『バクマン。』 82 ページ 「ヒントとベスト」 (週刊少年ジャンプ 2010 年 20 号)
平丸と吉田が登場すると、とたんに『バクマン。 外伝』が始まったようなフンイキになります。「二人の世界」、ですね……。
今までも、この 2 人は口げんかに近いやり取り(「なかよくけんかしな♪」)を何度もしていました。しかし、今回はいつもよりもケンアクなムードです。
二人の仲(?)もこれまでか……。
ひ…ひどいじゃ ないですか?
──と思ったら、平丸はアッサリと吉田に泣きついている。本当に、二人は(不必要なまでに)仲が良いですね。
この平丸と吉田の会話からすると、『ラッコ 11 号』の連載を始めてからの 2 年間で、平丸は一度も休載していないらしい。もちろん、「福田組」全員でボイコットをした回を除いて、ということでしょう。
それにしてもスゴい。何度も逃避をしながら──つまりは描く時間を減らしながら、平丸は一度も原稿を落とさなかった。『バクマン。』で天才と言えば新妻エイジを思い浮かべる人が多いですが、元・サラリィマンでここまでやった、平丸のほうがスゴい。──吉田の教育のタマモノですね。
信じられないことに、吉田は、蒼樹紅の個人情報を平丸に教えている。これは問題なのでは……。
「たかだか紅茶の好みを教えただけじゃないか」と思う人は、今週 それだけ ですか?
という平丸の言葉を見逃している。普段は、もっと平丸にとって重要な──つまりは蒼樹の女性的な部分をリークしているに違いない。
ここで疑問なのは、山久がどうやって蒼樹の情報を仕入れているのか。昔の話とはいえ、山久のことを蒼樹は「生理的にムリ」を思っていましたからね。そうそう簡単にその思いは消えないでしょう。──自分の予想では、人当たりの良い加藤からそれとなく聞いているのでは。
方向性 ハッキリしているのに
「シリアスな笑い」は、ヘタをすると「シュールな笑い」になりがちです。この 2 つは、似ているようで違う。ハッキリと描き分けるには、センスが必要です。センスがずれてしまうと、『ボボボーボ・ボーボボ』の最後のほうみたいな事になってしまう。というか──、
『チャゲチャ』のことかーーーっ!!!(そうだよ)
さらに、シンプルな設定にする、というところがムズカシイ。『ラッコ 11 号』がある程度は成功しているのも、「ラッコ人間が世直しのために暴れる」というシンプルさが良いのでしょうね。
シンプルかつ邪道な設定で、シリアスに笑わせる……。どんなマンガになるのだろう?
編集長は本気だ
アフロ──雄二郎がまた、ベラベラと他人の事情を話しています。
いや、亜城木夢叶のことが気掛かりで、雄二郎は福田に話した──ように見えますよね。でも実際には、ヘタに福田が知って編集長へ怒鳴り込んだり、エイジに影響が出ることだけを雄二郎は心配している。
──とまぁ、雄二郎を悪者にしたい一心で書きましたが、彼も亜城木のことが気になるのでしょう。ただ、だからといって雄二郎や福田には、何もできないのです。そのため、アフロがたんなる下世話な話好きに見えてしまう。
ジャドーン
服部のタクラミなど、エイジには全部まるっとお見通しだった!
エイジの叫び声からして、亜城木夢叶が「邪道」のマンガを描いてくるところまで読んでいたようですね。このコマのエイジは、ものすごくニクタラシイ顔をしていて──グーです!
あとはもう、服部にできることはありません。亜城木夢叶を信じて待つしかないですね。
このページのカヤは、なんだかいつもと印象が違います。「人妻」(!)なのに、オトナと少女の相田にいるような……。というか、目の描き方からして『うずまき』の主人公にも見えました。
真城くんから 聞いてない
亜豆もカヤも、亜城木夢叶の現状を知らない。サイコーとシュージンからすれば、恋人とオクサンに心配を掛けたくないからでしょうが──こういう時ほど、頼って欲しいでしょうね。とくにサイコーは、つい最近、「困ったことがあれば相談する」と亜豆と確認し合ったばかりです。
さて、シュージンが取り出した、服部からの年賀状ですが──、おそらく、服部の住所を調べたのでは。つまりは、服部が住むマンションへたずねに行くのでしょう。港浦と同じように。ただ、最後の最後でひとに頼るというのも、なんだか『バクマン。』らしくない……。
でも、マンガの編集者が出す年賀状なんて、たいていは「テンプレどおり」だと相場が決まっています。次回作のヒントになるようなことが、このハガキに書いてあるとは思えないのですが──、いや、服部なら……?