『バクマン。』 42 ページ 「笑いとセリフ」 (週刊少年ジャンプ 2009 年 30 号)
センスがなければ磨けば いいんだ !!
と港浦は思いつく。
先輩から(見かけ上は)冷たい態度を取られて、しかも生まれ持った もの
の差を言われれば、落ち込むのが普通だろう。しかし、港浦は違った。亜城木夢叶のためにも、落ち込んでいるヒマはないのだ。さっそく次の行動に移っている。
前のページからの流れを見ると、「服部が素直にアドバイスすればいいのに」と思った人もいるだろう。最近になって読み始めた読者は、イジワルな先輩に見えるのではないか。
もう少し早い段階で、服部が港浦の手引きをしていても良かったのに、という意見もあるはずだ。話の流れの都合上・盛り上げるために今回のような展開になったのか、それとも服部なりの考えがあるのだろうか……?
おそらく服部は、港浦に自分自身で打開策を見つけて欲しかったのだろう。そして、服部の態度をアドバイスとして港浦は受け取った。単純に服部から助言を受けていたら、今後も「困った時の服部頼み」になっていたかもしれない。
あなたが 犯人です
連載中の『疑探偵 TRAP』と『ラッコ 11 号』のページが描かれている。
『ラッコ』は ともかく、意外にも『TRAP』の絵が上手に見えない。読み切りの時のほうが、もっとウマかった。背景や脇役キャラはアシスタントが描いたからサイコーよりも絵が劣るのは分かるが、主人公の探偵も同じレベルに見える。すべては小畑さんの さじ加減しだいなので、「これからサイコーの絵は成長する」という演出だろうか。
もしくは、真城大先生は、キャラクタを「丸と点」で描いて、あとはアシスタント任せにしているのかもしれない(ないない)(某先生の伝説)。
シンクロしている !!
このページで注目なのは、シュージンはお笑いの DVD を、港浦は「名セリフ」の本を買ってきていることである。2 人が参考にするのは、「ギャグマンガ」ではないのだ。それは なぜだろうか。
ここで、作者の大場さんの思考をトレースしてみる。
デビュー前のシュージンと同様に、そうとう多くのマンガを読み込んだはずだ。当然のように、名作・駄作・怪作と呼ばれるギャグマンガも入っているだろう。大場さんなら ご存じかもしれないが、ジャンプには『とっても!ラッキーマン』という素晴らしいギャグマンガが載っていたのだ。もしも知らなければ、大場さんに教えてあげたい!
その原作者の書いたネームが、「大量のギャグマンガを買ってきた 2 人」──となっていないのだ。
想像するに、過去のギャグマンガをいくら読んでも、ほかのマンガ──とくにギャグマンガではない『疑探偵 TRAP』では生かせない、という判断だろうか。それならば、違うジャンルから笑いとセリフのネタを参考にしたほうがいい。おそらく、それが正解なのだろう。
──だって、前にも書いたけど、ここ数年のジャンプに載っているギャグマンガって、「うすた京介クローン」じゃないですかぁ。「ドーン!(主人公が何かボケる)」→「(間)」→「ガビーン!(準主役がツッコむ)」──ばっかり。飽きた。
セリフにセンスがある
『ラッコ』を訳わからんが何か笑える
と港浦は評する。それこそ、持って生まれたセンスが必要な作品だ。実際に、『ラッコ』の作者である平丸は、マンガをほとんど読んでこなかった。
しかし、シュージンと港浦は、そのセンスを勉強で身につけようとするのだ。
このあたりは、ジャンプが好きな展開というか(昔の)日本人らしい「努力と根性で何とかする」考え方である。バトルマンガでアリガチな「修行編」という感じ。
言いづらい順位
速報を見る港浦の、驚いた表情で不安になった。順位を上げるための糸口をせっかく見つけたのに、回復ができないくらいに悪い結果だったのか、と。
自転車に乗っている見吉の「ポカン顔」が笑える。まったく彼女の原形がないのだ。しかし、こういう状況では見吉に言えることが何もないので、彼女の気持ちを察すると、ちょっと切ない。
ほとんどビリ
もうほとんど「順位が落ちている」ことを前提に話しているサイコーが、悲しく見えた。
今週は「シュージンと港浦のターン」だから仕方がないけれど、近いうちにサイコーにも見せ場が来るだろう。しかし、本格推理マンガを描いていて、順位に結び付くためにサイコーができることは、何がある? シュージンのように、探偵の「決めポーズ」などを研究することだろうか。
そういえば、昔のサイコーは「ヒロインがカワイく描けない」ことで悩んでいた。それがアッサリと「亜豆を想いながら描く」ことで解消する。当時は「ズコー」と思ったものだ。それからは、ヒロインも含めて女性キャラが上達したという描写がない。そのうち、サイコーが「絵の参考にするため、必要経費でグラビア誌を買いあさる」の図が見られるのだろうか。
サイコーの心配をよそに、『TRAP』の順位は上がっていた。これにはシュージンと一緒に自分もビックリだ。
普通のマンガなから、今週号でじっくりと「順位が どんどんと落ちていく中、セリフの研究を続ける 2 人」を描いて、来週号で「ようやく人気が上昇しだした。しかし──」みたいな展開にする。『バクマン。』は急展開の連続というか、ほかのマンガの 1.5 話から 2 話分くらいを圧縮して詰め込んでいるようだ。
そのスピード感がたまらなく良い。もう、ギリギリのバランスだ。
ただし、その疾走感が余計に不安感を誘う。なにしろ、なぜ人気が出始めたのか何度読み返しても わからない
と言うのだ。ありがたいような、コワいような……。自分が 2 人の立場だったら、ものすごく気になる。