HUNTER×HUNTER No.330 「告白」 (週刊少年ジャンプ 2012 年 05・06 合併号)
「今後の展開で明かされそうな謎」を前回の感想で いくつか挙げました。今回の話のなかで、そのうちの 1 つだけが完全に謎解きされています。
HUNTER×HUNTER #329 「密偵」 三×参×散 | 亜細亜ノ蛾
「ゴンは元どおりになって助かるのか?
」と上の感想で書きましたが、肝心な謎を忘れていました。それは──、
多くの犠牲者が出ることに、キルアは耐えられるのか?
──この悩ましい問題が、アッサリと解決します!
正直なところ最初に読んだ時には、「また あと出しジャンケンかよ!」と思い、薄汚れた部屋の壁と「ジャンプ」をキスさせようかと思った。
しかし、すぐにトリックの仕組みに気がつく。最後には「やられた! ちくしょー!(満面の笑顔で)」と上質のミステリィを読んだ時のような気分に なりました。
おそらく宇宙の歴史のなかで、「だまされたい」という願望を持った生物は、食うに困らない近代の人間だけでしょうね。これからも上手に だまくらかして欲しい。
人形の末路
タイトルの「告白」と序盤を見ると、スケバンのイルミ姉さんが下のクラスで気になるキルアくんを裏山へ呼び出して「アタイ、アンタのことが──」という話みたいです。ねェよ。
あとで分かるけれど、この「針人間」たちは まったく不要だった。「友だちいない歴・イコール・実年齢」なイルミだから仕方がないけれど、そのためだけに奪われた人生って……。あわれな人形たちに、賀ッ正──もとい合掌しましょう。
そう言えばイルミの衣装って、「友だちだからヒソカとペア・ルックにした」のだったりして。
どちらかが悪魔
ナニカは恐ろしい人物だ──と決めつけていたことが、そもそもの間違いでした。作者に思考を操作されていたのです。
ゼニゼニ亡者ヤスハさんが引き起こした惨劇によって、「ナニカへの大きなお願いは必ず死人が出る」と思わされました。なにしろ何十人も死んでいる事実が ある以上、疑いようもない。
HUNTER×HUNTER #323 「依頼」 たびたび道連れ 情はなさげ | 亜細亜ノ蛾
No.323 「依頼」でのキルアの言動も、ナニカを恐れているかのように感じました。かわいい妹であるアルカとは区別して、ナニカのことを心の中で語っています。
しかし、ただたんに「ナニカは、キルアのことを『キルア』と呼ぶ」という確認だけだったという──。
久しぶりにアルカと対面した時にキルアの表情が こわばって見えたのも、シルバたちを意識していたからでした。ほかの家族たちにナニカの秘密を さぐられないようにしつつ、アルカを楽しませようと接する。なんとも悲しいミッションです。
悪魔はナニカではなく、彼女を利用する者だった。
でも言ってしまえば、編集の苦労と苦笑のあとが見られる破面 #十刃(エスパーダ) – Wikipedia と似たような展開ですよね。
- キルア(作者)
- 「誰が アルカは危険だと言った?」
- 読者(オレ)
- 「なん……だと……!?」
でも、こちらは「冨樫先生ステキ!(キャピ」と思えるのは なぜだろう? 自分が冨樫教の教徒だから──と言うだけではなく、見せ方の差だと思いたい。
最後のお願い
アルカ=ゾルディックとは (アルカゾルディックとは) [単語記事] – ニコニコ大百科
キルアが言う最後の秘密
(ルール)とは、「「お願い」は 出来なくても 「命令」は 出来る
」でしょうね。「リスクなしで願いが叶うとは思えない」と下の感想では書いたけれど、「命令」には それくらいの見返りがありそうです。
HUNTER×HUNTER #324 「執事」 友がいる向こうへ・届かない声 | 亜細亜ノ蛾
そして「命令」は、おそらくキルアにしかできない。イルミが それを知ったら、今回よりも一段と巧妙なワナを仕掛けるでしょう。
いや、もしかしたら、こんなルールかもしれない──。
- ルール XXX
- キルアと交わるごとにアルカは「お願い」を無制限で叶える
イルミ はやく しろっ!!! 間に合わなく なっても しらんぞーー ーーーーっ!!!
偏愛の果てに
キルアに対するイルミの愛情の深さは、これまでの展開からも明らかでした。自分の命と引き換えられるほど、冷静かつ熱狂的な愛に溺れている。
「オレが死んで 遺る家族が セーフなら それでも いいさ
」というイルミの心情を聞き、本当は なんて家族思いなんだ──と一瞬だけ信じかけました。なにか違うぞ。
欲望で肥え太るケダモノみたいなヒソカを見て、「ああ、またトガシが狂ってしまう!(目を輝かせながら)」などと喜んで心配してしまった。
おまわりさん、HENTAI は こいつらです!
- キキョウ: 熟女の行動をストーキング
- ツボネ: 生爪をはがすことに快感を覚える
- イルミ: 死んでも弟の心に残りたい
- キルア: いもうと大好き!
- アルカ: おにいちゃん溺愛・女装癖(?)
- ヒソカ: 存在のすべてが変態
シリアスなほど笑い
キルアがナニカへ「お願い」するページは、いくらでもセリフ改変コラが作れそう! このブログの品格(というかレーティング)的に載せられるレベルで考えたのは、こんな感じです。
兄との絆
イルミがナニカのことを「それ」と呼んだ時のキルアは、「私の頭の中の針」を取り出した回みたいでした。あるいは、ハンター試験の後半のようです。
今回のキルアは、なぜ泣き出したのか?
今度ナニカを“それ”呼ばわり してみろ
キサマを 兄貴と 思わない… !!
この訴えかけを逆に読むとキルアは、イルミのことをまだ兄弟として見ている。それは当然のことだ──と軽々しく考えている人はいませんか?
これまでの経緯を思い返してみてください。試験会場での一件・頭に針・アルカ始末計画──。もっと他人からは共感できないような ちっぽけな理由で、心の底から親兄弟を憎む人は多いでしょう。
「ナニカは 誰より 優しいよ
」
──そう語るキルアも心が美しい。
アルカとナニカ・ゴンは もちろんのこととして、キルアはイルミのことも思いやっているのだと思いました。実の兄が家族のことを「それ」扱いしていたら悲しい。どうして理解してくれないのか──と感極まった。
平等ではない命
──と美談を でっち上げたけれど、「癒し系の『お願い』」について、最初からイルミに説明しておけば良かったのでは? 「針人間」の犠牲になった人は もちろん、ゴトーの命だって助かったはずです。
昔からキルアには そういうところがある。
たとえば幼いころのキルアは、「『おねだり』を連続して 4 回 断わるとダメ」というルールを知ってはいたけれど、「2 人分のミンチ」ができあがってから親に説明した。「おいおーい早く言えよ!」とツッコミたくなる。
肉親以外の命については、キルアのなかで極端に扱いが軽くなっていますね。幼少時からキルアを大事に見守り、本人は肉親のように思っていたゴトーのことも、キルアには「執事の一人」でしかないのかな……。
「治す」際のルールをゾルディック家にて説明し、場合によっては「お願い」を使いつつキルアがシルバを説得すれば、被害は最小限だったはず。「それでは話にならない」けれど。
天へ昇る票
テラデインが本当の切れ者であれば、逆にヒソカを雇って上位の人間を始末すれば良かった。「清凜隊」を名乗って武闘派のブシドラを味方に付けていたのなら、それぐらい手を汚す道も あり得る。
けっきょく、テラデインは「お利口さん」すぎた。
ハンターを票の数でしか見ていなかったルーペであれば、上のような邪悪な計画を立てたかもしれません。しかし、もうテラデインが命ごと失脚した現在では、もう彼の出番はないでしょうね。
お笑いトリオ「清凜隊」は自滅して、モラウも海へ帰っていった(?)なか、レオリオが票数を伸ばしたことは驚きです! 「ジンを殴った」というだけで会長に推薦するハンターたちは、底抜けに脳天気だと思う。
彼女の思惑
これまでチードルが まったくの無策に見えるところも奇妙です。ミザイストムと対立しているのでなければ、彼と協力して票数を操作すれば良い。または、レオリオを誘惑する(ごくり……)という手もある。
今回のトリックを読んで思ったのは、
- チードル
- 「私が会長になりたいなんて 誰が言った?」
- 読者(オレ)
- 「えー」
──ということかもしれない。
No.319 「抽選」のときにチードルは、パリストンが 絶対有利
な抽選方法を避けようとしていました。感想では触れていなかったけれど、チードルがパリストンを会長にさせたくない気持ちは、誰が見ても明らかです。
HUNTER×HUNTER #319 「抽選」 つわものどもが夢の跡継ぎ | 亜細亜ノ蛾
しかし、どうもチードルとパリストンは、個人的に確執がありそうなんですよね。
「イヤよイヤよも『結婚して!』のうち」と昔から(2 秒前から)言うように、表面上は嫌っているようでいて(No.323 「依頼」)、チードルはパリストンを応援していそう。
もしかして、明らかに有利とは悟られない方法でパリストンに票を集める方法と時期を、チードルは さぐっているのかもしれない。
おわりに
以前に「密告者」の正体として、ネタ的にキキョウの名前を出しました。なぜ そこに目を付けられたのに、もうひとつの可能性を考えなかったのか!
HUNTER×HUNTER #326 「開戦」 愛する彼を故意に落とす方法 | 亜細亜ノ蛾
冨樫義博先生が描く謎は、いつも答えを聞くと「なーんだ」と思いますよね。これこそ、ものすごく良くできた問題の特徴です。答えを知って「はぁ!?」と思うことのなんと多いことか。
『HUNTER×HUNTER』という素晴らしい作品は「クイズ集」ではないため、先の展開を知っていても読むたびに心が震える。その感動があるから、こうやって電脳空間に感想を残しています。
今年の 1 月 1 日から、コミックス第 1 巻・第 1 話の感想を書き始めました。今年も がんばって更新し続けます!
コメント
キルアが、「ナニカは治療をお願いした場合は残酷なおねだりはしない」を隠していたのは、今回のようにいざというとき切れるカードをできるだけたくさんもっていたいからだと思いますよ。
永空さんへ:
それは そのとおりでしょうね!
でも、それなら車を落とされる前後にカードを切って欲しかったですね。
アルカの身に危険が迫った時点で「いざというとき」だと思う。
本文中にも書いてあるとおり、これ以上は無粋なことを言いたくないけれど……。
一つ前の記事ですが今さらコメントを書かせてもらいます。
私の考えですがキルアが「ナニカに治すお願いした後でナニカが残酷な見返りを求めたりはしない」ルールを今まで言わなかったのは、このルールを言わなくてもイルミがアルカを殺さない(アルカを家族だと認める)という考えになってほしかったからではないかと思いました。けどそれを諦めたのではないかと…。
イルミが「お前がお願いするそれは家族じゃないからね」と言った後、キルアが涙を流しこのルールのことを話しだしたこと、キルアの「今度ナニカを~兄貴と思わない…!!」のシーンが上の考えになった理由です。
結果、イルミがアルカを家族だと認めることは無かったですが殺されずには済みました。(キルア的には不本意でしょうが)
これは余談ですが、もしゴンならこの状況をどう打開したのか、ナニカへのお願いを「ツボネの左手を治してくれ」ではなく「イルミ(ゾルディック家全員)がアルカのことを家族と認るようにしろ」なんてお願いをしていたらどうなったのかが気になりました。笑
ハンターは良い!! さんへ:
貴重なご意見をありがとうございます!
> 「それでは話にならない」けれど
という最後の「オチ」を読んで気がついて欲しいのですが、自分としては「ヤボなツッコミを入れているので笑ってください」という意味で書いています。
結果的に「最初から治療のルールを言っていればゴトーは死ななかったかもしれない」けど、「それを言ったらマンガにならないよね」と。
もっと分かりやすくなるように努力します!