『魔法少女まどか☆マギカ』 (PUELLA MAGI MADOKA MAGICA)
前回、魔女に操られていた志筑仁美を、美樹さやかが助けました。今回は、お互いに軽くあの夜のことを話し合っている──。
この場面は、さやかの優しさを描いているわけです。ヘタに心配するフリをすると、逆に友だちを不安にさせてしまいます(普通だったら、「集団催眠中に暴力を振るわれたのでは?」と思ってしまう)。
ところが、自分には さやかが恐ろしかった。彼女は何があっても、強がって普通の態度を演じてしまいます。巴マミの時もそうだった。おそらく、鹿目まどかに もしものことがあっても同じでしょう。
──いや、現在の自分が さやかの立場でも、同じように振る舞うとは思いますよ。しかし、それは、彼女たちの●倍ほど長く生きているからできることです。中学生のころ、人一倍おバカさんだった自分には、とても彼女のマネはできなかった。
さやかも まどかも、優しすぎる。それがキュゥべえに認められる条件なのでは──と思える描写でした。
第 5 話 「後悔なんて、あるわけない」
さやかがキュゥべえと契約するシーンは、とても興味深い。5-6 本目の足なのか・触覚なのか・耳毛なのか──よく分からなかったキュゥべえのアレは、こうして使うのか! と初めて分かりました。
イケイケイタイケな女子中学生のお胸に触れているのも、必要な儀式であれば仕方がありません。かわいらしいキュゥべえであれば、誰もが許すはず。
──ということで、ぜひ、この場面は第 10 話のあとで、見直しましょう……。
この作品のテーマのひとつは、「二面性」だと思う。いろんなところにウラ・オモテが隠されている。
わたし、いま、最高に幸せだよ
──と上条恭介の回復を喜ぶ さやかは、乙女チックで愛らしい。言葉の意味を表面だけで とらえれば、ほほえましい場面です。彼女の恋を応援したくなる。
しかし──、「最高」とは、言いかえれば「この上ない」という意味です。この上はない──。このシーンが屋上であることも、偶然ではないと思う。青い髪の少女は、この時が一番しあわせだった──。
「考え方の相違」も『まど☆マギ』の主題です。全員が全員、違う意見を持っている。そのため、毎回のようにすれ違いが起こってしまう──。
人間・魔女・魔法少女の「食物連鎖」について語る佐倉杏子は、おそらく正しい。best ではないけれど better な考え方だと思う。その魔女だけを狙ってきたはずの杏子ですら、ソウルジェムは濁っていました(双眼鏡の場面)。
マミは手下も退治していたけれど、よっぽど運が強かったか、魔力が強大か、あるいは──後輩の前だけの行動だったのかも。そうじゃないと、グリーフシードの補充が間に合わなくなる。
どんな献身にも見返りなんてない
とまるで経験者のように語る暁美ほむらには、さやかの偽善的な行動は賛成できません。そのため、さやかのことを心配する まどかとも、心が通い合わない。
ほむらちゃんも あきらめちゃってるの?
と まどかに聞かれて、ただただ認めることしかできない ほむらの心には、どんな思いが詰まっていたのでしょうか……。
そして──、この作品の中で一番「考えが理解できないキャラクタ」は、ほかにいる。
『まど☆マギ』は「魔法少女もの」でありながら、戦闘シーンはおもに武器で撃つ・斬る・突く・爆破する
──のが特徴です。なんというか、もうちょっとこう、「キラッ☆」とファンタジックに光線的なモノを──、ねぇ?
一番マジカルだったマミでさえ、「銃をぶっ放す・または銃で殴る」と好戦的です。ただし、彼女はよく頑張っていました。本当は一瞬で変身できる(第 2 話を参照)のに、わざわざステップを踏んだり必殺技の名前を叫んで、ムードを出している。
その伝統は、さやかが受け継いで──ねェし!
魔女の手下に対して、剣を投げつける さやかに注目です。「剣は飛び道具としても使える」という事実を、しっかりと覚えておきましょう──第 10 話まで……。あとは、漢(おとこ)らしい変身ポーズも見逃せません。
魔女図鑑 「落書きの魔女の手下」 | SPECIAL|魔法少女まどか☆マギカ
「魔法少女にできること」の範囲がよく分かりません。
癒しの祈りを契約にして魔法少女になった
さやかは、自分自身の回復力に優れている。おそらく、他人のケガも治療できるでしょう(驚くべきことに、そんな場面はないけれど)。他人のために戦う彼女は、戦闘能力も高い。
交通事故から生き残ったマミは、自分自身のケガを治癒するように願ったと思います(「救急車!」説あり)。そのため、キュゥべえを治療していました。リボンによる拘束は、もしかしてギプスと包帯のイメージかも?
この 2 人は、願い事と能力が一致しています。
ところが、今回の杏子は、双眼鏡を魔法で変形させている(遠くまで見えるように?)。あとで分かるように、この変形魔法と彼女の祈りは無関係です。このような能力は、彼女だけのモノなのか……?
今回の戦闘シーンは最高に素晴らしかった!
まるで、ずっと劇団イヌカレーが創り出す「扱いにくい魔女」との戦いでたまったストレスを発散した──かのような作画です(真相は知らない)。心理描写だけでも見事な作品なのに、バトルまで描けるなんて、エクセレントすぎる!(?)
それにしても──、赤毛少女のセリフは、いちいち「いずれザコキャラと化す中ボス臭」がしますね。いまどき、トーシローが!
とか言わない。初めて見た人は、「どうせ、スーパーさやか人にパワーアップして倒すんだろうな」と思ったりして。
ほむらが止めなければ、杏子は本当に さやかを突き殺していたはずです。この事実は見逃せないはずですが──、なぜかネット上では「なかったこと」に されている。孫悟空とベジータの関係──みたいな感じ?
魔法少女である さやかには本気で戦いを挑むのに、杏子は まどかを隔離している。「一般人になんか興味がない(魔女のエサだし)」とも取れるし、「魔法少女の戦いに巻き込みたくない」とも見える。
さやかの部屋でリラックスするキュゥべえがキュート! ──と素直に見られたのは、今回までです。
まどかのことを最悪の事態に備えた切り札
と呼んだり、さやかの一大事にも契約をうながすキュゥべえには、だんだんと不信感が高まってくる──。
第 6 話 「こんなの絶対おかしいよ」
たぶんダンスゲームの採点とはまったく関係ないのに、大げさにフィニッシュのポーズを決める杏子がかわいい! オンナノコしてますね。普段はガサツだけれど、ちょっとしたことで女性らしさを感じる──。これは、さやかも同じです。
このダンスゲームは「Dog Drug Reinforcement.
」という名前で、マスコット・キャラは「イヌダルマブラザーズ
」というらしい。こんなところまで設定がしてあるのですね。専用の音楽まで作っているところが面白い。
魔女図鑑(シークレット) | SPECIAL|魔法少女まどか☆マギカ
この陽気そうな場面で、初めてワルプルギスの夜という言葉が出て来ます。どうやら強い魔女らしい──。
こういったボス的な存在がいなければ、杏子と ほむらが手を組むことなんて あり得ないでしょうね。仲間と共に強敵に挑む──。おお、バトルマンガ的な熱い展開か──と思わせるところが憎い(文字どおりの意味で)。
参考(にならない?): ヴァルプルギスの夜 – Wikipedia
マミがマミられるやられるのを待ってから、ほむらは魔女を倒しに来た
──と さやかは言う。最初にこの言葉を聞いた時には、どうしてそんな勘違いが起こるのかが分からなかった。
そう、よく考えたら、ほむらはマミのリボンで拘束されていたことを、さやかは知りません。親友の まどかは、強引にでも状況を説明するべきだった。さやかは聞き入れなかったと思うけれど……。
ここもバツグンのシナリオです。「そのキャラクタが知っていること/ 知らないこと」を客観的に考えてある。
──そんなことよりも、このシーンは さやかの悩ましいポージングに注目しましょう(えー)。なんだか見ているとモヤモヤする。
ポーズと言えば、後半で杏子が変身するところも必見です。なぜか途中でお尻を突き出している。この腰を入れるような姿勢は、第 3 話のシャルロッテ戦でマミもやっていました。魔法少女は腰入れが基本なのかな?
母親の詢子と まどかが会話するシーンは、どれも名場面です! 詢子は、素直に育ちすぎた自分の娘に対して間違えればいいさ
と助言したり、オトナは誰だって つらいのさ
と軽く言ったりする──。最高に格好いいオトナですね!
まどかが魔法少女にならないのは、本当にあこがれる対象が先輩のマミでも優等生の ほむらでもなく、自分の母親だからかも。
前回はレストランでさんざんなことを言われたり(コーヒーのフタ = マミ・ヘッド?)、今回はどこまで あなたは愚かなの
と にらみつけられたり、ほむらのことを完全に「こわい人」と まどか(と視聴者)は思っているはず。
それでも忠告に従わず、積極的に魔法少女と かかわろうとする桃色髪少女は、かなり根性が座っています。トラブルに巻き込まれる体質だったり度胸があったりするのは、マンガやアニメの主人公の必要条件だったりする。
そんな彼女に、ほむらは苦労したでしょうね……。
この回の前半から、キュゥべえは「自分の仕事」のことを本格的に明かし始めています。ケガレがたまってきたグリーフシードを、背中で飲み込んでいる(きゅっぷい!
)。
まどかは天才的な魔法少女になれる──とキュゥべえ言う。だから彼女を狙っているのか──。お別れしたはずの まどかを普通~に呼びに来るし、絶対に逃がす気はありませんね。
友だちを放り投げるなんて どうかしてるよ
とか、わけがわからないよ
とつぶやくキュゥべえには、心底ゾッとしてしまう。彼は皮肉を言っているのではなく、本当に人間の行動が理解ができていない──と分かるから、こわい。
いままでのかわいらしいキュゥべえの行動は、すべて人間のため・契約を取るために用意された演技だった──。普通に見ていると、それが初めて分かる回でした。
第 1 話の冒頭を見直してみると、あの有名な僕と契約して 魔法少女になってよ
のセリフを初めて言う時に、キュゥべえは無表情です。その後の本編では、彼は かわいらしく振る舞っている。
このことからも、アレは未来のできごとだったのではないか──と推測できるのです。さて、真相は──。
おわりに
ここは「感想サイト」なのだから、なるべく「考察」は避けています。しかし、これほど想像力をかき立てられる作品に出会うと、ついつい考え込んでしまう。
たとえば、第 5 話に出てきた展望台(?)での会話も謎だらけです。
杏子は ほかの街からやって来たのだから、当然のように見滝原以外にも魔法少女がいるはず。もしかすると、世界中にいるかもしれない。それなのに、「魔法少女を生み出すのは、キュゥべえだけだ」と彼女は信じ切っていた。これは不思議です。
普通に考えれば、あの場面で杏子は、キュゥべえにこう聞くべきだと思う。
「アンタみたいなのが、ほかにもいるわけ?」
ベテランの杏子ですら、その可能性を考えなかったのは、なぜだろう? そう描くことで、視聴者にも同じことを感じさせるという、カモフラージュの役割なのかも。
はたして、存在するのか──ハチべえやジュウべえは?