『ジョジョリオン』 volume 2 「東方定助という名前」
第 2 巻も最高に おもしろかった! 荒木先生お得意の「どこかズレたギャグ」も、ズレたままで調子が良い!
そして、今までの荒木作品に やや欠けていた部分まで補完されています。『ジョジョの奇妙な冒険』のシリーズ 8 作目に当たる本作品だから、「能力バトルもの」に分類されそうなのですが──、
なんと! この巻では『To LOVEる ダークネス』と張り合うくらいのセクシィな場面が見どころです!
16 世紀から活躍されている荒木飛呂彦先生が、さらなる進化を遂げようとしている……!
(「週刊少年ジャンプ」に連載の『ストーンオーシャン』 第 1 話で女性のオナ■ー描いていたけどね)
Reviewer: あじもす @asiamoth,
第 1 巻の感想と同様に、長々と書きますよ──。
ジョジョリオン 1 巻 「ようこそ 杜王町へ」 – 珠玉の体験に濡れる! | 亜細亜ノ蛾
#006 ソフト & ウェット その 5
上から落ちてきた男が「吉良吉影」(きら よしかげ)なのか? ──という引きで前巻は終わっていました。ヘビの 解毒剤
などの証拠が次々と出てきたのに、男は わけの分からないことばかり言う。
主人公と男との やり取りは、「視点の妙」という感じで、ミステリィ小説風に楽しめました。
2 階にいた男──笹目桜二郎(ささめ おうじろう)の側から見れば理に沿った行動なのですが、主人公側から見ると意味不明で「快楽殺人者」みたいに思える。
笹目のスタンドである「ファン・ファン・ファン
」は、ものすごく限定された条件で発動する能力だけれど、型に はまれば常人には逃げられない。
この能力を使って遊んでいる
姿は おぞましく、とても「善人」とは言えませんね。お仕置きされて当然の男です。
ようやく吉良吉影の顔と職業(船医)が明かされました。ただし、情報を知れば知るほど吉良は遠くなっていく──。
主人公の正体も、より一段と謎に包まれました。
「ジョースケ」という名の犬に似ているから──という理由だけで「東方定助」(ひがしがた じょうすけ・第 4 部の主人公である東方仗助と同じ読み)と名づけられたけれど、いまだに本名は不明です。
こうなると──よりによって一番ハッキリとしている事実は、「2×2 の「タマ」があった
」ですよ! まさか この 1 点(いや「4 玉」)が重要になるとは思わなかった!
てっきり、荒木先生が寝起きに洋雑誌でも読みながらコーヒーを飲んでいる時に、「──主役にタマ 4 つあったら笑えね?」と発想しただけの、いつもの「知らぬ間に消えているオモシロ設定」かと思っていましたよ!
この分だと主人公の「オレェ?」という口癖や「すきっ歯」にも、かなり重要な意味が隠されているに違いない……!(たぶん こっちは思いつき設定だろうね)
そして、ラストに少年たちがゴミ箱の中に見たモノとは!? オマえたちが なンでコんなに驚いているのか、真実を正確に描き写すんだッーーー!
ということで、コミックスの描き下ろし特典として少年たちが見た桃源郷が──ありませんでした(当然)。
#007 定助 東方家へ行く
冒頭から大笑いしました!
常秀の父親は、東方憲助(ひがしかた のりすけ)という名前です。話に出てくる彼の曽祖父とは、明らかに『スティール・ボール・ラン』(『SBR』)に登場したノリスケ・ヒガシカタのことでしょう。
お父ちゃんも おじいちゃんと一緒で、豪快な良いキャラしていますね! 愉快な人だな──と思っていました、この時は……。
「東方家は 社会奉仕をして この国と地域に 恩返しをしたい
」という言葉は立派です。ただし、善意あふれる言葉を語る者が、つねに善人とは限らない──。
恋敵と一緒に住むなんて、普通であれば耐えられないでしょう。追い出そうと画策したくなる。ところが常秀は、定助の名前についてイヤミを言うだけです。優しいのか、度胸がないのか……。
「ドキュン 危機一髪
」という言い方は、語感が良くて おもしろいですね。DQN ネーム(ドキュン・ネーム)からの発想でしょう。──東方家のほうが おもしろい名前だらけですケド。
モデルをしている長女の鳩(はと)の登場は、ものすごくベタな笑いを取りに来ました。右のページとの温度差と、荒木先生のリアルな絵のおかげで、面白味が増している。
『SBR』の後半から使われ始めた「筆ペンでレンズのボケを表現」が、さらに良い味を出していますね!
憲助と常秀は、父と息子の関係と言うよりは、「いじめっ子と いじめられっ子」みたいです。父親のわりには妙に定助をひいきしていて、実の息子に厳しすぎる。
常秀の態度からすると、定助が来るまでは普通に接していたらしい。それに常秀は、父親のことが好きみたいですね。だから暴力で従えている感じでも ありません。「言いつけ
」を絶対に守らせる父親も一般的と言える。
しかし──なにかが異常に見えますね……。長男の常敏(じょうびん)の存在も異様に思える。
二女の大弥(だいや)が、父親に呼ばれて(なぜか)定助に抱きつく──直前のコマが最高に笑えました! 集中線付きで勢いよく飛んでいるから、つまりは「なっ!? 座ったままの姿勢! 膝だけであんな跳躍を ! 何者!?
」ですよ!
自分は昔から、不思議と「勢いよく近寄ってくる女の子」を好きになります。だから この場面だけで、大弥に心引かれていました。
というか、巨ny ──胸が豊かな 16 歳の女の子に いきなり抱きつかれて、「スリ スリ
」とか「ウニ ウニ
」されたら、誰でも惚れてしまいますよ!
第 1 巻の康穂と同様に、大弥も定助が「あたって る
」と感じたに違いない!(いきなりすぎるから萎縮したかも)
目が不自由な年頃の娘さんの世話をするなんて、大変だけれど やり甲斐がありますね。危なっかしい手つきでお茶の用意をされたら、定助じゃなくても手伝いたくなってくる。自分が代わってあげたい!
ところが大弥は、「気を遣わせること」に かけては天下一品であった──。そもそも彼女が近くに居るだけで、「自然体
」では いられませんよ!
家政婦らしからぬ帽子(学生帽?)の虹村さん(にじむら)が康穂に伝えた言葉は、本当に憲助からの伝言なのだろうか? 彼女が勝手に康穂を遠ざけようとしたのでは?
──と思わせるくらい、虹村さんの目は邪悪に染まっている。そのあとの展開を見ると、本当は父親のほうがドス黒そうですけどね。いや、彼も虹村さんに操られているのでは?
カリフォルニア・キング・ベッド その 1
いきなり大弥の足が負傷ッ!? なんだってぇー!!
──という荒木飛呂彦先生の十八番である「だからアレは なんだったんだ表現」が出ました。大弥の能力から考えて、本当に足をケガしたのでも幻覚を見せたのでもないはず。
おそらく荒木先生に質問しても、「ああ、そんなのあったね
」と天使のような笑顔で返されるに違いない。
そんな小さなことよりも(小さいか!?)、大弥をいたわるために、彼女を抱きしめたり裏返したりする定助には「ぼくは敬意を表するッ!」 大弥ちゃん、感じすぎ・イヤラシすぎです!
本編のなかで登場人物が「スタンド」と口にしたのは、今回の大弥が初めてです。影を「踏まれる」ことで不利になる能力は『幽☆遊☆白書』などでも出てきましたが、影を「踏ませる」ことで有利になる(記憶が取り戻せる)アイデアは おもしろい!
大弥のスタンド能力である「カリフォルニア・キング・ベッドちゃん
」(ちゃん付き!)は、リアナ (Rihanna) という歌手が歌う曲名と ほぼ一致しますが、例によって深い関連はないと思う。
定助のスタンド能力のことを、なぜか大弥は知っていました。誰から そのことを聞いたのだろう?
まず、写真でしか定助の「シャボン玉」を見られないし、むやみに公言するはずも ないから、康穂では ないでしょう。
自分は常秀が父親や大弥に伝えたと思いました。「歯型」を付けられたことで常秀もスタンドを使えるようになり、それで定助の「ソフト & ウェット」が見えるようになったのでは?
いずれにせよ、だんだんと本性を現わし始めて「大弥、おそろしい子……!」という不気味な表現で大弥が描かれています。──が、自分の目には どんどんキュートに映ります。彼女になら何もかも奪われたい……!
大弥のタチの悪さは、彼女が定助を苦しめようとしているのではなく、「好きだから思い出を共有したい」という純粋さに あります。
真の「幸せ」
や本当の 「幸せ」
を心から願う大弥は、まるで『ストーンオーシャン』のラスボスみたい。彼女こそが最強・最後の敵であり、真の邪悪なのかーーーッ !? (むしろ そうであって欲しい)
「名前などの記憶も大弥に奪われていた」と定助は考えている。これまでの情報からすると、たしかに大弥が怪しい。彼女が犯人であれば、一気に解決するかもしれませんが……。
「女の子の着替えを手伝う」・そして「部屋の明かりを消す」という場面なのに、何という緊張感でしょうか。見ている こちらまで「生唾ゴックン」です(違う意味じゃない?)。
定助の移動した足音ですら聞き取れる大弥は、スイッチ音がしていないのに照明が消えたことを疑っています。ということは、すでに定助のスタンド能力の本質を大弥は知っている可能性が高い。いつ知ったのだろう?
ところで定助は「足音を消す」ほうが良かったですね。
康穂の母親・広瀬鈴世(ひろせ すずよ)にまで、東方家の闇が届いているのか──と思わせる場面でしたが、たんに酒で酔いつぶれていたのか。
しかし、自堕落な母の姿は、康穂にとっては暴力を受けることと同じくらい つらかったでしょう。
DNA の検査結果から想像すると、「殺人鬼・吉良吉影が逃げるために定助の体を利用したのでは」という仮説を思いつきました。でも、第 4 部と似た感じになってしまうかな。
吉良の遺体を警察は普通に回収していたから、すくなくとも現在の彼は、犯罪者としては追われていない。スタンド能力者が吉良を追っていたのでは?
吉良の手に付いていた「印」も気になります。単純に「東方家の 2 階には(本物の?)吉良が居る」と考えましたが、その意味は分からない──。
カリフォルニア・キング・ベッド その 2
大弥の りりしい表情にスタイリッシュな格好(「ジョジョ立ち」)と、「カリフォルニア──」のコミカルな造形が、絶妙に不釣り合いで楽しい。
『SBR』からの お気に入りである「クマちゃんの ぬいぐるみ」と言い、近年の荒木先生は「かわいらしい物」の表現も開花されています。
第 6 部の空条徐倫(くうじょう ジョリーン)などに感じた「セクシィだけど──怖い」という印象も、『ジョジョリオン』では完全に昇華されている。
ご本人と同様に作品も若返っているかのようですね!
この「影踏み」は、本来であれば絶対的に大弥が不利です。なぜなら、ドアから離れたことを定助に確認しているから、カーペットの上を歩く足音は聞こえていないはず。
それとも大弥の演技なのか?
シャボン玉が はじけた方向へ目を向けながら、大弥は『カリフォルニア──』を背後に出しています。そこから考えると──、
大弥はスタンドを通せば「目が見える」のでは?
第 3 部に登場したポルナレフのスタンド・「シルバーチャリオッツ」のように、近距離タイプの大半はスタンド自体に視界が ないけれど──、それも荒木先生の さじ加減ひとつですからね。
日が暮れない うちに
大弥が買い物へ行きたがる点も気になる。第 5 部の「ブラック・サバス」みたいに、夜の闇は「すべてが影」の扱いになるのかな? それだと夜には大弥は一歩も歩けなくなる……。
そんなことより、着替え中の大弥が完全に「女の顔」をしていてエロすぎる! 定助は部屋から追い出されたのに、読者サービス満点ですね! 荒木先生、一生ついていきます!!
荒木作品史上でも最高に性的すぎる大弥ちゃんのせいで、「倒せるのか ……
」と焦っている定助が別の意味に思えました。
ぜひとも(押し)倒してくれッ! 定助ェェ!
「康穂の記憶」と戯れる大弥が、無邪気に邪悪で愛らしかった! 月刊ペースのおかげで ゆったりとページを使えるから、大きなコマで大弥を描いていて素晴らしい!
なにも覚えていない世界で、たった ひとり助けてくれた康穂のことすら忘れて、康穂よりも「大きい
」大弥に迫られたら……(ごくり……)。
定助の活躍に期待が かかる場面でしたが──、「寸前のところ」で憲助が帰ってくるという安心のラブコメ展開!
それなのに、「いいぞォォォ
もっとやれェェ~~~~ッ
」て! なんという父親なのでしょうか!(握手を求めながら)
このまま「定助と大弥が結ばれて幸せになりましたとさ」──で何の不都合があるのか、真剣に悩みました。むしろ「シャボン玉ァァァッ! てめェェーーーッ!」とか恨んでしまう。
ただ、やはり憲助の目的が問題で、今後の焦点になってきそうです。大弥の能力を完全に理解して利用しているから、「スタンド能力者を集めること」が憲助の目的かもしれません。
あるいは、2 階の住人のために動いているのか──。
おわりに
そう言えば第 1 話の感想で、セリフの中に人物の顔を入れる「アイコン表現」は誰が考えたのか──という疑問を書きました。
ジョジョリオン 1 巻 「ようこそ 杜王町へ」 – 珠玉の体験に濡れる! | 亜細亜ノ蛾
何の気なしに読み返した『ドラえもん』 第 1 巻の第 1 話で、ジャンアンとジャイ子を表わす時に「アイコン表現」が使われています。これが元祖かは分からないけれど、すくなくとも 1969 年には存在していました。
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また、『ジョジョリオン』の裏テーマは「セクシャル」(性的)だ
──とも前回に書きました。大弥さんの おかげで力強く主張できます!
さらに、「奪う」も裏テーマの 1 つに追加したい。東方定助・笹目桜二郎・東方大弥──全員のスタンドが「何かを奪う能力」を持っています。これは偶然ではないでしょう。
裏テーマをさらに裏返せば「与える」になるけれど、この作品では「取り戻す」が主題だと思いたい。
「愛は与えるもの、恋は奪うもの」などと言うけれど──、とんでもない! 愛も恋も、奪い・奪われるモノです! 人と人との交流とは、お互いに大小の傷を付けあう行為である。
定助と康穂は、誰から何を奪うべきなのか──。