ピクチャースタイル
ああ、わが愛しのパートナ、Canon EOS 7D よ! ──とかいうキモい雄たけびはさておき……。
7D くんは、ほかのキヤノンのカメラと同様に、写真の色味などの傾向を「ピクチャースタイル」で制御できます。そして──、ピクチャースタイルは、おもに静止画──通常の写真に対して作られている。
いまのところ、キヤノン純正では、「動画専用」のピクチャースタイルがありません。もう何本も Canon EOS 5D MarkII で撮影された動画が、テレビなどで公開されているというのに……。
キヤノンのデジタル一眼レフカメラで普通に撮った動画は、「黒が本当に黒く撮れる」と聞きます。
自分はそれほど詳しくないのですが、今までのビデオ機材では、黒を引き締めて表現することが難しいそうですね。本当の黒を手軽に出したい場合は、通常のピクチャースタイル・「スタンダード」で十分です。プロの方でも、コッテコテの「スタンダード」スタイルで撮っている。
でも──、もっとフィルムっぽい質感の動画を撮りたい!
──そういった用途に向けたピクチャースタイルのひとつが、「Super Flat」です。このスタイルで動画を撮ると、柔らかいトーンで動画が仕上がりますよ。フォトグラファーである渡辺伸次さんのサイトで知りました。
blackeyes photo blog : ピクチャースタイル[Super Flat]
実際に「Super Flat」で撮影した動画は、How to increase the Canon 7D dynamic range (Tutorial) on Vimeo をご覧ください。
また、ピクチャースタイルの本体は、cinema5D.com のトピックスにある「Superflat Version 01」からどうぞ。
この素晴らしい「動画用」ピクチャースタイルの紹介だけで終わっても良いのですが──、
ここからは、「Super Flat の正体」と、「Super Flat を静止画にも使う」という提案について書きます。
「Super Flat」の中身は?
さて、この「Super Flat」ですが、「色味がヘンになる」という批判をどこかで見ました。そのため、「忠実設定」のコントラストを落とすほうが、自然に動画が撮れる──とのこと。
──なるほど、試してみると忠実設定の「コントラスト: -4」でもイイ感じにフィルムライクな画(え)です。この設定もオススメですよ!
でも──、「Super Flat」を使うと色味がおかしくなる、というのは納得できません。なぜかというと──、
ピクチャースタイルエディターで「Super Flat」のファイルを開いてみれば、一目で分かります。
──どうでしょう? ピクチャースタイルエディターを使ったことがあって、トーンカーブが「読める」人であれば、何も説明しなくてもお分かりいただけるはず。
そう、なんと「Super Flat」は、「スタンダード」のトーンカーブを逆 S 字にしただけのモノだったのです!
ようするに、「スタンダード」のコントラスト(と「色の濃さ」)を下げただけなんですね。色味自体はイジっていない。
正体が分かれば、応用もカンタンです。
たとえば、「Super Flat」の「詳細設定」を開いて、すべての設定を「0」にしてみる。そうすると、適度にしまったコントラストと色味になります。
また、「Super Flat」は「スタンダード」を元にしていますが、これを「忠実設定」(Faithful)に変えるのも面白い。青空を撮る場合は、「Super Flat」のままよりも、この「Super Flat Faithful」のほうがキレイな青になります。
通常の写真にも使ってみる
こんな面白いスタイルを、動画だけに使うのはモッタイナイ!
「スタンダード」で撮ると「白飛び・黒つぶれ」しがちな状況──「森の木陰 with 晴天」なんかでも、「Super Flat」だとディテールがかなり出てきます。
ただ──、ちょっと通常の「Super Flat」だとコントラストにしまりがない。
そこで、すべての設定値(コントラスト, 色あい, 色の濃さ, シャープネス)を「0」にするとイイ感じです。──あ、いま思ったけど、風景写真だと「シャープネス」は「3」くらいのほうが良さそうですね……。
下の写真では、通常の「スタンダード」と今回の「Super Flat」・「Super Flat を 0,0,0,0 に設定」「忠実設定のコントラストを -4 に設定」、という 4 スタイルで RAW 現像してみました。どれも個性があって楽しいです。
個人的には、「忠実 -4,0,0,0」が好きですね。ノーマルの「Super Flat」は HDR っぽいかも。
デジイチのダイナミックレンジ
じつは、今回の記事を書いた理由は、ピクチャースタイルを紹介することとは別にありまして……。
自分が大好きなサイト・「GANREF」 の機材 DB を見ると、各デジタル一眼カメラの「性能テスト」が見られます。
機材 DB の中には、「ダイナミックレンジ」という項目があるのですが──、これって、キヤノンの機種で言うところの「ピクチャースタイル」しだいでどうとでもなる、ということなんですよ。
カメラメーカがコントラストを高めに調整して出荷すれば、必然的にダイナミックレンジは低くなりうる。逆もまたしかり。
デジタルカメラのダイナミックレンジや、フィルムカメラのラチュード──、つまりは「階調の豊かさ」を語ると、ほとんどの場合は「フィルムのほうが上だ!」という結論が出ます。「デジタルもまだまだだな……」と訳知り顔のカメラファンが頭に浮かぶ……。
でも、今回のように、コントラストを低くした設定で写真を撮るようにすると、驚くほど階調と色味が引き出せるのです!
いわゆる「ネムい写真」になることだけは覚悟するか、調整するかして、階調と心とを豊かにしましょうね。