『四季 秋』 森博嗣・著

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『四季 秋』

真賀田四季の少女期を描いた『春』『夏』。その後に訪れた季節『秋』では、なんと、「S&M シリーズ」や「V シリーズ」よりも後の時代が語られていました。両シリーズのファンが知りたがっていた、「あの後」……。

そして、二つのシリーズ作品のキャラ同士が、意外な競演を見せているのが楽しい作品です。

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四季 秋
森 博嗣
講談社 2006-12-15
楽天ブックス: 四季 秋
ビーケーワン: 四季 秋ad

四季 冬 四季 夏 四季 春 ダウン・ツ・ヘヴン 虚空の逆マトリクス(INVERSE OF VOID MATRIX)

by G-Tools , 2007/06/19

過去作品のどんでん返し

本作は驚きの場面の連続ですが、特に凄いトリックが出てきます。なんと、過去の作品に対して、どんでん返しが起こるのです。──な、何を言ってるのかわからねーと思うが、かなり驚きました。

それでいて、『秋』を読んでからその過去作品を読んでも、メイン・トリックまではギリギリわからないように書いてあるのはさすが。

四季が、過去の事件について語るのも意外。それによって救われた人物がいます。はたして、その意図はどのような物だったのか……。

許すということ

人を、そして自分を許すということについて、こんな会話が出てきます。

「それは、人を許すということですか?」

「いいえ、自分を許すと言うこと」

「自分を?」

「そうよ(……)人は、自分が許せないときに、悲しくて泣く、そして、自分が許せたときに、嬉しくて泣くの」

『四季 秋』 p.280

興味深い内容ですが、この前後の話も面白い。そして、これは誰と誰の会話か……。「S&M シリーズ」と「V シリーズ」を繋ぐ演出に、頬がゆるみっぱなしでした。