『HUNTER×HUNTER(ハンター×ハンター)』 No.19 「NGL」
第 1 話から繰り返し読み続けているため、すべてのページ・全部のコマが頭に入っています。むしろ昔の自分の顔写真のほうが「こんなんだっけ!?」と驚いたりする。
とくに この巻には、忘れられない場面が いくつも出てきました。最後のページと「アレ」は強烈だったなぁ……。
絵的な衝撃だけではなく、話も するどい。次から次へと絶望が襲いかかってきます。まるで子どもに「太陽は どれくらい大きいのか」を教えるかのように、ていねいに一つ一つ希望を潰してくれました。
あとは神(作者)の手のひらで転がされるだけ──。
Yahoo! ショッピング: HUNTER×HUNTER 19
Reviewer: あじもす @asiamoth,
本編では どこにも笑える場面がないのに、自身のファンである阪神タイガースのユニフォームを着た登場人物を平然と描く冨樫義博先生は、ホンマに悪魔──いや神やでェ!
No.194 「VS ハギャ隊 1」
「気狂いピエロ
」(クレイジースロット)は、カイトの意志とは無関係で勝手に しゃべる
上に、出る武器を自分で 選べない
。今までで一番の不便な能力にしか思えません。
キルアと違って、カイトはギャンブル好きでは なさそうだし、慎重な彼の性格と能力が合っていない。どうして こうなった……。この能力を教えた先生の顔が見てみたいですね! 誰だろう?
ところで、この能力名は映画・『気狂いピエロ』が原案ですね。これからも作品名からの引用が増えてきます。そこから作者の好みを読み解くことも楽しい!
カボチャ・パンツが かわいらしい女性型のキメラアントは、初めて帽子を見た時には、ポムポムプリンかと思いました。よく見ると あまり似ていないけれど、自分は「プリン」という名前あたりと予想したものです。当たらずも遠からず──。
彼女(?)は、何の生物が元になっているのだろう?
もう一体いる部下も、現時点では元の生き物が分かりません。せいぜい、昆虫型かな──と思うくらい。なんとなく、作者のほうでも固まっていないのでは──というスリルを感じます。
キメラアントの女王は、ほかの生物が産むのだと分かりました。現・女王は、どんな生物から生まれたのだろう?
女王自身は、人間の血は薄くしか感じていない。普通に魔獣などが暮らしている世界だから、われわれが知らない「人間よりも美味しい」生き物がいるのかもしれません。世界は広い──。
天空闘技場の 200 階クラスにいた闘士たちは、「洗礼」を受けて念能力を身につけました。あの時は「そんな修得方法もある」程度の「使い捨て設定」だと思ったのに、まさか こんな形で生かしてくるとは……!
HUNTER×HUNTER 7 巻 「これから」 1 – 攫う×習う×繋ぐ | 亜細亜ノ蛾
念を込めた攻撃を食らって、それでも無事に耐えられる人間は少数だから、キメラアントならではの方法でしょうね。これが ほかのマンガだったら、人間もどんどん「洗礼」して戦士を作り出して「インフレ化」したりするはず。
No.195 「VS ハギャ隊 2」
余裕を見せてベラベラしゃべる敵は、「ジャンプ」でも毎週のように(アレとソレで)見かけます。「いかに自分(たち)が優れているか」をダラダラと戦闘中に くっちゃべって萎えてくる。
カエル型の兵士長ほど気味が悪い「提案」をする敵は珍しい。「あきらめて 我々に 捕まる
」が最悪の選択肢という点も不気味でした。くじを用意してある点も奇妙だよなぁ。
ただ、この兵士長の判断は失敗で、いっせいに襲いかかるべきでした。混戦になれば、毒が効かないキルアや強いカイトは ともかく、ゴンを戦闘不能にするくらいには善戦できたはず。
カエル型への意趣返しのように、ゴンはアルマジロ型へ「まいった
」ルールを勧めています。ゴンには悪気がないだけに、挑発としては超一流ですね。一番タチが悪い。
いつも「正しすぎる」ゴンが学校へ通っていたら、知らぬ間に大勢の敵を作りそう。──それも含めて「学園編」が読みたい!
このアルマジロも念を知らないはずなのに、戦闘状態のゴンを吹き飛ばすほど攻撃力があります。さらに、シッポで方向を変える「追尾弾球
」は、シンプルなだけに対処が むずかしい。自信満々で出てきただけの実力者です。
並の念能力者では、下級兵ですら手に負えない──。
しかし、ゴンは並ではなかった。
突進してくるだけの敵は、ゴンにとっては念を練る時間を稼げて有利です。たとえば誰かをかばいながら戦ったり、逃げる敵を追う戦闘のほうが苦手でしょうね。
下痢に そっくり
な音を出したアルマジロは、ゴンが初めて自分の手で命を奪った敵に なりました。食べるために生き物を狩ったことは くじら島でもあるはずですが、その意味は まるで違うはず。
倒されたアルマジロは、今までの悪事を反省──することもなく、「レイザーって誰だよ……」と思っていたに違いない。
No.196 「VS ハギャ隊 3」
悪魔のような角を持った牛は強そうな外見ですが、セリフが二流でした。実力は三流です。まるで『幽☆遊☆白書』の初期・飛影みたい(こんなことを言うとファンに■されそう)。
ところが、ラモットは誰に教えられるでもなく、すでにオーラを自由に動かしています。まだ強くなるのか……。
新しく目覚めた力に酔っているラモットと違って、青ざめた表情の「鳥」もペギーも、冷静に力の使い方を考えている。この連携が恐ろしい。
すべては女王と王のために──。
「気狂いピエロ」の 2 番は大きな鎌(カマ)で、そのバカでかさと「あのカマ… かなり ヤバイぜ
」というキルアの言葉が味わい深かった。じわじわ来る系の名ゼリフです。
「死神の円舞曲
」(サイレントワルツ)も 4 番の銃も、静かに相手を葬り去るという意味では似ている。そう、攻撃方法そのものは、物静かなカイトに合っているんですよね。
騒がしいピエロは、カイトの「裏の顔」なのかも。
カエルの兵隊長は、最期に「生前」のことを思い出しています。「人生」で二度も死を味わうなんて、めったにない体験ですが──自分は遠慮したい。
彼が体験した「絶対的強者による 搾取
」は、女王に食われる前にも味わっていたかも しれません。その相手は、上司だったり国だったり──奥さまだったり。
もしかして──、アナタも?
カイトが感じた薄く粘っこい不安
とは、非情に なりきれないゴンの優しさでした。「仲間想いの奴がいたら どうするんだ…?
」という疑問には、近いうちに答えを出す必要があるでしょう。
今までのところでは、「鳥男」もハギャも、仲間を気づかっているようには見えません。ただし、女王のことを「妹のように」思いやるキメラアントを見たら、ゴンなら考え込んでしまいそう。
No.197 「VS ハギャ隊 4」
「コック帽をかぶった豚」は、肉屋に よくいる定番の「共食いキャラ」ですよね! 街なかで見かけても気にしなかったけれど、下の記事を読んでからはニヤニヤしてくる。
ところが、今回の話は笑えません……。手足を切りとっているのはマズいからだろうか──などと考えてしまう。そもそも「共食い」というカニバリズムと直結した言葉自体が、笑える話では ないけれど。
われらがポックルは、この貯蔵庫
では 4-933
という番号で呼ばれている……。
幻獣ハンターとして生きていくには、奥歯に解毒剤
を仕込んでおくくらいは最低限の準備なのでしょうね。「飲まず食わずで一週間は眠らずにいられる」と言っていたビノールトのように、プロ・ハンターなら生き延びられる──と思いたい。
そう言えば、この手の動物や妖怪をモチーフにした登場人物は、申し合わせたように 1 つの種族につき 1 人なんですよね。「ぬりかべ」ばかり 8 人くらい(全員が無口)出てきたり、ブタが 16 人(みんな大食い)いても良いじゃないか!(良くない)
念を知る前にもゴン・キルアの 2 人組と互角に戦っていたから、現在のラモットは その 10 倍くらいは強くなっていそう。だから王を目指すくらい うぬぼれていても当然です。
しかし、上には はるか上がいた。
女王直属 護衛軍
の 1 人が けっこう気さくな態度なのは、予め決められた地位
に生まれたからこその余裕です。この軍団長
の元になった動物は猫でしょうね。すでにヒョウやライオンがいるけれど、猫属の頂点は、やっぱり猫でした。
「凶々しいオーラ
」といえばヒソカの専売特許でしたが、おそらく彼以上に軍団長のオーラは不吉らしい。
生まれたばかりで念を使えるだけでも恐ろしいのに、ポックルを見つけ出したのは おそらく「円」(エン)でしょう。もう本能だけで念の高等技術を使いこなしている──。
次のページを見た時には、とうとうポックルも「肉団子
」に されたのか──と思いました。その「製造法」は、人間も魚や鳥に対して行なっているけれど、やはり人間相手だと恐怖を感じます。なぜか残っている眼球も毒々しい。
しかし──団子のほうがマシとは想像できなかった。
ラモットの変わり身の速さが おもしろい。しかし、「自分が生まれてきたことの意味」を知った者の強みは底が知れません。強敵としてゴンたちの前に現われる日が来るでしょう。
カイトたちを見てアッサリと逃げ出す「元・百獣の王」も手ごわい。チンケなプライドよりも「学習すること
」を身につけた彼は、カエルの兵隊長よりも何倍も やっかいだ。
「強さ」とは、「より強くなれること」です。
No.198 「急襲」
とうとう「ふんふん ニャるほど
(クチュ クチュ
)」の場面が来ました! これ、少年マンガだよなぁ……。
軍団長の手つきだけを見れば「毛糸で編み物」みたいに見える──というコミカルさが、より いっそうの残虐さを強めています。じつに楽しそうですよね……。
もちろん これはマンガ的な演出で、脳を直接いじくって思い通りに自白させる──なんて芸当は不可能です。まさか、こんな情報の引き出し方が できるなんて、本気で信じた人はいませんか? ──はい(挙手)。
だからといって、「つ 自白剤~」(ドラえもんの声で)なんて出しても おもしろくない。良い味付けでしたね(ポックルに味は付いていないけれど)。
猫型の軍団長は、ネフェルピトー
という名前が与えられました。外見の通りに かわいらしい響きだけれど──、もはやキュートな存在には見えない。
でも まぁ、現実世界の猫も、残酷な遊び(ネズミや虫を──)が好きだよなぁ……。G は本当にカンベンして欲しかった!
ネフェルピトーの一人称は「僕
」だけど、男性体なのか女性体なのか不明です。それとも女王と王以外のキメラアントには、性別がないのだろうか。両方 OK ということ?(何が?)
ポックルの おかげで身にしみて(目に焼き付いて)分かったように、今後も念能力者はキメラアントに捕まったら終わりです。「水見式
」よりも もっと深い念の知識を奪われる可能性が高い。
また、ラモットによる「授与式
」を受けなかった(と思われる)雑務兵だって、念での攻撃に耐えれば念能力を身につけてしまう──。すべてのキメラアントを確実に倒す以外に、人類の道はない。
「鳥型」も「凝」(ギョウ)が できるまでに進化したし、人間にとって良い知らせが何一つありませんね……。こんな時にゴレイヌ神がいれば良いのに! というか、ゴレイヌって──もしかしてゴリラと!!!?
何キロメートルも離れた場所からカイトを見つけ出して、一瞬にして片腕を落とす! ネフェルピトーの嗅覚・視力・脚力は、ほかと比較することが不可能なくらい ずば抜けている。「円」も使っているのかな。
カイトもまた、女王直属護衛軍という「化け物
」の存在に気がついている。彼の「円」からは はるかに離れた場所にいても感じるくらいに、ネフェルピトーのオーラが凶悪だからでしょう。
キルアのしたことは、カイトとゴンのことを思っての行動でした。いい判断
である以前に、絶望的な実力差の強敵を前にして、素早く体が動いたことは すごい。ゴンのように暴走するか、その場で立ち尽くすのが普通だと思う。
そして──よりによって、こんな時に出た「クレイジースロット」の 3 番が「マジカル・ロッド」て……。ただ、大鎌は もちろんのこと、銃弾ですら余裕で かわされそうだから、直接攻撃が できる武器だったことは幸いかも。
この「急襲」シーンを再現した人 GIF アニメが素晴らしかった! テレビアニメでも、これくらいの迫力が出せるのかな。
お前らほんとハンターハンター好きだな カイトがピトーに腕を吹っ飛ばされるシーンを描いたGIFアニメが凄い件
No.199 「光と影」
師匠のビスケよりもタフで、何時間も走りっぱなしで平気だったキルアが、いまは全身が汗だくになっている。これは体力的な問題ではなく、精神的に まいっているからでしょうね。
ネテロ会長が連れてきた応援部隊
の 2 人が、キルアに対して厳しい口調なのは、子どもだからバカにしている──のでは ありません。プロのハンター同士として対等に話してるからです。
とはいえ、モラウ
も「メガネ・スーツ」もクセが強い(早く名前を明かしてくれー!)。プロのハンターで食っていくとなると、我が強くなるようですね。
この時のキルアが、ネテロたちに千手観音のような印象を持ったことは興味深い。技名からしてキルアは──というかゾルディック家の人間は日本びいきですね。そして、それはネテロも同じかもしれません。
「念使いの 気概
」について語ったモラウの言葉は、プロの現場で何年も戦ってきた経験から出た考えです。命知らずなムチャのようでいて、生き残るために必要な
プロの格闘家や運動選手でも、モラウと似たような意見になるでしょうね。団体戦では別の考えになると思うけれど、「チームでは勝つ」という意気込みで戦うはず。
ただ、ネフェルピトーのような規格外の化け物相手に「100% 勝つ気で 闘る !!
」なんて言っていたら、キルアもゴンも やられていました。
──どちらの考えが正しいのだろう?
モラウたちはキルアに失格の判を押した一方、少数精鋭
の部隊を組んだ意味を伝えた上で、キルアとゴンにチャンスを与えるネテロが粋(いき)でした。仲間のはずなのに「刺客
」と呼んでいる点も楽しい。
「カイトは 生きてる!
」と心の底から 100% 信じているゴンを、キルアは「光
」だと感じています。自分自身は まだ「闇
」の中にいると思うらしい。
「傍にいていいかな…?
」なんて、いまさら何を聞こうとしているんだろう。しかし、そう考えてしまうほどキルアの闇は深いのでしょうね。キルアが本当に まっすぐゴンを見られるようになって欲しい。
たしかに現時点では、カイトが生きている可能性もありました。腕だって、元どおりになるかもしれない。キルアのように望みを捨てて落ち込んでいる場合ではありません。
そのあたりは先の展開で──と思う間もなく冷酷なラストが突き刺さる……。まったく「そういう話」と知らず中学生のころに読んだ『天狼星』のような印象を受けました。カイトの場合は、「土の中に埋まっているだけ」とも見えますけどね。
無邪気に喜ぶネフェルピトーは、ますます猫のよう。
ただ不思議なことに この軍団長は、「戦利品
」(コレクション)を貯蔵する気でいる。今後も「レアモノ」を自分のために集める気で、女王に差し出す気はないのでしょうか。
女王に一番近い立場にいるはずの直属護衛軍が、女王のために動こうとしていない。このことは、人間にとって追い風になると良いのですが……。
おわりに
大好評(※ asiamoth 調べ)の「執筆時のドーデモイー苦労を語るコーナ」(ドンドンドンパフパフ~♪)です!
いつも「あー、オモロかった!」を何千字へと引き延ばすことに苦心するわけですが、サブ・タイトルを決めるにも時間がかかる! 読んだ人には意味が分かる程度の・ネタバレなしで・ひねりのある──という題名を心掛けています。
でも、今回は楽でしたね。なにしろ、本編に「きゅうしゅう」が何個も見つかる。後は 3 つ組み合わせれば「終わりだよ!」(佐倉杏子)
アニメ版の『HUNTER×HUNTER』も、もうちょっとセンスのあるサブ・タイトルを付けたら良いのになぁ──と思う。「ゾルディック×ノ×カゾク」ってマンマやがな!