HUNTER×HUNTER No.298 『薔薇』 (週刊少年ジャンプ 2010 年 13 号)
今週号は、ちょっと残念な展開でした。──自分で言うのも何ですが、こう書くのは珍しいですよね。いつもは大☆絶☆賛なのに。
今回の展開をじっくりと振り返ると、「最初からそうしろよ!」と思ってしまいました。いままでのアレコレは、いったいなんだったんだ、と。
でも、初回に読むときには、そんなことはミジンも思わないんですよ。「──え? えええー !?」の連続です。コマを進めるたびに不安がつのるし、ページをめくるのがドキドキする。
そして、一度読み終わって、何度も何度も読み返すと、ようやく「──まてよ?」と疑問がわいてくるわけです。よく考えたらオカシイぞ、と気付いてしまった。
最初は熱中していて気がつかなかったことが、ふとしたキッカケで冷静に考えると、「どうしてこうなった!?」と思ってしまう。──あ、これ、恋と同じだ。
それが お主の名だ
ネテロ会長のすべてを絞り出してぶつけた「百式観音・零の掌」ですら、王にとっては余興にすぎませんでした。王の目の前にいる老兵からは、人間の可能性を見つつも、「これがヒトの限界」であると察したことでしょう。王にとってニンゲンとは、自分が管理するべき、自分より下の存在であった……。
そうした、王からすれば初めから想定内のデキゴトとは違い、「自分の名前」は何としても知りたかったハズです。王にとっては、自分に付けられた名前とコムギだけが、特別な存在になっている。
それなのに──いまは「メルエム」の名前よりもネテロが気になるとは、よっぽどスサマジイ悪意を会長から感じたんでしょうね。ネテロの絵は鬼気迫る感じです。これ、少年マンガだよね……?
マンガを読んでいて、「こわい」と感じるのは、いつも人間の心です。人間の狂気──いや、自分では正常であると感じているけれど、けっしてそうではない人が、こわい。
地獄があるなら またあおうぜ
ネテロの奥の手は、「零」だけではなかった……!
爆弾の名前を「貧者の薔薇」と書いて「ミニチュアローズ」と読ませるとは、なかなかシャレています。「プアマンズローズ」ではないのは、なにかモチーフがあるのでしょうか。
ここで気になるのは、ネテロ会長は、はじめからバラを使う予定だったのかどうか、です。正直なところ、最初から爆弾一発で王を倒すつもりならば、時間も被害も最小限で済んだのでは……、と思いました。
たとえば、作戦の初期段階でバラを使うことを考えると、いろいろな戦略を思いつきます。
まずは、ノヴの「4 次元マンション(ハイドアンドシーク)」とバラとの組み合わせが思いつく。玉座の真下付近に「出口」を作っておけば、いつでも爆発させられます。
──というか、いま考えれば、「出口」を設置するということ自体が、キセキなしには達成不可という、ムチャクチャな作戦だよなぁ……。
または、ゼノやシルバが乗っていた怪鳥(ドラゴン?)からバラを落とす、というもの。これは、単純に戦闘機から爆撃するのと同じですね。ただ、ハンター協会のために「お偉い方々」が軍隊を動かさないだろう、という判断です。だったらバラはどこから調達したのか、という疑問が浮かびますケド。
念能力の中で、一番確実そうなのがモラウのディープパープルです。煙でバラを包み込んで運ばせれば、ピトーの「円」でも探知できない。メレオロンの「神の共犯者」やノヴのマンションと組み合わせれば、兵の移動距離も稼げるし、より確実性が増します。
さまざまな方法を使って、「王の近く」でバラを爆発させれば、護衛軍ごと王を殲滅できた──と思う。ではなぜ、ネテロは最後の最後までこの爆弾を使わなかったのか。
最初に思いついたのは、「キメラアントに占拠されたとはいえ、一国の首都に爆弾を持ち込むことが難しいのでは」という理由です。ただこれは、即座に却下ですよね。なぜなら、ゼノの「龍星群(ドラゴンダイヴ)」を落として、すでに宮殿は半壊状態です。
ひょっとしてバラは、核爆弾なのか? だから城に龍は落とせても、核兵器は気軽に使えなかったのでは? ──という考えも、違っていそうです。バラを使われた数で死者数を割ると、一発につき 2,000 人程度であり、どう考えても核兵器の威力じゃない。
今となっては 確かめようも ない
さて、ここは「感想サイト」であって「検証サイト」ではないので、そろそろ考察は終わりにしましょう。
オエライサンからキメラアントの駆除について、会長は「手段は選ばず」と判断しました。これは逆に言えば、「手段はネテロが選べる」ということです。ネテロの──ハンター協会のすべてを使って、何としてでもアリを駆除せよ、という命令ですね。
そこで、最後の最後まで、ネテロは自分の「念」で王を倒したかった──のではないでしょうか。
もしも、ネテロが討伐に失敗すれば、それこそ「上のほうの方々」は、強大な軍隊を投入せざるを得ない。王と数匹のキメラアントのために、より多くの人間が犠牲になる。そうならないうちに、ネテロは自分で戦いを終わらせたかったのでしょう。
「暗殺一家・ゾルディック家」の家長であるゼノですら、ターゲット以外は殺したことがありません。あくまでも仕事でやっている。
ゼノに比べると、ネテロはもっと重い業(ごう)を背負っているような気がしました。
2 匹は瞬時に 理解した
ネテロの思惑はどうあれ、事態は悪化していきそうです。
プフは人間たちと共存しようとは、ハナから思わなかった。それでも表面上は、ヒトとの約束を守るような素振りを見せていたのです。──でも、今後はムリそうですね。プフらしからぬ、悪鬼のような表情です……。
そして「もしかして仲間フラグが立った?」と思われたユピーですら、完全にアリの本性をむき出しにしている。
そもそもユピーは、人間のことを深く考えていなかったはず。たんなる、食料──。それがナックル・モラウとの出会いと戦いで、何か自分と通じ合えるモノを感じた。少なくとも「そういうヤツがいる」と思ったわけですよ。──それが今では、討伐隊はすべて、排除すべき敵としか見えなくなっている……。
2 匹は完全に 蟻となった
さて、王は爆弾と共に散ったのか?
さすがに、これだけの熱量と爆風を受けて、「なんとか無事」ということはないでしょう。それでも生きているとすると、とっさに地面を掘り進んでしのいだ──とか。あるいは、膨大なオーラを駆使した「堅(けん)」で「爆風に乗って」吹き飛んでいった、というくらいでしょうか。
一番の問題は、王の生死に関わらず、プフとユピーは復讐鬼と化して人類へ襲いかかってくる、ということですね。ネテロの頭には、そのことは考えていたのでしょうか。
あとは、現状を知ったネフェルピトーがどう動くか……。王のためにゴンたちに牙をむいても困るし、王ですら「王(アレ)はもう 要らない」などと言いだしたら、コムギもカイトもどうでもよくなる。
──あれ? もしかして今、最悪の事態が起こっているのでは……。