『ダークナイト ライジング』 (The Dark Knight Rises)
「希望と絶望」がテーマの映画でした!
こうやって 2 つのキーワードを並べると、前作・『ダークナイト』の感想で書いた「二者択一」の物語に思えますよね? ところが、どちらかと言えば両者の「二面性」を強く感じます。
『ダークナイト』 2 つのテーマ、二者択一と二面性 | 亜細亜ノ蛾
第 3 作目も やはりクリストファー・ノーランが監督しました。原案や脚本・制作総指揮まで関わっていて、「ノーラン節」がスミズミまで行き届いています!
「バットマン」ことブルース・ウェインも、前作までと同様にクリスチャン・ベールが熱演しました。そう、前作以上の「熱を感じる演技」に注目しましょう!
今回の敵である「ベイン」は、頭部の半分近くをマスクで覆いながらトム・ハーディが演じています。ムキムキの肉体──よりも彼が心に負った痛み(ペイン)に引かれました。
──主役・敵役も そうですが、執事のアルフレッド・ペニーワース(マイケル・ケイン)や、ジェームズ・ゴードン(ゲイリー・オールドマン)警部補、応用科学部のルーシャス・フォックス(モーガン・フリーマン)も、みな一様にドンヨリとしているんですよね……。
そこでアン・ハサウェイ演じるセリーナ・カイルが画面を華々しくしていました! 彼女が いなかったら、ずっと重苦しいムードで気が滅入ります。アンの長~~~い おみ足が素晴らしい!
Reviewer: あじもす @asiamoth,
猫のような しなやかさ
自分は「アン・ハサウェイちゃん! キャーーー!」な人なので、彼女が画面に映るだけで満足です。しかし、「ハサウェイがアクションとか誰得だよ」という「知ったか映画通」さんも多かったはず。
次に挙げる彼女たちも同じことを言われたでしょう:
- 『アイアンマン 2』のスカーレット・ヨハンソン
- 『バイオハザード』シリーズのミラ・ジョヴォヴィッチ
- 『ブラック・スワン』のナタリー・ポートマン
──ところがフタを開けてみれば、全員が素晴らしいアクションを見せてくれました! (「吹き替え」とかは置いておいて)
- 『バイオハザード III』 砂漠でも脱ぐミラ・ジョヴォヴィッチ | 亜細亜ノ蛾
- バイオハザード IV アフターライフ – 東京と一緒に消えたアリスたち | 亜細亜ノ蛾
- 『アイアンマン 2』はヒロインのアクションが最高! 悪役も渋い迫力が見事! | 亜細亜ノ蛾
- (そう言えば『ブラック・スワン』の感想を書き忘れていました!)
セリーナ・カイルは「キャットウーマン」な わけですが、劇中では一度も そう呼ばれません。バットマンと違って、あまり公の場には現われないからですね。
彼女が身に着けている「猫耳型ゴーグル」は、最高に洒落たデザインでした! 100 人中 99 人は「猫耳付きマスク」をかぶせるのに、よく思いつきましたね!
いつも女は戦士
ミランダ・テイト(マリオン・コティヤール)に協力を求めていたはずのウェインが、いつの間にか「エエ関係」に なっていて笑いました。
たしかにウェイン財団から見ればミランダは「ゲスト」で、ブルースは「ホスト」だけれど──、そういう意味の「ホスト」に なるとは意外です! (どういう意味?)
──ああ、そう言えばブルース・ウェインって「遊び人のお金持ち」設定でしたね! 8 年間もヒキコモリ(コウモリだけに)していたから、すっかり現役を遠のいたのかと思った。
終盤のミランダも驚きです! 「善意の第三者」であり「事件に巻き込まれた被害者」なんて思っていたら、そんなヤワな女性ではなかった。
本作品は、戦う女の物語です!
「殺さず」の誓い
原作のコミックでは「義賊であり人を殺さないのが信条
」だったはずのセリーナ・カイルは、本作品では景気よくポポポポーン! と人の命を奪いまくっていました。
それを見かねたバットマンは、「敵は殺さずに、銃もなしだ」とか何とか忠告する。前作の『ダークナイト』から、ブルース・ウェインは「殺さず」を徹底していますね。
──じつは本作品の上映前に『るろうに剣心』の予告が流れていて、「カブってるカブってる!」とか思ったのでした。今回のバットマンは妙に口が半開きなので、「おろ?」という幻聴まで襲ってくる。
さて、カイルが言うことを聞いたのは その場だけでした。猫のように自由な彼女の周囲は、終盤まで殺戮の嵐です(その おかげで話が進むケド)。そして驚いたことには、最後の最後で──、
バットマンまで人を殺していました!
えー、今までの「るろうにウェイン」は何だったんだ! (ちなみに死なせてしまった相手は、「真のラスボス」──の前に、トラックの運転手もです)
影は影のままで
肝心のバットマン vs. ベインの戦いは、これまでにない「肉弾戦の迫力」を味わえました! ベインの一撃一撃が、どれも本当に痛そう!
迷彩柄に塗られたバット・モービルが、人々に銃身を向けながら街なかを走り回る姿も、悪夢じみて自分は好きです。
歴代のバットモービルが総出演する公式ドキュメンタリー「THE BATMOBILE」 – GIGAZINE
しかし、『バットマン ビギンズ』を観ていない人は置いてきぼりでしたね。「ラーズ・アル・グール? 影の同盟? 何のことです?」状態に なったはず。
『バットマン ビギンズ』 ダークヒーロー誕生秘話はやや強引 | 亜細亜ノ蛾
大勢のアメフト選手──つまりは「市民」を地の底へ沈めておいて、「市民よ立ち上がれ!」などと のたまったり、わざわざ脱出する手段のある監獄へバットマンを送り込んだり、ベインくんは優しいのか厳しいのか謎でした。
われらがバットマンも、アルフレッドに指摘されたとおり、破滅を望んでいる男に見えます。──ゴッサム・シティの命運を握る 2 人の男のうち、どちらを選んでも希望は なさそうな気がする……。
ただ、ベインが語った「希望があるからこそ、真の絶望がある」というような言葉が心に響きました! 「希望と絶望」というテーマ自体はアリガチだけれど、希望に釣られて絶望を思い知る苦しみは新鮮です。
世界は希望に満ちあふれ、そして絶望で溢れている。
皆勤賞の元教授
「スケアクロウ」こと Dr.ジョナサン・クレイン(キリアン・マーフィ)が急に現われてビックリしました! これで新生『バットマン』の 3 部作すべてに出演を果たしましたね。
『ダークナイト ライジング』は、上映時間が 165 分間(!)という大ボリュームでありながら、ムダな場面は ほとんどありません。そのなかで、こうした遊びを入れてくるところが興味深い。ほかにも遊びが ありそうですね。
お茶目な警部補
そうそう、皆勤賞と言えばジェームズ・ゴードンも影の主人公のように活躍していましたが──、なんと今の今まで、
バットマンの正体に気がついていなかった!
──え!? 本作品でも「バットマンの正体? ももももちろん詩氏知ってるよよよ(汗)」とか言っていたのに! それより何より、強盗が被るようなニットのマスクで やって来た時点で、なぜ分からなかったのだろう……。
というか、バット・モービルや空飛ぶ「BAT」を自由に扱える人間なんて、酔狂な お金持ち以外に考えられません! そんなヤツ、あの街に 1 人しかおらへんでェ……!
捜査の能力は『レオン』時代のゲイリー・オールドマンと大差ありませんね! 敵のアジトである地下の下水道へ、防弾チョッキも着ずに乗り込む度胸は、ドラッグのせいだったりして。
彼の名は
ジョゼフ・ゴードン=レヴィットの演じるジョン・ブレイク刑事が廃虚のなかを歩き回っていると、『インセプション』を思い出します。音楽も微妙に似ている。
インセプション – 回り続けるコマ・倒れる現実 | 亜細亜ノ蛾
ただの「警官: A」役かと思ったら、あれよあれよと重要な場面で活躍し始めて、まるで彼の成長を描く映画のようでした。
さりげなくジョンの本名が明かされるシーンは、原作ファンにはニヤリとしますね! ストーリィ的にも十分に続編での活躍が期待できそうなので──、
「真・新生バットマン & ロビン」をぜひ!