『HUNTER×HUNTER(ハンター×ハンター)』 No.20 「弱点」
あいかわらず本編とは無関係の表紙が目を引く第 20 巻です。エジプトは なんにも関係ねェ! かろうじて「猫」が関連しているくらいですね。──ネフェルピトーって子どもを産めるのかな……。
中身にもゴン・キルア・クラピカ・レオリオの扉絵が多くて、なかなかサービスが充実しています。それ以上に話が おもしろいから、何度も読み返してはニヤニヤしている。なぜ「修行編」で こんなに楽しめるのだろう?
新登場の人物が合計で 4 人も登場して、しかも名前が「あるもの」と共通点があって興味深かった。偶然にしては関連が深すぎて、何か意味があるのかな──と考えてしまいます。たんなる作者の趣味なのでしょうか。
Yahoo! ショッピング: HUNTER×HUNTER 20
Reviewer: あじもす @asiamoth,
今回も「ショート・シンプル・スパイシィ」(by. 森博嗣
No.200 「条件」
扉絵のネフェルピトーは、かわいらしくも毒々しい。もしかしたら作者には、猫がこういう存在に見えるのかもしれませんね。思い返してみると、ミケ以外の犬は かわいらしく描かれている。優遇されているなー。
割符と刺客の情報だけ与えられて今後の行動を決めるなんて、これまたゲームの謎解きみたいな話です。ゴンも「ゲーム語」に慣れてきました。
「割符
」なんて渋い言葉をキルアは よく知っていましたね。暗殺稼業に必要だったのでしょうか。なんとなく、シルバもゼノも将棋が好きそうに見えます。キルアも教えられたのかな。
初登場のパーム
は、ちょうど公開中の『貞子 3D』を思わせる外見です。まさに「おどろおどろしい」という表現がピッタリ。山村貞子は絶世の美女らしいけれど、パームは──。
スーツ姿の男は、ノヴ
という名前とのこと。このネーミング・センスの素晴らしさが分かるのは、ちょっと先になります。
ノヴの弟子であるパームは不気味さだけが際立っていて、女性キャラ好きな自分でも、ピクリとも反応しなかった。──現時点では。
まるで「具現化系」能力者のように回りくどく話すわりには、じつは「強化系」という点も、じわぁ……とイヤな感じです。「強化系」らしくストレートに気味が悪い人物ですね。あのゴンですら「なんかヤダな…
」と思っている。
パームは いかにも異常な性格ですが、典型的な「メンヘラ」にも見えます。彼女のような女性を何人か知っているけれど、ことごとく似たような発言と行動なんですよね。そういう意味では、「おまいら」も「DQN」も同じか──。
そして自分は、普段から「他人をカテゴライズする人間は嫌いだ」なんて発言をしているけれど、ご覧のとおり、他人を枠に はめている。これも また、「文句を言う人間は自分自身の姿を見ていない」という典型例ですね。
「うるさい!」と怒鳴る声のほうが大きい。取り締まる側のほうが みだらな作品を発表している。このように人間は、自分に興味のあることしか見ません。
やはりネフェルピトーは、カイトの体を女王に差しだしていなかった。首が「マミっている」──もとい「カイトっている」から、食材としての価値が無くなったのでしょうかね。
軍団長が言う「簡単な こと
」は、思いつきで念能力を決めて具現化できることだという──。どこまでも念使いの常識を壊し続ける存在です。
そう言えばキメラアントたちは、電球どころか電気の存在も知らないはず。だから「ぴーーん
」とネズミが飛んでいるのですね。芸が細かい!
ゴンとキルアが倒すべき相手も、ナックル
とシュート
というコンビでした。──パームと戦うよりはマシだったりして。
ナックルは、DQN というよりもヤンキーに近い容姿で、「どこの『ジョジョ』第四部だよ!」という髪型です。あ、それを言うなら『幽☆遊☆白書』か。
サブ・キャラのわりにはナックル・バイン
と珍しく姓名が あるし、単純バカの「強化系」丸出しに見えて複雑だし、味わい深い人物ですね。
No.201 「再会」
『ボボボーボ・ボーボボ』を読んで、笑いをこらえている団長が見られるとは思わなかった! ネオンとの会話で分かるように、けっこう愉快な性格ですよね。
一方のヒソカは、「クロロ、『ジャンプ』派だったんだ……」と幻滅していたりして(←「マガジン」派)。
キルアは、モラウが言う「念の戦いに 絶対なんて ない
」という点に納得していても、「勝ち目
」については反論している。
これは自分もキルアに賛成です。絶対に勝ち目のない相手にでも、モラウは平常心で戦えるのでしょうか。それは無謀というものでは? ただし後で分かるように、キルアは勝率の見極め方が極端すぎます。
どちらが正しいかは、読者が判断することですね。
キルアが「かなり強そう」と見ていたナックルとの戦いですら、ゴンにとっては NGL の前哨戦と考えています。そう、相手の能力など知る余裕もなく戦いは始まる。だからこそ、よけいにキルアは逃げ足が速くなってしまう──。
まさかのビスケ再登場です! アンケートで人気だったと思いますが、冨樫先生が読者の声をそのまま取り入れるとは思えません。よっぽど作者が気に入ったのかな。
なんだかセレブのパーティ用みたいなビスケのドレスには、キュートなウサギが あしらわれています。──なんだか不思議なくらいに「ウサギと犬」が よく出てくるマンガですねー。
さて、この時点で「ビスケとパームの どちらを取る?」と聞かれたら、「あの姿」を知っていてもビスケを選びたくなります。というか それ以前に、比較する対象にすらならない。
「モラウの厮徒 抹殺計画…!
」「いやです
」の流れには笑ったけれど、パームのことを「かわいい」とか「おもしろい人だ」とは思えませんよね。
ところが──。
ビスケはネテロのことを「人が悪い
」なんて言っているけれど、それは お互い様でしょう。弟子たちに きつい修業をさせておいて、自分は何を読んでいるのか──! この「ビスケの本の趣味」は、遠い将来に思い出すことになる。
さすがのキルアは、5 分間単位で自分の「練」の限界を把握しています。だから「練」を 3 時間も維持する苦しさは、やる前から十分に分かっていたはず。たとえるならば、「フル・マラソンのタイムを一時間縮める」くらいのムチャです。
「練」の時間を延ばすだけでも、期限の 1 か月が終わりそう……。一方のバカ──もといナックルも、犬の世話で ひと月が過ぎたりして。
ビスケの念能力・「魔法美容師」(まじかるエステ
)の「クッキィちゃん」には、「桃色吐息
」(ピアノマッサージ)という回復技が ありました。
「グリードアイランド編」では見られなかった技だけれど、描いていないだけでゴンとキルアを回復させていたのかな。いや、この場面で分かるように、「タダじゃない
」から出さなかった可能性も高い。
──いまさらだけれど、この「まじかるエステ」の効果によって、意識不明の重体患者でも目覚めるのだったら悲劇ですね。そう、じつはバッテラ氏の恋人でさえも……。
パームは、どうやってビスケを見つけたのでしょうか。彼女自身は、「あたしの能力が 選んだ答え
」と言っている。本当なのかな?
現在ではパームの能力が分かっているけれど、余計に疑問が残ります。なによりも、短時間でビスケを連れて来られた点が疑わしい。まだ「ネテロ会長から聞いた」ほうが信用できます。
パームの恐ろしさは、その能力よりも──ビスケにすらケンカを売る性格ですね。この巻で分かるとおり、パームは相手の実力を正確に把握できるのに。
ところが、そのパームですら、ゴンは真っ正面から光を照らしている。怖い物知らずという点では、ゴンが最強ですね!
実戦経験が誰よりも長そうなだけに、ネテロ会長の判断は正確なはずです。そのネテロが、「ワシより 強くねー?
」と妙に若い言葉でネフェルピトーを見ている。勝ち目はない──のか?
No.202 「決闘」
「少年 4 人組による ほのぼの日常マンガ」みたいな扉絵です。冨樫先生なら、その題材でも おもしろく描けそうですけどね。
ネテロ自身が言うには、現在のハンターで最強は会長ではないらしい。読者に公開されている範囲では、クロロかヒソカ・シルバ・あるいは「あの姿」のビスケあたりが最高でしょうか。
ところが、ネフェルピトーの「円」は目測で数キロメートルは伸びている……! これまでの常識をくつがえすほどの力量を感じます。「円」なのに円形じゃないところも恐ろしい。
まだまだモラウとノヴも実力が未知数です。ノヴの能力は、異空間から物を取り出せるらしい。モラウはパイプから煙のウサギを作り出している(またウサギか!)。──これだけでは、戦闘力が強いのか、それとも芸達者なだけなのか分かりません。
そもそも、相性が抜群の 2 人に見えるけれど、いつもモラウとノヴでコンビを組んできたのだろうか。ネテロは、普段は組んでいない者同士をまとめることが得意そうですね。
アリとの戦闘すら「楽しまなきゃ
」とモラウは言う。キルアに浴びせた ののしりと余裕からして、プロとしての経験が長い熟練者──というよりも無鉄砲に感じます。本当に強いのか?
もう 1 人の 軍団長はシャウアプフ
で、最後はモントゥトゥユピー
という──全員が ややこしい名前です。感想書きとしては、早くニックネームが登場して欲しい!
女王が初めて名づけた 3 人の名前は、異国の言葉──それとも異世界の言語だろうか。キメラアントの女王が どこからやって来たのかは、明かされる日が来るのかな……。
ゴンとキルアは、意外と早く 3 時間の「練」を達成しました。これも「まじかるエステ」で休息したおかげでしょう。この件でビスケはどれくらい儲けたのかな……。
この「練」の指導だけだったらビスケの能力があれば指示 1 つで済むけれど、ここからが すごかった! このスパルタ修業は、ネテロ直伝かも しれませんね。
ただし、キメラアントのように「食うか食われるか」という相手ではないからこその戦略です。実戦では「勝つまで何度も挑戦する」なんて不可能に決まっている。そこまでは考えに入っているのでしょうか。
あと、ゴンとキルアがナックルの居場所を知っていたのは なぜだろう? これもパームの能力なのかな。
No.203 「ジャイロ」
「出番 は?
」なんて扉絵でグチを言うクラピカとレオリオが楽しかった。本当に「仲が良い」ふたりですねー(疑惑の目)。
ナックルの威圧感は、キルアたちが疲労している点を差し引いても、相当の実力差があるからでしょう。グリードアイランドで かなり鍛えられたゴンたちでも、まだまだ上がいる……!
「オレを 殴れ !!
」なんて挑発する点や、ダラダラと条件について語る性格からして、ナックルは「強化系」とは思えない ひねくれ方なんですよね。そう、どちらかと言えばゴンやレオリオよりも、クラピカのほうが近い。
ただの「単純バカ」だったらゴンのようなタイプしか描けない作家が多いなかで、これだけ人物を描き分けられるところが素晴らしいですね!
この場面のゴンにしても、普段だったら「破格の条件
」を飲まなかったはず。ゴンの性格が変わったとか描き間違えたのではなく、なによりもカイトの所へ行くことが最優先だからです。
「意地だけでは 絶対超えられない
現実が ある
」と知ったゴンは、念能力や体術だけではなく、精神的にも成長していますね。
あれだけ威張っておいて、一撃で吹き飛ばされるナックルには笑いました。そう、物理法則から考えて、足の踏ん張りだけでゴンの「グー」に耐えられるわけがない。地面ごと持って行かれるでしょう。
ゴンが言うように、ナックルは動物に好かれ る
いいハンター
で良い人ですね。凶悪な倒すべき刺客──でも なんでもなくて、2 人の師匠になってくれそう。
──「何でも 聞け
」と言った直後なのにビースト ハンターに なった
理由は明かさなかったり、討伐隊に 志願した
理由も回りくどいという、かなり面倒くさい性格だけれど……。
「NGL の影の首領
」ことジャイロ
の登場は突然でした。言うまでもなく、ナックル・シュート・パーム・ジャイロの 4 人は、野球の球種から来ている名前でしょう。
だからジャイロも、けっきょくはナックルみたいに良いヤツなんだろうな──なんて思っていたけれど……。
No.204 「ジャイロは」
これまでの話のなかでも、もっとも異色な話でした。なんと、8 年以上が過ぎた現在でも、「あれは何だったんだろう……」と思ってしまう。そのくらい遠い将来まで じわじわと効いてくる──毒のような 1 話です。
これまでにも過酷な描写(「ふんふん ニャるほど」)は多かったけれど、だいたいが人ごと──どころか「自分たちとは違う宇宙の できごと」として読めました。その上で現実味を感じさせるのだから、作者は驚くべき力量です。
ところが今回の話は、「ひょっとしたら自分が ジャイロになっていたかもしれない」──と思わせる。彼と似た境遇の読者も いるでしょうね。
この話で もっとも救われない点は、ジャイロは父親を慕っていたのに、父親はジャイロをまったく愛していなかったことです。
「少年の小さな宇宙で 父親は神に等しかった
」という感情は、どんな人間にも あるはず。幼いころは親に頼るしか ありません。
それだけに、「人間に 迷惑を 掛けるな
」という言葉の真意と「宇宙は オレに興味が無い
」と思い知ったジャイロの絶望は計り知れない──。
自分も、母親から厳しいことを言われことが何度もあるけれど、彼女は決して自分に対して無関心ではなかった。うるさいくらいに忠告してくれたんですよね。ありがたい!
人間だった時の記憶が残っているキメラアントの描写は、今までにも ありました。しかし、アリとしての本性が色濃く出ている場合が ほとんどです。
ジャイロだけは、人間のころからの凶悪な意志
を持ち続けている。今回は何事もなく去っていったけれど、次に登場した時は さらなる大惨事が起こりそう──。
モラウとノヴ・それにネテロ会長の連携が効果的だったため、キメラアントの兵隊は順調に数を減らしている。鳥型の師団長とペギーが危機感を強くして、何らかの対策を立ててくる可能性もあって油断が できません。
ここで「選別
」という言葉が登場しました。「天空闘技場編」で言うところの「洗礼」のことですね。誰が決めたのか知らないけれど、どちらも言葉の選択にセンスを感じました。
やはりキメラアントと言えども、選別によって命を落とす者も いるらしい。そのリスクを負ってでも、念能力者を増やすことはアリ側にとって有利になる。今後はモラウとノヴのコンビ技にも対抗できる者が現われるかもしれない。
そもそも、空を飛ぶアリには無効なのでは?
人間の歴史は戦争の歴史です。戦略を練ることに関して、人間の右に出る生物は存在しない。「生まれたての赤ん坊」(アリ)が考える作戦なんて、ネテロたちにとっては驚異ではない──はずでした。
しかし、作戦など不要な軍団長たちの強さが目の前に立ちふさがる。ノヴは、その一番肝心な点を無視して早期の決着を見ています。ちょっと油断しすぎですよね。
No.205 「残り時間」
そのへんで拾った棒を杖代わりにしてヨロヨロ歩くなんて、まさにマンガ的な表現──だけれど、2 人の疲労感を想像すると こちらの体まで重くなってきます。自分は、部活動をやっていた時代でも、手を抜いていたからなぁ。
彼らを影から盗み見る──だけで終わったシュートは、見るからに冷徹そうな男です。ずっと監視役に徹していたところから、慎重な性格だと分かる。
シュートも「シュート・マクマホン
」というフル・ネームが明かされました。おまけに血液型まで公開されている。UMA ハンターとは、ポックルの「幻獣ハンター」とは別なのだろうか。
てっきりナックルとシュートは、ゴンとキルアが NGL へ戻るまでの「間に合わせ・使い捨てキャラ」かと思っていました。それにしては人物描写に力を入れているから、どうも長い付き合いになりそうですね。
ナックルの身のこなしはカイトにも並ぶくらい──とゴンは見ています。後で分かるナックルの念能力と あわせて考えると、使い勝手の悪い能力を持ったカイトよりも、ナックルのほうが強いかも しれません。
ところがキルアが指摘したように、ナックルは精神面
が問題で、敵に対して非情に なりきれない。実戦では致命的でしょう。
ビスケの修業の おかげで、ゴンとキルアは順調に実力を付けています。しかし、それでも間に合いそうも ない
とのこと。それでも人名と使命(と金)が かかっているから、途中で投げ出せない。つらいところですね。
──というか、エ■本を片手にしていたら、どんな真面目な考察も台なしですけれど。
パームの「ホラー表現」も いま見ると笑えるけれど、連載の当時は本当に怖かった……! ビスケですら取って食いそうな迫力です。──それは無理か。
しかもパームは ただの怖い女性というだけではなく、実力を見抜く たしかな目を持っている。この作品の登場人物らしく、ひと言で語り尽くせるような厚みではありませんね。
よく見ると顔は整っているけれど、ボサボサの髪の毛や手首の包帯でパームは損をしています。層でなければ、「フラグ」が立ちまくりのゴンが うらやましいのにな……。
狩られているアリたちには深刻な事態ですが、「送る
」側のモラウとノヴは のんきなものです。ノヴの念能力を考えると、こんなにも効率よくアリを捕まえられるとは思えないんですけどね。
当のネテロは肩慣らし程度に考えているし、ゴンとキルアの修業も しゃべりながらだし、なんともノンビリとした ふんいきの前半でした。しかし、キメラアントの王もスクスクと順調に育っている──。