『バクマン。』 4 ページ 「親と子」 (週刊少年ジャンプ 2008 年 41 号)
『バクマン』のすごさは、ありきたりなことでも魅力的に描ける作者の力そのものだ。もっと簡単に言うと、ベタな展開なのに驚かせたり面白がらせる、というのがすごい。今回の話を読んで、そう強く実感した。
かなりデフォルメされた人間像──なのにリアリティを感じる絵を描く、小畑健さんの画力に救われているところも大きい。ほかの人の作画なら、もっと地味な印象になっただろう。彼に出会わなければ、原作者の大場つぐみさんは今ごろ──と余計なことを考えてしまう。
3 行でまとめる
今回の見どころを教えて欲しい、という「今北産業」な人に解説すると──。
- DNADNA こえーな DNA は
- ジェバンニな気分
- 漢の浪マン(おとこのろまん)
──まぁ、本当のところはジャンプ誌上で読んでいただくとして……。
今回もまた、今後の展開を予感させる場面で終わる。『バクマン。』の──というより、ジャンプのような少年マンガのパターンだ。それなのに、毎回続きが気になってしまう。──よく考えると、主人公は「天才 2 人」とはいえ普通の中学生だし、それほど「超展開」があるわけでもない。目を引くラストで終わった次の週、ふたを開けてみると順当な続きだったりする──。
それでも、これほど読ませるマンガはほかにない。
とはいえ、地味なテーマの作品には違いないので、「こんなマンガを好きな自分は異常かしら?」と思っている読者がいるかもしれない。少なくともここに 1 人、賛同者がいるので胸をなで下ろして欲しい(女性だったら、なで下ろすのを代わっても良い)。
漢の浪マン
今回の一番の見どころは、「漢の浪マン」の話だ。二重の意味で興味深い。
マンガ内のヒーローを通して、好きだった(そして結ばれなかった)女性への想いをつづっていた、川口たろう。そのメッセージは届いていた、というのが救いか……。それに、言ってしまえば「自分の失敗談」ですらマンガのネタとしてしまう、プロ根性もすごい。何気なく読み捨てているマンガの中にも、そのようなエピソードが隠されているのかもしれない。
なにより、そのヒーローの名前でピンと来た。
超ヒーロー伝説
(……)漢の浪マン(おとこのろまん)という実力の低いダメヒーローが出てくる話があるが、『ラッキーマン』にも男のロ・マンという同名ヒーローが存在する。本人の実力が低い点も共通している。
これは──原作者・大場つぐみさんの「自白」と考えて良いのでは。少なくとも「川口たろう = ガモウひろし」(がモデルになっている)と見て間違いない。あとは「イコール」をもう一つ確定させるだけだ……。
その一方、ここまでやっておいて「まったくの無名な新人だった」としたら、それはそれで笑える(その場合はガモウさんもグルじゃないとおかしいか)。
まとめ
今回の話: 「サイコー・真城最高(ましろ もりたか)とシュウジン・高木秋人(たかぎ あきと)は、おじさんの文通相手・春野美雪(はるの みゆき)に会いに行きました。42 で縦ロールは自重して欲しいと思ったけど、かわいかったから許す。ビール(笑)。あと、亜豆美保(あずき みほ)はヒロインなのに後ろ姿だけでした」
──と、今ごろあらすじを書き出すのを不思議に思われただろう。「SEO? 検索エンジン向けキーワード? なんのことです?」と、とぼけておこう。
繰り返し書くけれど、『バクマン。』は本当に話の筋だけ聞くと面白く感じない。なのに何度も読んでしまう。「名作」と言われる作品の中にも、そういった例は多い。『バクマン。』が名作に入るかどうかは、これからの展開による。期待して読み続けよう。