『バクマン。』 60 ページ 「男性と女性」 (週刊少年ジャンプ 2009 年 49 号)
いつも、亜城木の 2 人は抜け目がない。
今回、港浦の本気を認めながらも、条件次第では
という前提でギャグマンガを描こうというのです。何から何まで容認したわけではない。本当に、策士ですね。
そういえば、サイコーもシュージンも、恋人とつき合う・結婚する際にも「条件」付きです。マンガ家になることを親から許されたときも、ジャンプで連載するときも、すべてに条件がある。このマンガの裏テーマ、なのかもしれませんね。『DEATH NOTE』といい、ルール好きの作者らしいです。
笑えるの やりたいんだ
超速攻で、全力で、本気で、港浦から送られてきたマンガに 2 人は目を通しました。その感想が、つくづく駄目だな港浦さん
・カラ回り し過ぎ
、というのはヒドい。
しかし、これは、サイコーとシュージンは港浦を「愛すべきバカ」と思っている、ということでしょうね。本当に港浦のことを駄目なヤツだと切り捨てるのであれば、こんな勢いで付せんをチェックしたりしません。そのあたりを勘違いして、「亜城木夢叶は港浦を嫌っている」と思った人も多いのでは?
ダメな新人編集者なりに、自分でできることを一所懸命にした。その結果が、たとえカラ回りだったとしても、本気で来られたら本気で受け止める、という場面ですね。じつに男臭くて汗ばんでいる、『バクマン。』らしいエピソードです。
ここからは偏見を書きますが、もし亜城木夢叶が女性の 2 人組であれば、港浦からの段ボールは、届いた瞬間に廃棄処分していたのでは、と思いました。気持ち悪がって、開封すらしなかった、とか……。
入っても いいか
港浦がする土下座は、不格好です。そもそも、土下座が見苦しい。土下座をしなければならない状態になる、ということ自体が、致命的なのです。
それでも、ここは、土下座をしてでも謝るべきだった。
そういう状況が、誰でも一度や二度はあるのでは? 自分も、本当に謝るべき状況が何度もありましたが、じつは、心の底から誤ったことは、ありません。どこか心の中で、「自分は悪くないのに……」と思ってしまう。そんな、どうしようもない人間です。
もう いいんです
亜城木夢叶が港浦を受け入れた理由は、あの郵送物でした。しかし、当の港浦は、何のことだか分からない。これは、服部や山久(と亜城木)のような策略家にはない、天然さです。今後、この天然っぷりが、編集者として吉と出るか凶と出るか、港浦しだいですね。
この場面での 3 人の会話を聞いていると、「やっぱり港浦は鈍くさいなー」と思ってしまいます。みなさんも、そうなのでは?
しかし──悪いことをしたので、どうしても謝りに来た、という頭でいる時に、急に「もう済んだことだ」みたいに言われたら、だれでも港浦みたいになると思います。そこを普通に描いても面白くない。そこで、ちょっとコミカルに仕上げているのでしょうね。
な… なんというか
怒りが冷めたあとは、いつもの気配り上手なシュージンです。年上の編集者に対して、気を遣っていますね。サイコーも、不信感を抱いた目はしていません。
この 2 人には、「わだかまり」というモノがないようです。本当に、サッパリとした性格ですね。いつまでも、同じ事を引きずっている自分は、多いに見習いたい。
また 読切 !?
驚くべき事に、2 人はギャグでやる 条件
を 2 つも考えていました。そんな場面は描かれていませんが、よく見ると、郵送物が届いたときは外が明るかったのに、港浦が来たときには夕方になっている。その間に、今後の計画を立てていた、ということです。
この決断と行動の素早さが、2 人の武器ですね。さらに、粘り強い。
ジャンプの編集者である港浦ですら驚いていますが、本当に読切で試すのは 大切
なんですね。
自分は、読み切り作品を読んで印象に残ることが少ないです(だから連載にならなかったのかも)。または、読み切りは面白かったけど、連載になると「うーん……」とうなったり。そのため、それほど読み切りを重要視していませんでした。
都合のいいことに、ちょうど読み切りで試せる機会がやってきます。これは、マンガらしい「御都合主義」ですよね。しかし、本気で何かを望んでいると、向こうからチャンスが来ることも多い。
ぼた餅は、棚の下に行くからこそ、拾えるのです。くれぐれも、落ちてきたモチを取り逃すことのなきよう……。