HUNTER×HUNTER 18 巻 「邂逅」 2 – 栄誉と栄養価

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『HUNTER×HUNTER(ハンター×ハンター)』 No.18 「邂逅」

mudskipper vs the fiddler crab - part 1
食うか食われるか──それが問題だ

とうとう「グリードアイランド編」の最後が描かれました。カードを集める おもしろさと、呪文カードを使う戦略性、格闘での戦い──と楽しさが満載のシリーズでしたよね! それだけに、終わることが悲しい……。

ただ、続けて「真・グリードアイランド編」とか「帰ってきた──」なんてダラダラ引き延ばしたりするよりは良かった。スパッと新しい話に切り替えるところが、じつに冨樫義博先生らしい!

ところが、始まった新シリーズには──あまり興味が持てなかった。「ワクワクする出だし」では なかったからです。おそらく意図的に そう演出しているのでしょう。──オレたちの戦いは これからだ!

No.182 「三つ巴の攻防 13」

おそらく『グリードアイランド』史上初の「大天使の息吹」を使用した場面は、『HUNTER×HUNTER』が始まって以来のメルヘンチックな絵柄です。向かい合う乙女と天使は、それぞれ美しい!

──「つか 出来れば 悪いトコ全部 治して もらえる?」という品のないセリフで台なしですけれど。

ゴン
「キルアさん ビスケさん 今まで身勝手な言動ばかりで 誠に申し訳ありませんでした」
キルア・ビスケ
「性格まで直ってる!?」

わらわに 何を望む?」と大天使は聞いていますが、彼女に できることは『Wizardry』で言えば「MADI」──つまりは全回復しかできない はずですよね。でも、ムードを盛り上げるにはピッタリのセリフです。

複製」(クローン)を使おうとするビスケが一番かわいかった! 今まで呪文カードには おっかなびっくりだった彼女が、もう慣れてきたからノリノリです。それだけに、「クローン」失敗の衝撃が大きくて、あわてる姿も かわいらしい。

この一連のビスケの様子は、『バクマン。』のカヤに似ています。彼女は元気かな──(遠い目)。


乙女の心をかき乱した殿方は、やはりゴレイヌでした!

引き換え券」を増やしておいたなんて、(なぜか)ツェズゲラたちですら思いつかなかった行動です。一つ星ハンター以上の働きをするゴレイヌ神は すごい!

しかも、ツェズゲラから重要な仕事を任された上に、ゴンたちの成功の報酬も もらい受けている。自分がゴレイヌの立場だったら、ツェズゲラもゴンたちも だまして大金を手に入れて逃げるところです。

今後もゴレイヌ神のことは、「ボールを顔面に受けただけで 10 億を稼いだ男」としてハンター史上に語り継がれるべきですね! ヒソカの専売特許だった「わさ?」まで使いこなしているし。


ゴレイヌと「爆弾魔」との接点は なかったけれど、正義の味方である彼には「プレイヤー殺し」は許せないでしょうね。

そのゴレイヌに対して、キルアの正直すぎる告白は、いまの状況ではトレードが不利になるだけです。交渉が上手なキルアにしては、なんだか感情的すぎる。

──そう、この場面のテーマが まさに「理屈よりも感情が優先する」でしたね。

キルアが大量に人の命を奪ってきたことを聞いても、すこし驚いた程度でゴレイヌは持論を曲げない。それも自身の感情を信じたからでした。そして──。

このことが正しいかどうかは、読者が決めることです。


キルア・ビスケ・ゴンは、それぞれ違う視点を持っているけれど、ゲンスルーたちに対する結論は同じでした。これは「正々堂々」とは また異なる考え方です。「正義」でもない。

言うならば「仲間意識」でしょうね。

ゲンスルーたちとは あくまでも敵対関係にあるし、大量殺人犯である彼らは許せない。ただ、それでも同じゲームの舞台で戦ってきた者同士として、仲間にも似た感情が芽生えたのだと思う。

また、他人に対しては非情に見えるゲンスルーは、バラのことをずっと気づかっています(サブ「……」)。「爆弾魔」も幻影旅団も、仲間に対してだけは心優しい。

ゴンはノブナガに「他人も思いやれ」と憤っていたけれど、誰でも身内だけを大切にすると思う。ゴンだって、「赤の他人とキルア」の どちらかだけを救える状況が来たら、必ずキルアの方向へ向かうはず。

それもまた、理屈じゃなくて感情で決めることです。


ヤボを承知でツッコミを入れると──、この回ではビスケとゴンが「大天使の息吹」を手に持っていました。このなんと言うことのない描写が、自分には非常に気になる。

ゴンは絵でハッキリと「聖騎士の首飾り」を首に巻いているし、前回までを見るとビスケも どこかに身につけているはずです(彼女は外した可能性あり)。それなのに、「大天使」は 1 枚も「複製」を解除されていない。

──ということは、「大天使」は すべてがオリジナルだったのだろうか? ビスケがゴンに渡した予備の「大天使」は、「クローン」なのでは……。

あと、「引き換え券」を「複製」して、これが「大天使の息吹」になった場合は、オリジナル扱いになるのかな? それとも「クローン」なのか? ──この状況にはゴレイヌの「大天使」が該当し、ゴンが普通に持っているから前者のはず。

さらに、ツェズゲラから託されたカードも、すべてゴンが手にしています。もちろん、しっかりと「聖騎士の首飾り」を装備しながら──。

さすが一つ星ハンターだけあって、ツェズゲラ先生は すべてオリジナルでカードを 90 枚以上も集めたのか! すげェ!

──このように話が ややこしくなるだけだから、「聖騎士の首飾り」は「贋作」(フェイク)だけを見破るアイテムにするべきでしたね! →冨樫先生

No.183 「三つ巴の攻防 14」

ゴン組のところへ飛んできたプレイヤーは、いかにも二流以下な感じです。ただ、彼らでも力を合わせればクイズで 1 位を取る可能性が ありました。

キルアは 25 億の取引を了承しているけれど、ゴレイヌから受け取る(キルアとゴンの)取り分でも足りません。ほかのプレイヤが 1 位になっていたら、どうするつもりなんだろう?

たんなる口約束だし、いざとなれば「強奪」(ロブ)や力尽くで──ということかな。

肝心のクイズで No.001 「一坪の密林」の出題は、「宝籤」(ロトリー)で当てられたから、誰も長老の名前なんて知らないでしょう。かわいそうな長老だよな……。そんな不発イベントも多かったと思う。


ちゃっかりと「命の音」(カウントダウン)を解除するアベンガネが笑えます。しかもバインダーを出しているから、クイズでの 1 位も目指している。どこまでも抜け目のない男です。

そう言えばアベンガネは、「ハメ組」への参加を決めた時にも、報酬で心が動いていました。金で動くところはプロですね。良いキャラだから彼にも再登場して欲しい!


No.000 「支配者の祝福」を手に入れるための最重要アイテム・No.110 「支配者からの招待」を、普通のフクロウ(のような鳥)が持ってきた点が疑問でした。

ヒソカの「伸縮自在の愛」(バンジーガム)なら もちろん、普通の弓矢でも鳥を捕獲できるのでは? クイズの正解者にしか No.110 は使えない可能性が高いけれど、ゴンたちを相手に何十億という取引に使う手もある。

ここに来て ようやく話に絡んできたベラム兄弟であれば、上の悪だくみを考えたでしょうね。彼らは、途中から「全部カードをそろえたプレイヤーから奪おう」という作戦だったはず。しかし、登場の時期が悪くて一瞬で退場!


城下町・リーメイロにある「グリードアイランド城」で出迎えてくれた人物は、この城に よく似合っている上品な人物です。しかし──。

No.184 「3 枚の選択」

前回のラストで見たような城の豪華さが──すべて台なしになるようなゴミ部屋です。これでは まるで──冨樫先生じゃないか!

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ドゥーンが無造作に放り投げたせいで、せっかくの No.000 「支配者の祝福」と特殊なバインダーが、なんの ありがたみもありませんね。

リストはサラッと語っているけれど、11 人で無人島に「国」を作るなんて、とてつもない話だと思う。これもジンの権力と財力が あったからでしょうね。

しかも、ドゥーンを強引に改名させた話からして、グリードアイランドを国(独立した島)として運営させるために、ジンは正式に許可を取った可能性が高い。──「どこが」許可したのかは不明ですが。

No.000 を「現実世界」へ持ち帰って「ゲイン」で出したら、その土地ごと自分の持ち物に なるのか疑問でした。上の考えからすると、本当に そこまで面倒を見てくれるかも。


パーティでビスケが歌っている場面は、条件反射で「ボエ~~~♪」とジャイアンの歌声を想像しました。昨日の感想でも彼女のジャイアニズムを感じましたからね。

そんな(どんな?)ビスケは、クリア報酬に「ブループラネット」を選んでいます。それは当初からの予定だから当然かもしれませんが──。

なぜ、ビスケは「若返り薬」を島で使わなかったのか。

グリードアイランドが現実にあり、「大天使の息吹」で実際の大ケガを治せると分かったのだから、若返りも実年齢に対して有効だと思われます。

ビスケの性格からすると、ゴンとキルアの意見も聞かずに、「魔女の若返り薬」を手に入れた時点で飲みそうなのに、なぜ考えもしなかったのだろう? 「数字で呼び合いし者ども」も同じようなことを考えていました。

HUNTER×HUNTER× 【ハンタ】ゲーム内でビスケが若返り薬を使わなかった理由

No.185 「邂逅」

エレナは「ゲームのキャラ」ではなく、制作者の 1 人だと分かった今では、10 年以上も ずっと密室で孤独に過ごしていたのだろうか──と気になります。腰を痛めそう(それだけ!?)。

ゴンが「現実世界」へ持ち帰るカードは何か──。連載中は一週間ずっと考え続けました。その時の自分の考えは忘れたけれど、リスキーダイス絡みだった気がする。

キルアが言った「きまぐれ魔人と リスキーダイスの コンボ」は おもしろい! 自分にリスクさえなければ試してみたいですよね。ということは、もしも この話をイルミが聞いていたら──。

自分には宝石を欲しがる気持ちが何一つとして分からないから、「ブループラネット」を手にしたビスケが狂喜している気持ちは共感できません。どう考えても「魔女の若返り薬」のほうが良かったと思う。


ゴンが選んだ組み合わせの「聖騎士の首飾り」と「一坪の海岸線」なんて、まったく考えもしなかった。連載中に当てられた人はいるのでしょうかね?

今までの展開で すべてヒントが出ていた点も心憎い!

「聖騎士の首飾り」を使ったコンボは何度も出てきたし、「ニッグ」も違和感を持てたはずです。「なんのためにグリードアイランドへゴンは来たのか」を考えれば、正解を導けました。完全に脱帽ですね。

そして、2 番目にゴレイヌが来たからこそ、ゴンも確信が持てたわけです。やっぱりゴレイヌ唯一神が「グリードアイランド編」の真の主人公ですね!

赤ん坊のゴンをジンがグリードアイランドへ連れてきたのだとすると、ひょっとしたらゲームを制作した 11 人のなかにゴンの母親が いるのでは? 「ゴン君」なんて言っているエレナは違うと思うけれど、イータだったら楽しい。

ところで、ゴンは「同行」(アカンパニー)のカードを手にしたまま話をしているけれど、1 分間が過ぎたら「ボン!」と消滅したりして。


感動の涙を流すビスケがキュートです! 「年だわね」なんてセリフが似合わない容姿と動作ですね。実年齢さえ隠しておいてくれたら良かったのに……。

今ごろ気がついたけれど、ヒソカと分かれた時には元どおりだったビスケのスカートが、この巻では ずっと破れたままでした。一張羅なのか念能力で作り出しているのか、けっきょく分からない。

HUNTER×HUNTER 17 巻 「三つ巴の攻防」 1 – 離れない愛の快勝 | 亜細亜ノ蛾

またビスケは登場してくれるのかな──。


まるで桜のような木の下で釣りをしていた人物は──カイトでした! ここまで苦労してジンに会えなかったなんて、ものすごくゴンが かわいそう。

「アカンパニー」ではジンが会わなかった理由も ひねくれています。そうとうジンは性格が曲がっていますね! 子の顔が見てみたい! (ん?)

ただ、「同行」だからカイトにも再会できたし、キルアも紹介できました。結果的には良かったかな。それに、ゴンが意地を張らなければ、カイトからジンの情報も聞けました。そこまでジンは先読みしたのかも。

エレナの回想シーンに出てくるジンは、今にもロールプレイング・ゲームの「勇者」みたいだし、顔もハンサムで格好いいけれど、これは彼女の「思い出補正」かもしれませんね。現在のジンは──どんな感じだろう?

No.186 「女王」

なんとも不気味な「怪物」の女王が漂着して、新シリーズが始まります! この宇宙人のような「虫」の産み出す物語が、まさか あんなにも長く続く感動作になるとは──連載時は想像できませんでした。

──正直に言うと、「グリードアイランド編」の後半が最高に おもしろかったから、どうしても今回の話が見劣りしてしまう。

ノンビリとしたゴンたちの話と、怪物の食事との関係も見えてこないし、「こりゃ 20 週くらいで終わるシリーズだな」なんて この週は思っていました。

ところが──。


今日のカイトは、夕飯の材料を調達する係だったようです。彼も一流のハンターのはずですが──、山菜やキノコを集めている姿が妙に似合う。

言葉使いも態度も ぶっきらぼうで いかにも「男らしい」のに、長髪と服装のせいか、カイトは女性っぽくも見えるからです。もしかして──。

カイトの仲間である 6 人のアマチュア・ハンターたちは服装がバラバラで、半袖で汗をかいている人もいれば、モアモアした長袖もいる。カキン国は、暑いのか寒いのか──。と言うか、全員が森を探索する格好じゃないですよね。

不思議なことに、「スピン」ことスピーナ・クロウしか、自分には覚えられません(いつものこと)。この回では目元のメイクが濃すぎる(キャラが固まっていない)けれど、次回から良い表情が増えてきます!

スピンの格好がカイトとカブっている点も気になりました。カイトは昔から同じような服装だから、スピンが真似ている可能性が高い。尊敬しているのでしょうね。

いいハンターは 動物に 好かれちまう

そして いい仲間に 恵まれる

──それはカイトにもキルアも当てはまります。


さて、カイトのいた場所がカキン国の 奥地であることと、「ヨークシンか… 遠いな」というセリフは、あまりにも何げなく書かれていますね。おなじみの世界地図を見ると──、なるほど、たしかに遠い。

このページは、ずっと先で見返すことになるでしょう。

No.187 「最高の餌」

カイトたちを雇った役人の対応は、じつに気が利いていますね! いわゆる「お役人仕事」で高い賃金を得ている人たちとは人種が違う。

そして女王が兵たちを産んで、やっと こちらも話が動き出しました。カニ・魚・コウモリの姿をした兵を見ただけで、「食べた食料によって産まれてくる兵が異なる」と分かる。その画力は素晴らしいけれど──、

不吉な予感しかしない……。


冨樫先生は、いつも同時進行の話の描き方が上手です。

下手な作家が描くと、何が何やら分からないままに、読者を置いてきぼりにして勝手に話が進む。また、場面が変わったか どうかも分かりにくい。マンガの おもしろさを味わう前に、ノートにでも状況を整理しないと読めなかったりする。

冨樫先生の場合は、どこで誰が何をしていて、それらが どうやって 1 つの話に繋がるのか──がスパッと頭に入ってきます。下ごしらえをしっかりしてある料理みたいな感じで、素材の持ち味を生かしながら、純粋に食事を楽しめる。

この回で例を挙げると──、サザンピースは すでに登場した場所だからアッサリと描いてあるのに対して、「足」の見つかった場所は初登場だから移動に 1 ページ分も使っています。一方で女王の居場所は不明にするため、まるで説明がない。

──これって、マンガ以外の映画でも小説でも常識中の常識で、「枠線の引き方」レベルの技術なのですが、天下の「ジャンプ」連載陣でも守られていなかったりする。やれやれ。


キメラアント」の女王が行なう「摂取交配」は、『レベル E』でも同じような種族の話が登場していました。ある意味では『幽☆遊☆白書』の「魔族大隔世」も似た概念です。

「他種族を取り込む生物」と「ゲームの世界に入る」は、冨樫先生の好きな設定なのでしょうね。『H×H』では、両方の話を徹底的に描きました。

映画の監督が、似たような作品を積み重ねながら「世界の巨匠」と呼ばれるまでになった──というエピソードに似ています。


これまでの展開でも命を落とした人物は多かったけれど、ここで初めて幼い子どもが犠牲に なりました。冨樫先生も父親なんですけどね……。ただ、自身の身の回りと創作とを、完全に別物として扱う姿勢は素晴らしい。

この場面を読み返すたびに、「(旧 TV アニメ版)『新世紀エヴァンゲリオン』では子どもを殺さないでくれ」と(たしかキングの大月さんから)制作者が言われていた話を思い出しました。

──それは当然ですよね、視聴者には子どもが多いし、彼らの親だって観ています。何が悲しくて「楽しいロボット・アニメ」で子どもの死を見なければ ならないのか(「2 人目の■■」は?)。

ところが、自分が愛する『寄生獣』だって描かなかった場面を、「週刊少年ジャンプ」で冨樫先生はヤってしまった……。

レイナと兄の 2 人が──「最高の餌」なんて扱いに ならなくても、話の進行には問題が なかったはずです。すくなくとも、ハッキリとは見せない描き方が あったと思う。

それでも作者は描いたのだから、そこには何らかの意志が宿っている──と信じています。