魔法少女まどか☆マギカ 第 5・6 話 – 後悔よりもお菓子を食うかい?

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『魔法少女まどか☆マギカ』 (PUELLA MAGI MADOKA MAGICA)

バウムポッキー刺し Baumkuchen with Pocky (Animated GIF/wiggle 3D)
(魔法少女が三人集まれば──かんたんには折れない)

前回、魔女に操られていた志筑仁美を、美樹さやかが助けました。今回は、お互いに軽くあの夜のことを話し合っている──。

この場面は、さやかの優しさを描いているわけです。ヘタに心配するフリをすると、逆に友だちを不安にさせてしまいます(普通だったら、「集団催眠中に暴力を振るわれたのでは?」と思ってしまう)。

ところが、自分には さやかが恐ろしかった。彼女は何があっても、強がって普通の態度を演じてしまいます。巴マミの時もそうだった。おそらく、鹿目まどかに もしものことがあっても同じでしょう。

──いや、現在の自分が さやかの立場でも、同じように振る舞うとは思いますよ。しかし、それは、彼女たちの●倍ほど長く生きているからできることです。中学生のころ、人一倍おバカさんだった自分には、とても彼女のマネはできなかった。

さやかも まどかも、優しすぎる。それがキュゥべえに認められる条件なのでは──と思える描写でした。

第 5 話 「後悔なんて、あるわけない」

さやかがキュゥべえと契約するシーンは、とても興味深い。5-6 本目の足なのか・触覚なのか・耳毛なのか──よく分からなかったキュゥべえのアレは、こうして使うのか! と初めて分かりました。

イケイケイタイケな女子中学生のお胸に触れているのも、必要な儀式であれば仕方がありません。かわいらしいキュゥべえであれば、誰もが許すはず。

──ということで、ぜひ、この場面は第 10 話のあとで、見直しましょう……。


この作品のテーマのひとつは、「二面性」だと思う。いろんなところにウラ・オモテが隠されている。

わたし、いま、最高に幸せだよ──と上条恭介の回復を喜ぶ さやかは、乙女チックで愛らしい。言葉の意味を表面だけで とらえれば、ほほえましい場面です。彼女の恋を応援したくなる。

しかし──、「最高」とは、言いかえれば「この上ない」という意味です。この上ない──。このシーンが屋上であることも、偶然ではないと思う。青い髪の少女は、この時が一番しあわせだった──。


「考え方の相違」も『まど☆マギ』の主題です。全員が全員、違う意見を持っている。そのため、毎回のようにすれ違いが起こってしまう──。

人間・魔女・魔法少女の「食物連鎖」について語る佐倉杏子は、おそらく正しい。best ではないけれど better な考え方だと思う。その魔女だけを狙ってきたはずの杏子ですら、ソウルジェムは濁っていました(双眼鏡の場面)。

マミは手下も退治していたけれど、よっぽど運が強かったか、魔力が強大か、あるいは──後輩の前だけの行動だったのかも。そうじゃないと、グリーフシードの補充が間に合わなくなる。

どんな献身にも見返りなんてないまるで経験者のように語る暁美ほむらには、さやかの偽善的な行動は賛成できません。そのため、さやかのことを心配する まどかとも、心が通い合わない。

ほむらちゃんも あきらめちゃってるの? と まどかに聞かれて、ただただ認めることしかできない ほむらの心には、どんな思いが詰まっていたのでしょうか……。

そして──、この作品の中で一番「考えが理解できないキャラクタ」は、ほかにいる。


『まど☆マギ』は「魔法少女もの」でありながら、戦闘シーンはおもに武器で撃つ・斬る・突く・爆破する──のが特徴です。なんというか、もうちょっとこう、「キラッ☆」とファンタジックに光線的なモノを──、ねぇ?

一番マジカルだったマミでさえ、「銃をぶっ放す・または銃で殴る」と好戦的です。ただし、彼女はよく頑張っていました。本当は一瞬で変身できる(第 2 話を参照)のに、わざわざステップを踏んだり必殺技の名前を叫んで、ムードを出している。

その伝統は、さやかが受け継いで──ねェし!

魔女の手下に対して、剣を投げつける さやかに注目です。「剣は飛び道具としても使える」という事実を、しっかりと覚えておきましょう──第 10 話まで……。あとは、漢(おとこ)らしい変身ポーズも見逃せません。

SPECIAL|魔法少女まどか☆マギカ
魔女図鑑 「落書きの魔女の手下」 | SPECIAL|魔法少女まどか☆マギカ


「魔法少女にできること」の範囲がよく分かりません。

癒しの祈りを契約にして魔法少女になった さやかは、自分自身の回復力に優れている。おそらく、他人のケガも治療できるでしょう(驚くべきことに、そんな場面はないけれど)。他人のために戦う彼女は、戦闘能力も高い。

交通事故から生き残ったマミは、自分自身のケガを治癒するように願ったと思います(「救急車!」説あり)。そのため、キュゥべえを治療していました。リボンによる拘束は、もしかしてギプスと包帯のイメージかも?

この 2 人は、願い事と能力が一致しています。

ところが、今回の杏子は、双眼鏡を魔法で変形させている(遠くまで見えるように?)。あとで分かるように、この変形魔法と彼女の祈りは無関係です。このような能力は、彼女だけのモノなのか……?


今回の戦闘シーンは最高に素晴らしかった

まるで、ずっと劇団イヌカレーが創り出す「扱いにくい魔女」との戦いでたまったストレスを発散した──かのような作画です(真相は知らない)。心理描写だけでも見事な作品なのに、バトルまで描けるなんて、エクセレントすぎる!(?)

それにしても──、赤毛少女のセリフは、いちいち「いずれザコキャラと化す中ボス臭」がしますね。いまどき、トーシローが! とか言わない。初めて見た人は、「どうせ、スーパーさやか人にパワーアップして倒すんだろうな」と思ったりして。


ほむらが止めなければ、杏子は本当に さやかを突き殺していたはずです。この事実は見逃せないはずですが──、なぜかネット上では「なかったこと」に されている。孫悟空とベジータの関係──みたいな感じ?

魔法少女である さやかには本気で戦いを挑むのに、杏子は まどかを隔離している。「一般人になんか興味がない(魔女のエサだし)」とも取れるし、「魔法少女の戦いに巻き込みたくない」とも見える。


さやかの部屋でリラックスするキュゥべえがキュート! ──と素直に見られたのは、今回までです。

まどかのことを最悪の事態に備えた切り札と呼んだり、さやかの一大事にも契約をうながすキュゥべえには、だんだんと不信感が高まってくる──。

第 6 話 「こんなの絶対おかしいよ」

たぶんダンスゲームの採点とはまったく関係ないのに、大げさにフィニッシュのポーズを決める杏子がかわいい! オンナノコしてますね。普段はガサツだけれど、ちょっとしたことで女性らしさを感じる──。これは、さやかも同じです。

このダンスゲームは「Dog Drug Reinforcement.」という名前で、マスコット・キャラは「イヌダルマブラザーズ」というらしい。こんなところまで設定がしてあるのですね。専用の音楽まで作っているところが面白い。

SPECIAL|魔法少女まどか☆マギカ
魔女図鑑(シークレット) | SPECIAL|魔法少女まどか☆マギカ

この陽気そうな場面で、初めてワルプルギスの夜という言葉が出て来ます。どうやら強い魔女らしい──。

こういったボス的な存在がいなければ、杏子と ほむらが手を組むことなんて あり得ないでしょうね。仲間と共に強敵に挑む──。おお、バトルマンガ的な熱い展開か──と思わせるところが憎い(文字どおりの意味で)。

参考(にならない?): ヴァルプルギスの夜 – Wikipedia


マミがマミられるやられるのを待ってから、ほむらは魔女を倒しに来た──と さやかは言う。最初にこの言葉を聞いた時には、どうしてそんな勘違いが起こるのかが分からなかった。

そう、よく考えたら、ほむらはマミのリボンで拘束されていたことを、さやかは知りません。親友の まどかは、強引にでも状況を説明するべきだった。さやかは聞き入れなかったと思うけれど……。

ここもバツグンのシナリオです。「そのキャラクタが知っていること/ 知らないこと」を客観的に考えてある。

──そんなことよりも、このシーンは さやかの悩ましいポージングに注目しましょう(えー)。なんだか見ているとモヤモヤする。

ポーズと言えば、後半で杏子が変身するところも必見です。なぜか途中でお尻を突き出している。この腰を入れるような姿勢は、第 3 話のシャルロッテ戦でマミもやっていました。魔法少女は腰入れが基本なのかな?


母親の詢子と まどかが会話するシーンは、どれも名場面です! 詢子は、素直に育ちすぎた自分の娘に対して間違えればいいさと助言したり、オトナは誰だって つらいのさと軽く言ったりする──。最高に格好いいオトナですね!

まどかが魔法少女にならないのは、本当にあこがれる対象が先輩のマミでも優等生の ほむらでもなく、自分の母親だからかも。


前回はレストランでさんざんなことを言われたり(コーヒーのフタ = マミ・ヘッド?)、今回はどこまで あなたは愚かなのと にらみつけられたり、ほむらのことを完全に「こわい人」と まどか(と視聴者)は思っているはず。

それでも忠告に従わず、積極的に魔法少女と かかわろうとする桃色髪少女は、かなり根性が座っています。トラブルに巻き込まれる体質だったり度胸があったりするのは、マンガやアニメの主人公の必要条件だったりする。

そんな彼女に、ほむらは苦労したでしょうね……。


この回の前半から、キュゥべえは「自分の仕事」のことを本格的に明かし始めています。ケガレがたまってきたグリーフシードを、背中で飲み込んでいる(きゅっぷい!)。

まどかは天才的な魔法少女になれる──とキュゥべえ言う。だから彼女を狙っているのか──。お別れしたはずの まどかを普通~に呼びに来るし、絶対に逃がす気はありませんね。

友だちを放り投げるなんて どうかしてるよとか、わけがわからないよとつぶやくキュゥべえには、心底ゾッとしてしまう。彼は皮肉を言っているのではなく、本当に人間の行動が理解ができていない──と分かるから、こわい。

いままでのかわいらしいキュゥべえの行動は、すべて人間のため・契約を取るために用意された演技だった──。普通に見ていると、それが初めて分かる回でした。

第 1 話の冒頭を見直してみると、あの有名な僕と契約して 魔法少女になってよのセリフを初めて言う時に、キュゥべえは無表情です。その後の本編では、彼は かわいらしく振る舞っている。

このことからも、アレは未来のできごとだったのではないか──と推測できるのです。さて、真相は──。

おわりに

ここは「感想サイト」なのだから、なるべく「考察」は避けています。しかし、これほど想像力をかき立てられる作品に出会うと、ついつい考え込んでしまう。

たとえば、第 5 話に出てきた展望台(?)での会話も謎だらけです。

杏子は ほかの街からやって来たのだから、当然のように見滝原以外にも魔法少女がいるはず。もしかすると、世界中にいるかもしれない。それなのに、「魔法少女を生み出すのは、キュゥべえだけだ」と彼女は信じ切っていた。これは不思議です。

普通に考えれば、あの場面で杏子は、キュゥべえにこう聞くべきだと思う。

「アンタみたいなのが、ほかにもいるわけ?」

ベテランの杏子ですら、その可能性を考えなかったのは、なぜだろう? そう描くことで、視聴者にも同じことを感じさせるという、カモフラージュの役割なのかも。

はたして、存在するのか──ハチべえやジュウべえは?