『ディナーラッシュ』
いきつけのレンタル店(ややむなしい響き)で、「スタイリッシュ・サスペンス」という、耳障りのいいうたい文句に誘われて見ました。
あらすじ
基本は、レストラン経営をめぐる、父子間の世代交代の話。ニューヨークで一番いそがしいレストランの一夜を描いています。
現在は父親がオーナー、息子がシェフを勤めています。父親は、亡き妻と共同経営していた頃の料理、いわゆる「昔ながらのレストランの味」にこだわります。
一方、息子は「新進気鋭の若手シェフ」らしい、斬新な料理を編み出す腕前と、(料理批評家の女性にベッドの上で良い批評を頼む)営業熱心さを持ち合わせた、スターシェフ。
そんな父子なので、当然のように意見が合わず、衝突ばかり。それでも、親と子の絆を確かめ合うような場面がいくつかあり、
──という「人間ドラマ」がメインの映画かと思いきや……ラストにビックリ!
監督は、ミュージック・ビデオや CM で有名なボブ・ジラルディだけあって、スタイリッシュな映像と音楽も素晴らしい。
映像と音楽
映像と音楽、その雰囲気が抜群です。
監督は、ミュージック・ビデオや CM で有名な人らしいですね。
監督は、マイケル・ジャクソンの《ビート・イット》のミュージック・ビデオで知られ、ライオネル・リッチーを起用したペプシのCMで数々の賞に輝いた才人、ボブ・ジラルディ。
実在するレストラン
『ディーナーラッシュ』の舞台、レストラン「ジジーノ」は実在のレストランです。しかも、本作品の監督がオーナ! だから、これほどリアルな演出ができたのか、と納得できました。
Mobile:Mobile&Movie 第36回:ディナーラッシュ「アーモンドチョコケーキをお願い」
厭なヤツ
これがもう──出てくる人物が、見事にイヤな奴ばかり!
とくに、途中で出てくる料理批評家の女性が出す、イヤな奴オーラがすごい。おそらく、二ツ星ハンタくらいの実力者かと思われます(?)。よくこんな女性と──。
さらに、このレストランの副シェフが実に厭な男です。
名前はダンカンで、重度の賭博中毒です。就業中にも賭けのラジオ放送ばかり聞き、職場からすぐ離れる。
なぜ、誰も文句を言わないのか、本当に疑問です。
主役の父子から、料理の腕がいいという評価を受けていますが、それもちょっと疑問。
まず、厨房で喫煙しているのが絶望的。外で xxx をしてから調理場に戻ってきた後、手を洗わず調理を始めます。
──それは、ちょっと……。
他があれだけリアルな描写だから、このダンカンという男もリアルなシェフ像なのか? という疑問が当然起こると思います。
実を言うと、自分も一瞬だけレストランの厨房で働いていたことがありました。実際、ダンカンのようなシェフがいましたね。厨房でタバコを吸ってお酒を飲んで──。でも、ちゃんと仕事、調理はこなしている。やっぱり、それが厨房では一番のようです。
ラストが衝撃
とにかく、意外なラストでおどろきました。これは読めない!
サスペンスやミステリィは、まず謎が観客に提示され、段々と解かれていく(または絡まっていく)。その過程や意外などんでん返しを楽しむのが通常です。
本作品は、「どこにサスペンス要素があるのか?」というが謎になっています。これは珍しい。
いいサスペンス映画やミステリィ小説、あと『SAW』を見た後の「やられた!(ニヤリ)」感が味わえました。まさか、そんな角度からやってくるとは思わず油断していたら、背後からザックリ、という感じ。
映画が終わった後で、いくつかの場面を思い浮かべると──なるほどー、と。
サスペンスやミステリィを見飽きた方に、お勧めしたいですね。