『シューテム・アップ』 (Shoot 'Em Up)
お下品でスカッとするアクション映画です!
『シューテム・アップ』は、同じくクライヴ・オーウェン主演の『シン・シティ』とフンイキが似ている。どちらも「教育上よろしくない」場面が多いです。本作品は R-15+ではないけれども、子どもには見せないほうが良いでしょう。
クライヴ・オーウェンは、汚れ役を演じると「(泥)水を得た魚」のようにイキイキとしますね。しかも知的に見えるところが高得点です。『インサイド・マン』でも彼は格好良かった!
インサイド・マン – 銀行強盗が狙う「光るもの」は必ずしも金ならず : 亜細亜ノ蛾
頭を空っぽにして、「クライヴ・オーウェン、かっけェー!」「モニカ・ベルッチ、キレー!」というだけでも楽しめる映画です。しかし、意外とストーリィを複雑にひねっている。監督・兼・脚本のマイケル・デイヴィスが、話を作っている間に愛着が湧いてきたのでしょうね。
ヒーローとヒロイン
クライヴ・オーウェンが演じるスミスは、ちょっとワケありのチンピラです。その「ワケ」の部分はサラッと済まされたのですが、もうちょっと見せて欲しかった。主人公をあまりおセンチに描きたくなかった──のかもしれません。
モニカ・ベルッチが演じる「夜の女」ドンナ・キンタナも、過去を背負って生きている。こちらはスミスに弱みを見せて、ホロリと泣く場面が良かった(ポロリはなかった)。モニカ・ベルッチは、悲劇的なヒロインがよく似合う。
スミスとドンナの絡みで面白かったのは、ずばり、ベッド・シーンです! こんなに前衛的なラヴ・シーンは見たことがない!! ──アダルトなビデオ以外では。
──あ、いま気が付いたけれど、日本語訳のスタッフが、ドンナの名字でいらぬギャグを考えなくて良かったですね……。名前のほうで思いつくギャグだと、ネットでは下の言葉が有名ですね。
カプコン稲船さん「どんな判断だ 金をドブに捨てる気か 何千万円もかかっているんだぞ」 : はちま起稿
ムチャクチャなアクション
自分は「見ていて痛みを感じるアクション」が好きです。つまりは、リアルに見えるということ。
この映画のアクションは──ムチャがありすぎる。
なにしろ、主人公がいつも食べているニンジンを、敵の頭に突き刺したりするのです。ドンだけ硬いんだよ! 主人公が自分で育てているニンジンなので、特殊な逸品なのかもしれませんね(露天から普通のニンジンをパクっていたけれど)。
ガン・アクションもムチャクチャです。敵が乱射した弾に主人公は一発も当たらず、主人公の撃つ弾は一発で命中する。まぁ、主人公視点で操作する 3D シューティング(FPS)をやり慣れている人には、ごく普通に見えるかもしれませんね。
車同士がぶつかり合うアクションでも、空中で撃ち合う(!)アクションでも、「主人公補正」がバリバリにかかっています。
これは「そういう世界観」の映画なので、正しい。
『マトリックス・レボリューション』は、仮想世界で戦うときには「一滴も血を流さず、サングラスも外れず、服装も乱れずに戦う」ことを徹底させています。だからこそ、「素手で刀を受け止めて、ようやく血が流れる」場面が生きてくる。
『シューテム・アップ』は、冒頭のアクションを見ればムチャなアクション映画だと分かるので、世界に入り込みやすかった。
ポール・ジアマッティの演技力
クライヴ・オーウェンもモニカ・ベルッチも、安定して素晴らしかったですが、この映画でもっとも輝いていたのは、ポール・ジアマッティです。
ポール・ジアマッティは、カール・ハーツという名のボスを演じている。日本で言うと「インテリ・ヤクザ」ですね。いちいちセリフが芝居がかっていて、イカしている。下のような言葉をサラッと言うのです。
女房より銃のほうがよっぽどいい。何故だ? 銃にはサイレンサーを付けられる。
そうかと思えば、よ~く考えろ お尻は大事だぞ
、と時事ネタもつぶやく(これは日本語吹き替え版スタッフの茶目っ気だろうけど)。
カールは、部下に対しては情け容赦のない仕打ちをするのに、奥さんには頭が上がらない。妻からの電話には絶対に出る。仕事に熱心で愛妻家のカールから愛されて、さぞかし奥さんも幸せ──と思いきや……。
蛇足にょろ
例によって例のごとく、今回のタイトルもゲーテの名言から借りました。この名言へとたどり着くまでに、1 時間くらいネットの海をさまよったという……。