バクマン。 #22-1 「邪魔と若さ」 心配する見吉と優しいシュージン

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『バクマン。』 22 ページ 「邪魔と若さ」 (週刊少年ジャンプ 2009 年 09 号)

Night Park (by mrhayata) (by mrhayata)

最近、ジャンプが面白い。そう思わないだろうか?

ファンとしては、『バクマン。』の面白さに作家も編集者も影響された、と考えてしまう。島本和彦先生が「なにやってんスか www」(賛辞)な格好をされたのも、本作品に『あしたのジョー』が出てきたからでは──というのは こじつけ過ぎか。

島本の感想文 | ガイナックス忘年会(コスプレ)

マンガの面白さに限界はない──そうサイコーは言った。その通りである。今週号の『バクマン。』を読むとよく分かる。本当に、原作者の底が知れない。

先週号の続きから、今回の展開・とくに後半を思いついた人は いるだろうか?

たとえば、今週号の前半部分だけを読んで「後半のネームを考えろ」と言われたとする。本編と同じかそれ以上に面白い展開を思いつける人は、プロの世界でも少ないだろう。それでいて、読み終わると自然な流れ・少年マンガらしい話に思える。それがスゴい。

今週号のジャンプで『バクマン。』は表紙を飾った。そのカラーイラストと本編との内容が対照的だった。

わるいな

いつもは詰め込みすぎなくらいセリフが多く、絵も密度が濃い。おかげで、感想を書き終わるまでに一週間が終わってしまう。それは自分が筆無精なのが原因だが……。

そんな中、極端にセリフが少ない公園の場面は目立つ。登場人物たちの表情も、背景も寂しげだ。そう、寂しい別れを思わせる──。

恋は理由なく始まりは訪れ 終わりはいつだって理由をもつ、と浜崎あゆみは歌う(「M」)。恋だけではなく、人と人との出会い・別れのすべてに共通するだろう。

偶然に同じクラス・近い席になり、たまたま忘れ物をしたのがきっかけで 2 人はコンビを組んだ。非常に危うい関係が壊れるには、十分な理由(仕事・恋愛)ができた。このまま 2 人は 離れるのか──。

前回からの流れで、「シュージンはヤケになって恋愛に逃げた」「サイコーはそんなシュージンに嫌気が差してアシスタントを引き受けた」と読んだ人もいるだろう。

しかし、サイコーもシュージンも、お互いの信用と信頼は変わっていない。──そう信じたい。

サイコーは、自分が前を見て先へ進むことによって、シュージンの帰る場所を作ろうとしている──そう思うのだ。仕事場にこもってマンガの練習に明け暮れるよりも、新しい環境で多くの物を得てくる。そうすれば、シュージンが書き上げるはずの素晴らしいネームが生きる、とサイコーは考えたに違いない。

一方、シュージンは闇雲にネームを描き続けるよりも、普段とは違うことをして作品に生かそうとしている。それに、これまた偶然から始まったとはいえ、恋人を邪険にするような男ではない。見吉の携帯小説を手伝う過程で、作品作りの役に立つこともあるだろう。

──ほとんどが自分の希望であり、「サイコーとシュージンには こうあって欲しい」という独りよがりかもしれない。それでも、信じるに値する人物だからこそ、ここまで言えるのだ。自分も人からそう思われるようになりたい。

邪魔に なってない?

最後まで公園のシーンは良い。こういうシンミリした話が好きだ。

何度も感想に書いてきたが、見吉はシュージンと つきあい始めてから、あまり好い思いをしていない。サイコーに妨害をされている、と言ってもいいだろう。もう少し高校生の女の子らしく、見吉は不満を持っても良いはずだ。

それなのに、シュージンたちの邪魔をしていないか、見吉のほうから言い出すのは意外だった。ずっと、それが気がかりだったのか。

見吉に対して、シュージンが投げかけた言葉は、たった一言だ。乱暴なようでいて、文句の付けようのない模範解答である。それに、たぶん 100% の本心だろう。なにごとも素直が一番だ。サイコーと見吉との間でバランスを保ち続ける、超人のシュージンらしい態度である。

『バクマン。』という作品──マンガ家の頂点を目指す 2 人を描く作品としては、公園でのできごとは不安の残る終わり方だ。まさか、このままシュージンがマンガをやめるとは思わないが……。

コメント

  1. K2nd より:

    確かに今回の後半の展開はまったく予想できなかったです。
    でも、新妻&サイコーの性格からすると、ああなるのが最も自然な展開だとも同時に思った。
    要は作品(漫画)に対して超純粋なんだよね。そして向かうべき志が同じ。
    作品に自らの魂を入れるような愛情を注ぐには、対象に対してどこまでも誠実な奴隷となるようなものだと思う。
    宮崎駿監督もそんなようなことをよく言っていた気がする。
    それにしても面白すぎる。
    漫画業界もそうだけど、アニメ業界もあたらしい担い手を探していてこちらのラジオが内容が濃くて面白かった。
    ▼ジブリ汗まみれ- 崖の上のポニョ VS スカイ・クロラ!
    http://podcasts.tfm.co.jp/podcasts/tokyo/rg/suzuki_vol45.mp3

  2. K2nd より:

    明日のジョーつながりだとこっちの方もなかなか面白かったです。
    ▼ジブリ汗まみれ- 漫画家の浦沢直樹さんがれんが屋に!
    http://podcasts.tfm.co.jp/podcasts/tokyo/rg/suzuki_vol48.mp3

  3. asiamoth より:

    そうそう! 彼らの純粋さが、まぶしいくらいに感じます。マンガへの愛、ですね。
    今日もこんな時間に更新で、これから寝て起きて、昼から仕事なのです。ネットラジオは、また必ず聴きますね。ありがとうございます!