HUNTER×HUNTER #323 「依頼」 たびたび道連れ 情はなさげ

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HUNTER×HUNTER No.323 「依頼」 (週刊少年ジャンプ 2011 年 48 号)

... big toy gun
(子どもの遊び──では済まされない現実)

『H×H』の何が良いって、会話が おもしろい!

今回は「室内で座って話しているだけ」という某マンガの得意技を奪ったような──『HUNTER DANCE』みたいな話でした。派手なバトル・シーンがあるわけでも、お色気な場面があるわけでも、魅力的な新キャラが出たわけでも、ない。

読者が よく知っている──そして よくは知らない登場人物が、延々と しゃべっているだけで、どうしようもなくワクワクしてくるのです!

ヒソカに談ずる

奇術師ヒソカと偏愛兄イルミが こんなにも長々と話し合うなんて、初めてのことでした。とくにイルミは、とぎれとぎれの会話しかできないと思っていただけに、論理的な話し方でビックリです。

前回にも思ったけれど、ゾルディック家の人間は、どことなく──『レベル E』の香りがする。とくに、「ミッション失敗」で まっ先に誰が道連れになるかを気がつくところは、あのバカ王子そっくりです。

HUNTER×HUNTER #322 「兄妹」 ブラック・オア・ホワイト | 亜細亜ノ蛾

イルミがヒソカに仕事を依頼した理由は、ヒソカがウソつきであると同時に、他人のウソを見抜く名人だからでしょう。今回の密談でも、イルミの言葉の裏を読み当てています。

幻影旅団のメンバが、わざわざヒソカに「除念師」との交渉を任せたのも、同じ理由だと思う。敵と言っても良いくらいの相手に頼むなんて、フィンクスやマチは不満だったはず。それでも依頼したわけで、いかにヒソカの交渉術が優れているか分かる。

意外と便利に使われるヒソカであった。

重い弟思い

もう一つ意外と言えば、イルミがキルアの気持ちを読み取っていることです。てっきり、「普通の感情」なんて分かろうとも・知ろうともしない人物なのかと思っていただけに、これには驚いた。

ネテロ前会長と「怪物」との事情も、側近とゴンのことも、イルミは知っている。──いくら何でも事情通すぎますよね。

キメラアント討伐隊の内部か、あるいは すぐ近くに、イルミの情報源が いるのでは? ただ、王と護衛軍・討伐隊の全体像を知っている人物は、ごく限られます。となると──。

弟のキルアが可愛いあまり、脳に針を打ち込むようなイルミが、バックアップを用意しなかったのでしょうか。つまりは──、キルアの目や耳などにも「何か」が仕込んであるのかも。

ヒソカを始めとして、おそらく全読者が だまされた「2 人とも」発言は、イカレていて最高でした! イルミは、いい性格しているよなー。かたよった愛情についてヒソカが あきれるなんて、よっぽどのことですね。

重い兄

意外つながりで、ミルキが「良いお兄さん」を演じられるところもビックリです。「家に引きこもっている」と言っても、敷地内に都市くらいの広さがあって大人数が暮らしているから、人と接する機会も多いのでしょうね。

ゾルディックの人間に温かく迎え入れられた観光客は、もっと目が飛び出るくらいに仰天したはず。そして──、本当に目や何やらが飛び出たのだろうなぁ……。

ムーナからは、モタリケと同じニオイがする。

命の価値は

ヤスハの場合は億万長者を願って 67 人・ミルキは暗殺依頼の丸投げして 13 人の犠牲者が出ました。どこから この差は来ているのか──というと、単純に「金額」かもしれません。

前回のテレビ映像を見ると、ヤスハの願いによって現金輸送船から降ってきた お金は、4 億ジェニーでした(不祥事などで消えた金も上乗せしてあると思うけれど)。

犠牲者の数は 67 対 13 で、約 5 倍の差です。ヤスハが手に入れるはずだった 4 億に対して、ゾルディック家へ暗殺を依頼する料金が 8,000 万ジェニー(4 億の 5 分の 1)と考えると、なかなか納得がいく数字でしょう。

今度は 4 億ジェニーを 67 人で割ってみると、およそ 600 万円になる。ちょっと「命・グランバザール」な感じがします(パルコ?)。でも、これはペナルティだからでしょうね。ヤスハ先輩、パねぇッス!

ヤスハ:
「つい…… 魔がさして !!」
イルミ:
「ヤスハ ちょっとジャンプしてみて」
ヤスハ:
「はい……(ガサッガサッ)」
イルミ:
「はい 胸ポケットから金 出してー」
恋の代償

冨樫先生が書いた手書きの文字は、美しいし味があります。フォントにして販売したら かなり売れるかも──しれないけれど、その時間で続きを描いて欲しい。

その手書きされたウチは執事が 恋愛している 時点で 死刑という文字の意味を読み間違えて、「執事と執事との恋愛は禁止」と最初は思っていました。夜のお店みたいだな──と。

読み返してみると、「恋をすること」自体に罰則があるんですよね。だからカスガは(100% 失敗するであろう)ミッションに挑む羽目になった。

でも──、そうなると、敷地内の養成所から どうやって赤ん坊が産まれるんだろう?

──コウノトリが運んでくるとか? いや、冗談ではなく、チードルのような能力者が、どこかから連れ去ってくるのでは……。孤児院養父母という単語も、イルミが言うと不気味に聞こえる。

恋をしなくても、子どもは できるけれど。

母親似・父親似

ゼノは、仕事以外では人を殺した経験が ないそうです。前回の会話から考えて、シルバもムダな殺生は避けたいと思っているらしい。この親子は、容姿もよく似ていますね。

ところが、イルミとミルキは、ためらいなく他人の命を利用しています。おそらく、彼らは母親似なのでしょう。母親も、家族以外の人間には何とも思っていないフシがある。

以上から考えると、シルバの奥さまが身につけている「彼女の本来の力を抑える拘束具」──ことバイザを外すと、イルミやミルキのように真っ黒な目があるに違いない。

たぶんキルアは、父親似でしょうね。正確にはゼノ似かな。家族のなかでは、キルアが一番まともな考え方をしています。だからこそ、あの家に合わず、飛び出した。

ただ、ゼノについては、「自分で言っているだけ」という可能性もあります。この作者のことだからなー。

DQN:
(ドン!)「ってェーなジジイ! どこに目をt
ゼノ:
「──あ ワシ 仕事以外で初めて人を殺めたかも」
シルバ:
「親父の話は 1,000 分の 1 に 聞いておかないとな」
怪しい 2 人

パリストンはチードルのことを「狙っている」のでは──と以前にネタとして書きました。自分の(にごりきった)目には、単純に彼が敵視しているようには見えません。もっとアヤシイ感情が漏れ出している──。

HUNTER×HUNTER #321 「怪者」 けもの×ケモノ×のけもの | 亜細亜ノ蛾

今回の話を読んで、完全にパリストンとチードルはデキていると(勝手に)確信しました!

ただし、パリストンが一方的に思っているわけではない。チードルのほうが、パリストンのことを強く想っている──としか自分の(腐りきった)心には映りませんでした。

だってさー(急に馴れ馴れしく)、パリストンの言葉を聞くチードルは、完全にこんなヤツに……くやしい! でも……(ビクビクッ!) という目の色をしているよね。艶っぽい(ごくり……)。

『ハンター』の何が良いって、チードルに決まってる!

この雑誌が青年誌だったら、絶対に次号あたりで「ホテルの一室で密会するパリストンとチードル、そして──」が出てくるはずです(断言)。

──あ、それ、『DEATH NOTE』で描かれていたか。

投票の行方は

上で書いたようなような話は さておき、明らかに ほかのメンバよりも、チードルはパリストンに執着しています。「何か」があったとしか思えない。

棄権票が増えたことに納得できず、カンザイが怒鳴っている。それも、チードルが荷担して票数を操作しているのではないか──と疑っています。パリストンを会長にするために──。

ところで、「なぜ『十二支ん』たちはパリストンを会長にさせたくないのか」と「会長が替わることでハンター協会に どんな変化があるのか」といった点は、読者にはハッキリとは分かりません。

失踪者が急増していることから、なんとなく「副会長派の人間だけはトップにさせては いけない」という空気が漂っているけれど──、それも「十二支ん」たちが言っているだけです。

会長に求められること

ネテロ前会長も、正しい人格の人だったかどうかは、大いに疑問が残りました。

自分の最大の奥義を繰り出しても まったくの無傷で、なおかつ遠方から一瞬で飛んできた強敵──ネフェルピトーと、未熟なゴンやキルアとを戦わせたら どうなるかは、想像するまでもない。

HUNTER×HUNTER #270『鱗粉乃愛泉』 プフの狂気 | 亜細亜ノ蛾

あの時点でネテロが、「ピトーは絶対にコムギを守る」ことを知る手段は ありません。普通に考えれば、一瞬でゴンは首を刈られて終わりだったはず。

──もちろん、漢(おとこ)が意地を張って戦場にやってきた以上、ネテロも誰も止められない。それは十分に分かった上で、単純に「ネテロは良い人」という認識には首をかしげます。

あらためて考えてみると、プロのハンターになった以上は、誰もが死を覚悟しながら活動していくことになる。そのような状況のなかで、「ハンター協会に できること」って、何だろう……?

ましてや、ハンター協会の会長がハンターたちに できることなんて、何もないように思いました。協会よりも「上の人たち」との つながりができる──というだけなのでは?

そんなことを考えている自分は、この茶番のような選挙戦が──、おもしろい! どうしてだろう? 登場人物が「生きている」からでしょうね。

この作品の何が良いって、キャラが素晴らしい!

この選挙のような「どこへ向かいたいのかが分からない話」を おもしろおかしく描けるなんて、ずば抜けた才能の持ち主だけです。ほかの作家だったら、「十二支ん」の設定や過去を事細かに説明するだけで、数話を費やしそう。

どこから来たアルカ

『ハンター×ハンター』は、アルカが良いよね!

西方の一部の地域で言うところの、「鬼のように可愛い」アルカだったら、荒縄状に されても──うーん。

お兄ちゃん 死んでの場面には意表を突かれました。たんなる「イメージ映像」と思わせる二重トリックが見事です! こんな悪趣味な遊びで喜ぶだけに、やっぱり普通の子供とは違う──ような、大差ないような。

危険なアルカとの面会をシルバが許したのは、キルアが簡単な「おねだり」で済むという算段があったからでしょう。あとは「お願い」だけして帰ってくるだけ──と考えている。

一方で、ヒソカに依頼するだけの猶予があるとイルミが見たのは、キルアが「お願い」を他人に頼むと予想したからでした。──ただ、どうも、キルア・イルミ・選挙の時間軸は、かなり誤差がありそうですけどね。

キルアしか知らない

今回のキルアは、アルカの「お願い」を 2 回も聞いているように見えるのだけれど──、これはカウントされているのでしょうか? だとしたら、イルミ兄ちゃんは「友だち」と旅行を楽しんだだけで終わる。

いや、キルアは早々に「お願い」を済ませて、続けて「尻ぬぐい」までしようと考えているのかも。

今までのところ、「おねだり」と「お願い」は連続することはあっても、「お願い」のあとに「おねだり」は来なかった。しかし──、

キルアだけが知っている「ルール」もある。

もしかすると、キルアは とっくに別の ナニカの正体まで たどり着いているのでは? そこまではムリでも、対処法の目安があるのかもしれない。

また、ほかの人間が「弟」や「坊ちゃん」と呼ぶなか、キルアだけがアルカのことを「妹」と呼んだのは、本当のアルカは女性面で、別の ナニカが男性面──なのかも。

そもそも、年齢に似合わず冷静な思考力を持っているキルアが、イルミの心配するような無茶をして、ゾルディックの人間を巻き添えにするとも思えません。「ナニカに対抗するための、何か」がありそう。

前回によるとアルカは、シルバと その妻には「おねだり」をしたことが ないらしい。このあたりにも、「ルール」と関係があるように思う。しかも、そんな「ルール」が いくつか存在するらしい──。

言ってしまえば「何でもアリの後出しジャンケン」です。「魔法少女ナニカ☆アルカ」とか「みんな冨樫にだまされてる !!」とか思ってしまうけれど──、おもしろい! どうしてこんな話が人間に書けるのか!

作者は神か悪魔か──、いや、犬だった。

コメント

  1. クロスケ より:

    いつも楽しく読ませていただいています。
    ちょっと今回、ん?と違和感を感じたところから考えたことをざっくばらんにですが、書かせて頂きます。
    最後のキルアのセリフ。「「お兄ちゃん」とオレを呼ぶのは本当のアルカ、「キルア」と呼ぶのは別のナニカ」。
    今回の「依頼」の話の中では、アルカは「お兄ちゃん」としか呼んでいないんですよね。
    しかし、前回と今回含めて「ナニカ(と呼ぶことにします)」が「お願い」するときは必ず「名前」を呼んでいます。前回までは執事だったので呼び捨てで名前を呼んでも違和感が無かったのですが、今回は見ず知らずであるはずの観光客のムーアでさえ「ムーア」と呼んでいて、ちょっと変だな、と。きっとこれが「お願い」とそれ以外を見分けるルールなのかな、と。
    どういう条件で、「アルカ」が「ナニカ」になって「お願い」が発動するのかわからないですが、今回までで、キルアはまだ「お願い」を聞いていないと解釈しました。
    「お兄ちゃん死んで」の後、一瞬間があったのは、キルアがアルカの自分に対する呼び方を確認している、という間なのかなぁと思いました。
    きっと次回は、「キルア」と呼ぶ「ナニカ」が出てくるのではないか、と期待しています。イルミの言うような最悪の事態にはならないと思うのですが、どんな方向へ話が向かっていくのか、本当に目が離せません。

  2. asiamoth より:

    クロスケさんへ:
    なるほど!
    「名前(本名)で呼ぶこと」が、「おねだり」の条件に含まれているのかもしれませんね。
    そこまではミルキも見抜けず、知らず知らずのうちに「ムーナ」と呼んでいた──と考えると、より面白い!
    ん? そうなると、今回は本当に「兄と妹との きゃっきゃうふふ話」だったのかな──。
    いや、キルアは「ナニカ」を呼び出す手段か条件を知っていて、その前の準備段階かもしれませんね。
    どちらにしても、続きが気になる!
    これで来週「ゴレイヌとビスケの『じつはオレたち つき合ってました!』」話だったら、暴動が起きるな……。オレ得ですけど。

  3. ハンターは良い!! より:

    こんばんわ。
    イルミがキルアについて詳しい理由の私的見解ですが、キルアがアルカの能力を使いたい理由をシルバに話したからではないでしょうか?
    前にイルミが「キルアが親父に直談判」って言ってましたし。
    で、シルバが「キルアがこんなこと言うんだけど~」ってイルミに相談したんじゃないですかね。笑
    ちなみにキルアが初めて父親に「この事」を相談したのはキルアが病院から出て行くシーンで携帯電話を持っていたのでその時ではないでしょうか。
    真実はお犬様にしかわかりませんが。笑

  4. asiamoth より:

    ハンターは良い!! さんへ:
    ああ、そうか、“時間軸は、かなり誤差がありそう”なんて自分で書いておいて、「その発想は なかったわ」です。イルミの“直談判”発言なんて、すっかり忘れていました。
    シルバとイルミって、仕事以外でも連絡を取り合っていそうですよね。とーちゃん、ほかに話し相手いなさそうだし……。

  5. 神崎 より:

    こんにちは^^
    少々私の意見を書かせていただきます。
    クロスケさんの意見はおいておいて、キルアが普通にアルカの「おねだり」を聞いたものだと仮定します。
    今回、アルカが2回「おねだり」をしたとのことですが、
    「死んで」と「しりとりしよう」の他に「お兄ちゃん、起きて」があるから3回なのではないでしょうか?
    だから「おねだりを3回聞いたら黒くなる」が適用されて「ナニカ」がでてきたのだと私は思っているのですが…
    まぁ、何はともあれ来週号が楽しみです^^

  6. asiamoth より:

    神崎さんへ:
    おお、これまた面白い新説ですね! なるほどなー。
    この問題は、「どこまでが『普通の会話』で、どこからが『おねだり』に当たるのか」が焦点ですね。
    最後のコマは「イメージ映像」だと自分は思っていたのですが──、もう「ナニカ」が登場していたのか!
    え? じゃあ、もう「お願い」ターイム突入で、次号あっさり「治ったーーーっ!(ドン!!!!」とゴン復帰なのかも。
    そしてイルミ・ヒソカの仲良しコンビは、事情を知らないままアルカに会ってしまい、「万単位で人が死ぬほどの『おねだり』」を聞くハメに──。
    それだとキルアもゴンもハンバーグなので、『H×H』は終了して、『魔法少女アルカ☆ナニカ』がスタートですね!