『SKET DANCE(スケット・ダンス)』 第 28 巻 「スイッチ・オン」
笛吹 和義の過去編である「スイッチ・オン」は、前巻の後半から続いています。「学校 裏サイト」や引きこもり・イジメといった重い主題を描きながら、『スケダン』らしい推理要素も楽しめる。
『SKET DANCE(スケット・ダンス)』 第 27 巻 感想・2 | 亜細亜ノ蛾
第 28 巻の表紙は、固く口を閉ざしている笛吹の表情でした。「いつものスイッチ」といわれれば その通りだけれど、内容を知ると直視しがたい──。
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Reviewer: あじもす @asiamoth,
第 244 話 「スイッチ・オン 4」
深い事情を知らない藤崎からしたら、片桐は「クズ野郎
」に見えました。鬼塚が言う「ただの 小心者
」も的確すぎて厳しい。
たしかに片桐が やったことは悪事だけれど、同情できる面も あるります。彼に感情移入して読むと、いたたまれなくなる。もしも自分だったら、二度と同じ思いをしたくなくなります。
──そう、これだけ親身になって しかってくれる人が近くにいたら、更正と謝罪を決意する。「人は 何度だって やり直せる
」からこそ、怒る場面では真剣になるべきです。
自分も「世の中には暴力で 罰しなければならない ヤツらもいる
」とは思う。この片桐の言葉は、片桐自身にも向けられています。だから「デスファイト
」へ参加した。自分を罰するために──。
ただし今回の藤崎と鬼塚は、暴力を使わずに片桐を正しい道へ向かわせました。
鬼塚が男の部屋に上がった二度目は、片桐の部屋でしたね。三度目は「スイッチ・オン」の後半に出てきます。
『スケダン』ファンからすると、「美味しいな、片桐ィ!」とか思ってしまう。ポニー・テールでミニ・スカートの鬼塚を間近で見られたし!(そんな状況!?)
とうとつに誕生日を主張する藤崎が謎でしたが、椿を紹介するためですね。こういう「じつは ここで会っていた!」ネタは楽しい!
マンガや小説で読むと「そんなに都合の良いこと、あるの?」とベタな展開に苦笑する。しかし、毎日のように同じ学園に通っているのだから、こういう すれ違いは何度も起こって当然です。
だから、モテない人でも「絶世の美女 256 人と出会っていた!」と思い込むことも可能でしょう。──あまり意味はないし、「絶世」にしては多すぎだけれど。
「バーチャランド」の会話が良かった!
現実世界でも仮想世界でも笑える格好の藤崎だけれど、会話の運び方が飛び抜けて上手です。自分の意見を主張しつつも、相手の言うことも否定せずに聞く。
藤崎の場合は「会話術が巧み」といったテクニックではなくて、「仲間の事 ちゃんと 知りたくて
」という気持ちが強い。だから自然に笛吹の本心を聞き出せた。
第 245 話 「スイッチ・オン 5」
「チュウさん」こと中馬先生が なぜか異様に若く見えます! ほんの 1-2 年前の話なのに、一回りくらい若くなっている。
──スケット団の顧問になってから苦労が増えて、それで老けたのかな……。でも、そんな苦労を背負い込むほど面倒見が良かったっけ?
ということで正解は、「実験で寿命が縮まった(てへぺろ☆」でしょう! ──そんなに軽く言える話ィィィイイイ!? てか、スケット団たちの寿命も!?
ここで中馬が語った笛吹の弟・「スイッチ」の話は、『SKET DANCE (5)』に登場します。いまだに軽くは読み流せない──。
『SKET DANCE(スケット・ダンス)』 第 5 巻 感想・2 | 亜細亜ノ蛾
藤崎と鬼塚が、自分たちに何が できるかを話し合う会話も感動しました。高校 1 年生で ここまで友だちのことを真剣に考えられるのか──!
鬼塚は藤崎に助けられた過去があるから、笛吹に対しても話しかけることの重要さに気がつきました。
この「ただ話す」ことは、意外と忘れがちです。「自分が救ってやろう」という思い上がった気持ちが前面に出ると、相手には すぐに伝わって鼻に付く。
感極まって涙を流す鬼塚と、チラッと見て見ぬふりをする藤崎が良いですね! ふたりの微妙な距離感には心を引かれます。
わざと「デスファイト」に参加して管理人を捕まえる作戦と、「鬼姫
」の悪名を利用する発想は素晴らしかった! ようやくスケット団らしく歯車が合ってきましたね。
感心させたあとで、写真で笑わせるネタも良い!
さらに、2 枚目の写真に仕掛けられたトリックには やられました。注意深く見ていれば違和感に気がついたはずですが、いつものようにボーッと眺めていて自分はスルーしてしまう。
藤崎が笛吹に携帯電話でメールを送る場面は不思議でした。パソコンのように「h」から「は」を打つローマ字入力の機種なんて あるのだろうか? スマート・フォンなら分かるけれど。
第 246 話 「スイッチ・オン 6」
ついに管理人の正体が明らかになる!
──とは言っても、あまりにも怪しい奥山だったため、意外性は ありません。多くの読者が予想しただろう展開で、この あっけなさが意外とも言える。
──と だまされていた……。
前回の下駄箱の写真どころか、「片桐憲一
」の時点で真相が分かる伏線が見事です!
そもそも藤崎にも読者にも、「笛吹は善人」という思いこみが ある。いくつかの証拠に気がついても、笛吹が管理人とは考えたくないでしょうね。
第 247 話 「スイッチ・オン 7」
「バーチャランド」では ときどき軽い口調の笛吹が、逆に悲しかった。アバターが かわいらしいおかげで、話の重さが やわらいでいるけれど、笛吹の心境を考えると軽くは聞けません。
「自作自演
」までして掲示板の流れを作った──という卑怯な手口も衝撃的です。スケット団で活躍するスイッチを見ているから、知りたくなかったし信じられなかった。
藤崎の ひらめきも、鬼塚の腕力も、笛吹の頭脳も、使い方しだいでは恐ろしい凶器になる。彼らの武器は、正しいことにだけ使って欲しいですね。
「ただ友だちとして話す」ことを描いた上で、笛吹を外へ連れ出す展開を見せています。もしも最初から力尽くで引っ張り出す描写だったら、すべてが台無しでした。それは「助ける」とは言わない。