バクマン。 #42-1 「笑いとセリフ」 笑えない現実と気になる言葉

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『バクマン。』 42 ページ 「笑いとセリフ」 (週刊少年ジャンプ 2009 年 30 号)

jpn-tokyo_東大本郷三丁目 (by Andresito10) (by Andresito10)

今週号のジャンプは、まず作者のあとがきを読もう。

私は担当さんに騙されている気がするけど信じてやっていこうと思ってます。〈つぐみ〉

──大場つぐみ先生、なにが あったんですかーーー!!!!

これはたぶん、「平丸一也っぽいセリフのネタ」だろう。──うん、そう思っておこう……。

あと、矢吹先生の言葉も味わい深かった。

ここ最近人に感謝することが多い。この気持ちは忘れちゃダメだなーと思います。〈健太郎〉

ネットジャンキィのアナタなら、最近の矢吹先生のアレコレはご存じかと思う。何のことか知らない人は、知らないままでいたほうが幸せだ。

「最悪」って 何よ !?

真城・高木・見吉の 3 人が、もう高校三年生になっていることに驚いた。思い起こすと、あの新年会の時点で高二の冬休みだったのか……。作中の時間は ものすごく早く流れている。

まだ一年間は高校にいるとしても、高校生生活は半分以上がすでに過ぎ去った。並の高校生よりは濃い体験をしているとはいえ、もう少し子どもらしいイベントが描かれても良かったと思う。

──そう言いながらも、高校生らしい できごとって何だろうか、とも思った。

考えてみると、この 3 人で描いて欲しかった高校生のイベントは、何一つ思い浮かばない。文化祭でクラスのポスターをサイコーが描いて「真城って 絵ウマいじゃん!」と言われる──とか? つ、つまんねー。省略されて当たり前であったか……。

3 人とも進学希望とは、思い掛けなかった。見吉もそうだが、亜城木夢叶の 2 人も進学するのは、かなり意外だ。「18 歳までにアニメ化」という夢は、どうなったんだ……?

一芸で入れる大学

シュージンは、連載が終わった時のことを すでに考えている。サイコーはすこし動揺していたが、すぐに話を合わせた。

──この展開は、かなり不安だ。

中学三年生のころ、2 人でマンガ家になる決心を固めた時には、こんなことを話していた。

サイコー
「マンガ家に なれなかった時の保険に いい大学行くって言ってたの どこいったんだよ」
シュージン
「なれない時を 優先してちゃ ダメだろ」

Amazon.co.jp: バクマン。 1』 p.159-160

いまや、この時とは状況が違い、もはや「保険」ではなくなっているのか……。

親が満足する大学

大学はに行くのは親を満足させる為だ、とシュージンは言う。この言葉も面喰った。

すでにプロのマンガ家──しかも天下のジャンプで描いている作家のセリフとは信じがたい。少なからず、収入を得ているというのに……。

2 人の会話からは、ようするに「ジャンプで連載しても、それだけでは食っていけない」と言っているように聞こえた。これから本誌での連載を目指している人は、どう思っただろう。

いや、初めて連載するマンガが一本だけでは、一生を過ごすことはできない。それは当たり前だ。しかし、もし『疑探偵 TRAP』が不本意ながら途中で終了しても、次の作品をすぐに描く──という気合いが 2 人からは感じられない。

メタな視点で見ると、どう考えても「2 人は大学へ進み──普通のサラリーマンになりました」となるわけがないのだ。18 歳までに──高校生でいるうちにアニメ化、というのは難しいとしても、2 人はマンガ家で居つづけるはずである。

そうなると、「大学? なに言ってんだ! 俺達 ジャンプの人気作家になるんだろ !?」みたいな会話で良かったと思う。そうしなかったのは、リアリティを演出するためだろうか?

せめて今回は、

シュージン
「なぁ サイコー…… このままだと俺達 連載がいつ終わるか 分からないよな……」
サイコー
「! ……ああ そうだな」
シュージン
「やっぱり 大学くらいは行っておいたほうが 良くないか? 親も 安心するだろうしな……」
サイコー
「(……シュージンも 僕と 同じ事を……)」

──みたいなやり取りがあった上で、進学のことや連載終了について話して欲しかった。

いずれにしても、あの亜城木夢叶が、普通に「大学 行っとこうぜ www」「だよな wwww 連載 終わるかもしんねーし wwwww」みたいに話しているのは、かなりショックだ。

なんというか、急に「夢から覚めた」みたいな感じがして、悲しかった。

順位上げないと

サイコーとシュージンが不安に思うのも、当然かもしれない。『TRAP』の 4 話目から、ずっと順位が二桁なのだ。

たぶん、一桁圏内の 3 話から、初めて二桁に落ちた 4 話では、かなり落ち込んだだろう。しかし、すでに今回のサイコーは、あきらめ顔をしている。今はガマンの時なので、仕方がない。

それでもシュージンは、サイコー以上に不安を感じているようだ。読者にも その不安感が伝わってくる……。

さらには、ライバルたちの連載も始まるのだ。もう、フラグというフラグが総動員されている。このまま『TRAP』の連載が終わるのでは──とこの時点では思ってしまう。

まぁ、昔から「死亡フラグ転じて福となす」というコトワザがあって(?)、そこまでは心配していなかったが。でも、この原作者のことだから、『TRAP』が終了した場合のシナリオも想定しているような……。

どっちで返したらいいか

仕事場に着いた際の 3 人と高浜との会話が面白い。

無口だったころの高浜が言うとイヤミったらしく聞こえるが、いまでは彼独自のユーモアを感じる。

この時に高浜が言ったような「ユニークな屁理屈」が、じつは あとで今回のテーマだと分かるのだ!(ババーン !!)──というのは、考え過ぎかも。

ジャンプの連載マンガは、15 位以下は いつ切られても 仕方ないことが分かった。だいたい 20 作弱の連載が載っているから、妥当なところか。

今回の前半部分を読むと、つくづく「ジャンプ誌上で連載するだけではダメ」ということを思い知った。これは「作品中の事実」だが、現実世界でも同じだろう。悲しすぎるぜ……!