『オールド・ボーイ(Old Boy)』
15 年間 監禁された男、オ・デス(チェ・ミンシク)が主人公、という凄まじい映画です。
もう、何も言うことがない、満点の作品です。──この映画を評価する人の中でも、満点を付ける人は あまりいないと思いますが、自分の好みに ばっちりハマりました。カンヌで受賞したのも当然ですね。
2004年の第57回カンヌ国際映画祭に出品され審査員特別グランプリを受賞。審査委員長のクエンティン・タランティーノから「できればパルム・ドール(カンヌ国際映画祭の最高賞)を授与したかった」と激賞される。
この映画には、暴力・アクション、エロス、ミステリィ的な謎解き要素──至れり尽くせりのエンタテインメントが詰まっています。
喜怒哀楽のすべてがあり、そして愛があります。悲劇的な恋愛、家族愛、そして、憎悪に見える愛も描いています。
際どい場面が多いので、基本的には一人か カップルで見るのが、ちょうどいいと思います。「気軽に見られる映画」ではないので、そのつもりで──。
劇場公開時は R-15 指定が付く くらい、内容的にも映像面でも、お子様には見せられないですね。しかし、家族そろって この映画を見て、「──すごかったねー!」と話し合えるのが、真の「家族愛」という気がします。
「なぜ、15 年もの間、監禁されたのか?」 その謎が解かれたとき、本当にビックリしました。
なるべく、前知識無しで ご覧ください。

- オールド・ボーイ プレミアム・エディション
- チェ・ミンシク ユ・ジテ カン・ヘジョン
- ショウゲート 2005-04-02
- 楽天ブックス: オールド・ボーイ
by G-Tools , 2007/12/10
完璧ではない
面白いのが、(自分が勝手に)満点を付けた作品の割りに、「完璧な映画」ではないところ。ところどころ、「──ん?」という謎なシーンがあります。
たとえば、冒頭のオ・デスが捕まっているシーン。これ、どう見ても「長っっ!」ですよね(笑) それに、あまりにも みっともない中年男っぷりで、不快になる人もいるのでは?
あとは、何と言ってもラスト付近の主人公の言動。鬼気迫る演技ですが、ちょっと、やり過ぎ。ちょっと苦笑するかもしれません。
しかし──、冒頭のシーンは、主人公の「どうしようもない」感じが良く出ているし、その後、突然 誘拐・監禁された場面と、見事なコントラストになっています。
そして、正気の沙汰とは思えない言動。──これ、絶対的に安心できる「観客」と言う立場で見れば笑えるかもしれませんが、少しでも、あの時のオ・デスの気持ちとシンクロすれば、あの行動も納得できるはず。
それに、その行動を見ていた「ある人物」の心境も、想像すると──怖ろしくなってきます。
その他の、ちょっと謎なシーンも、どこをとっても味がある、じつにこの映画らしい雰囲気なのです。決して、ミスで起こったのではなく、計算したのでは? と思えるくらい。
──正直、思いっきり「色眼鏡」で見ている感じがしますが、しかし、個人の感想で色眼鏡をかけずに語ることができるでしょうか?
音楽について
劇中に流れる、音楽も素晴らしい。
とくに、「あのシーン」で流れる、ヴィヴァルディの『四季』・『冬 第一楽章(アレグロ・ノン・モルト)』が良いですね(beatmania の『V』の元ネタと言えば わかりやすい?)。
映画で使われたクラシック音楽で良かったのは、 『セブン』と『劇場版エヴァンゲリオン』で使われた バッハの『アリア』、そして何と言っても『時計じかけのオレンジ』の第九。それ以来、久しぶりに音楽で感動しましたね。
原作は日本
原作は、日本のマンガで、コミックが 8 巻で完結しています。未読ですが、読んでみたくなりました。
それで、やっぱり「日本 大好き」な自分としては、この映画がお隣の国で作られた、というのが ちょっとだけ、悔しいですね。
しかし、考えてみると──、この映画、いまの日本映画界で、作れる?
主人公は真田 広さんか役所 広司さん、が演じるとして(完全にルックスだけで決めた)──。
たいへん重要な男、イ・ウジン(ユ・ジテ)は及川 光博さんかな? あの狂気と完璧主義者っぷりは、この人でしょう。
しかし──ヒロインは? ミド(カン・ヘジョン)を演じられる女優って、日本にいるのかな……。「不思議ちゃん」の人材には困らないですが、あんな痛々しいベッド・シーンを体当たりで演じつつも、初々しい表情ができる人が?
それに、監督は どうだろう。北野 武監督や、井筒 和幸監督だと、なんか違う方向になりそうだしなぁ……(ぶつぶつ)。
そう思うと、ちょっと、悲しい……。