。そのはるか彼方に人類の希望があるのでは──。

後ろで静かに話を聞いていたミカサが印象的でした。
エレンに夢を与えた人物が、ミカサ自身じゃなくてアルミンだったことが悔しいのかも。女の嫉妬は──恐ろしいぞ……。
また、こっそりとリヴァイも聞いていました。リヴァイ兵士長には「戻って欲しい過去」は あるのだろうか?

彼の本質は?

グリシャ・イェーガーは、ずっと壁の外に居たらしい。
つまりは、ユミルたちと同じく「壁の外から来た人間」でしょう。
巨人の力を持つ彼らは、はたして「人間」なのだろうか? 巨人と人間との関係は まだ不透明で、「巨人 = 人間」と等号で結んで良いのか分かりません。「巨人に なれる人間」が巨人なのか?

グリシャは、壁の中にいる人間に好意的でした。
しかし、その理由は記憶に何らかの障害があったからかも しれません。本来のグリシャがどういった思想を持っていたのか、いまでは確認の仕様が無い。


トータル・リコール』が思い浮かびました。
自分はアーノルド・シュワルツェネッガーが主演の映画版しか見ていませんが、あの作品は性善説の物語でした。
シュワちゃんが演じるダグラス・クエイドは、もともとハウザーという悪者です。ところが、以前の記憶を封印したあとのクエイドは、やがて火星を救う救世主となる。
寺沢 武一氏の『コブラ』も同じような設定です。ネタバレのついでに言うと、荒木 飛呂彦氏の『ジョジョリオン』も性善説で成り立っているような展開です。
みんなリセットすれば「良い子」になる!

性悪説に基づいた創作も あるのでしょうかね?
「記憶をなくす前はバカ正直な善人だったのに、事故で記憶喪失になってからはシリアルキラーサイコパスになる」。そういった話が読みたい!

希望と疑問

すべてのカギは地下室に眠る!
エルヴィン・スミスが期待するように、地下室にあるのは「世界の記憶」なのでしょうか。
エルヴィンは、この世の真実が明らかになる瞬間をどうしても自身の目で見る気です。売り言葉に買い言葉ではなく、心の底から人類の勝利よりも優先している。
その執念にも疑問が残ります。

それ以前に、最大の問題が残っている。
ウォール・マリアさえ奪還すれば、本当に人類は生き延びられるのか? 生き残った人々は幸せに暮らしていけるのかも不明です。
しかし、それでも今は希望に すがるしかない。絶望に押しつぶされたら生きていけません。

肉で結ばれた友情

久しぶりにサシャ・ブラウスのギャグが爆発しました!
嫁入り前の娘さんが、肉汁をしたたらせ我を忘れてしゃぶりついている……だと……!? それなのに色気はゼロどころかマイナスですよ! もはや奇行種と化している。
サシャのことを「芋女」改め「肉女」と呼ぼうかと思ったけれど、当ブログの品格に関わるので やめておきます(←?)。
ちなみにサシャは、さりげな~くミカサの おっぱ──もとい腹筋を殴っている。しかし、当のミカサ・アッカーマンにはダメージがありません。たぶん、胸を殴っていても「ドコ!」という分厚いタイアのような音しか鳴らないと思う。


コニーが語る過去の話も良かった。
上官から肉を盗んできた話」が良い話に昇華(消化?)されている。たしかに、コニー・スプリンガーたちから すれば、明日以降に ごちそうが食べられる保証は ありません。
同じ肉を食った仲ということで、彼らを「肉兄弟」と呼びましょう!(品格が息してない)

騒ぎの代償

ジャンとエレンのケンカも面白かった!
お互いに引っ込みが付かなくなる様子は、まるで高校生──いや小中学生の殴り合いです。お互いに殴りながらも誰かが止めることを待っている。コント丸出しですね!

そして よりによって「人類 最強の男」に止められる!
どんなケガをしてもケロッと治るエレンは ともかく、ジャンは明日以降が悲惨です。──と思ったら、普通に作戦に参加していてビックリし待った。もしかして、ジャン・キルシュタインにも巨人の力が──!?

人並み外れた頭脳

アルミンの発想には度肝を抜かれました!
アルミンはカベを探る理由を「」だと答えています。そうだとすると、無意識のうちに最短で答えを導き出したことになる。将棋の名人・羽生 善治の著作『決断力』を思い出しました。
そして この結論はアルミンだからこそ はじき出せたのです。

この推理が どれだけスゴいか説明しましょう。
ウォール・マリアに来た目的の 1 つが「壁の穴を塞ぐこと」でした。なぜなら、カベを塞げば巨人が入ってこられないからです。単純な話ですが、つまりは「カベ = 安全」と意識的・無意識的に全員が認識している。
そんな状況で、「壁の中に敵がいる」とは考えられませんよ! ゲスミンアルミンの異常性が よく分かる一場面でした。

秘密の正体

エルヴィンが言う「隠し事」とは何だろう?
意味ありげにエルヴィンの左腕がアップで描かれています。何かを通して固定するような「輪」が付いている。これは新兵器を使うための腕輪なのか?
この作品には「ああ、そんなのあったね」(※)は見当たりません。謎として提示された以上、いつかは答えが明かされるでしょう。しかし それまでは、エルヴィンの「死亡フラグ」にも思えてしまう……。

最善手を超える力

特に理由の無い暴力がライナーを襲う──!!
──ではなく、リヴァイの攻撃がライナーに直撃しました。ライナーの首元と心臓あたりを一瞬で正確に破壊している。あいかわらず兵長には ためらいが無い!

ところが、ライナーは生きていた!
やはり、「予想外の」に匹敵するような強襲が必要です。ライナーの近くにサシャさえいれば──!(?)

ヒト対ケモノ

次の巻では いよいよ「獣の巨人」との対決でしょう!
読者にだけは「鎧の巨人」に勝つ戦闘能力の高さが分かっています。その強さは立体機動装置で太刀打ちできるのか?
バツグンのコントロールを誇る投石も やっかいです。遠距離からチクチクと攻撃されたら手も足も出ません。また、石の使い方(退路を断つ)からして、戦略的な思考にも慣れている。
勝ち目の有無どころか「戦い」に なるのか!?

おわりに

今回の嘘予告も笑いました!
2 頭身キャラクターともだち)」とアルミンとの心暖まる話──なのかなぁ……。
どう見ても『ドラえもん』丸出しな巨人は、友情も肉体も押しつけてきます。いろんな意味でアルミン(の貞操)が危ない!?
君のせいで……俺は… 俺は普通だったのに…」とか言っていたモブおじさんと微妙に似ているところも絶妙にイヤですね!


シゴトオ クダサイママ〕」が泣ける……。
第 73 話「はじまりの街」の 1 ページ目を上下逆さまにして見てみましょう。
そう、財産や領土を失っても まだ人類には文明が──そして階級が残っている。人間らしく生きるためには文化が必要だけれど、「働かざる者 食うべからず」も ついて回るのか……。

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