『SKET DANCE(スケット・ダンス)』 第 29 巻 「バードマン」
第 29 巻の後半は熱い展開から始まります!
しかし、真剣味のある話だからという以上に、とある理由から話に のめり込めなかった。だって、この空気は、もう──ねぇ?
ところが そんな読者の気持ちを裏切るかのように、その後はギャグの話を連発してくる。ホンマ、この作者だけは食えやんわぁ……!
最高に笑える 1 冊でした!
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Reviewer: あじもす @asiamoth,
第 257 話 「バードマン 前編」
いきなり進路の希望を聞かれて息を呑むボッスンたちと同様に、読者の自分もドキッとしました。いろんな意味で、もうそんな時期か……。
実際には進路が決まっている生徒も多い。
とくに笛吹 和義は、安形 惣司郎が卒業する際に、彼と同じ東大へ行くとハッキリ言っている。その(夢ではなく)目標に向かって普段から勉強してきたはずです。
つまり、冒頭でスイッチが汗を流した表現は、ただたんに「空気を読んだ」だった。じつに彼らしい。
早乙女 浪漫はマンガ家を目指す──というか すでにデビューしています。ほかの主要人物も将来の職業が見えやすい。
ところが、大門 明智の「クイズの司会」は例に挙がらなかった。──やはり今の時代、クイズで食べていくことは難しいのだろうなぁ……。エニグマンをやっていない時の彼は、なにが取り得だろう? モデルには なれるかな。
あえてヤボなツッコミを入れると、多くの日本人と同じく、今回の話も「夢」と「職業」がイコールで結ばれています。本当の夢とは、たとえば その職業に就いたあとで実現したい物事を言う。そこまで描いて欲しかった。
──けれども、2 話では まとまらないか。
常時ヒュペってる日高 飛鳥が熱かった!
意外と熱血キャラは貴重です。なにしろ今回も ほぼ「教室や部室でダベる話」という平常運行だから、熱血漢は本作品では空回りしてしまう。
その空騒ぎぶりをギャグへ持っていかなかった点が、今回の前後編では良かった!
なぜならアスカは、「ヒュペる」みたいに ふざけているわけではなく、真剣に夢を実現させようとしているからです。そんな彼は笑えない。
第 258 話 「バードマン 後編」
「努力を 続けていれば 夢は叶う
」という言葉は真実だと思う。前半部分に重さを置いて あきらめるか、後半部分を信じ続けるか、人によって差が出るだけだ。
教師を目指すヒメコの勇気と努力は、読者の何人かに届いたでしょう。なにか小さな事でも良いから、目標に向かって日々を過ごすと心が磨かれます。
「バードマン」は てっきり、「夢を追う男・飛鳥にヒメコが恋をする話」かと思って前半をドキドキしながら読んでいたから、ちょっと肩すかしを食らいました。作者は そこまで計算していたのかな?
ヒメコとアスカが 2 人で話す場面は、さりげなくボッスンが陰から見守っている。キリに対してヤキモチを焼いていた場面を思い出しました。
ヒメコもいつかボッスンを「卒業」するのかな……。
またもやヤボな話ですが、個人が自作した飛行機を公共の場で飛ばして良いのだろうか……。それを言い出したらなにも描けなくなるけれど。
たぶん、あの川は丹生 美森の私有地でしょう!(?)
第 259 話 「忍者屋敷へ行こう!」
加藤 希里は、父の五左衛門の影響を受けて忍者に なっていたらしい。キリは立派に庶務をこなすし、将来は生徒会長も務まりそうな人望です。しかし──。
武光 振蔵の父親・奮蔵と言い、ミモリンの父である林太郎と言い、なんだかロクな父親が出てきません。そのわりに「父のせいでグレた」展開は皆無です。
親の影響で夢をあきらめる子どもが多いなかで、開盟学園の生徒たちは自分の翼で羽ばたいている。自由すぎる校風は、生徒の自主性を育ている役に立っているようです。
なんでも こなすボッスンが格好良かったし、おもしろかった! マンガの主人公で「特技: 器用」なんて役に立たないことが多いはずなのに、この作品では最大限に生かされている。
進路の話の直後に「ボッスンは異常に器用」と来たから、ますます彼の将来は安泰に思えました。どんな大学でも一夜漬で合格するのでは?
──器用貧乏にならないと良いけれど。
「サスケェ!」なのに忍者に向いていない椿 佐介も笑えました。
「リーダー(生徒会長)のわりには頼りない」点ではボッスンと同じだけれど、「いざという時には やる」要素が椿にはない。
しかし、社会に出て上の立場になると、「いかに人を使うか」という素養のほうが重要です。藤崎も椿も得意だから、どんな分野に飛び立っても成功しそう。
よりによって一週違いで『銀魂』も「忍者学校に通う話」でした。
空知 英秋氏のもとで篠原 健太氏はアシスタント経験がある師弟コンビだから、同じネタで勝負したのか──と思ったり。
第 260 話 「思い出アルバム『体育祭』」
本作品は、スポーツ物は似合わない作風です。
ところが「写真だけで後日談を語る」発明には未来がある! ネタを小出しにしてヒメコがツッコむパターンは、『スケダン』の作風と非常に相性が良い。
微妙に「ゆとりある(ありすぎる)教育」への批判とも受け取れる毒も最後に盛り込んであって、この作品らしい楽しさでした。
タイトルからして続編が作られそうで期待しています!
安形 紗綾の参加した女子 100M
が素晴らしい!
なんとも見応えのある女豹の群れ
と、違う意味でガン見してしまうホルスタインマルチーズ
は、この場面だけ秒間 1,200 コマのアニメで作って欲しかった……!(どうして?)
浅雛 菊乃に まさかの「ドジっ娘属性」が発覚し、倒れ込んだ高橋 千秋との絡み(意味深)は、百合の花(意味深)のように美しかったに違いない!(そもそもデージーって運動できたっけ?)
ボッスンと椿が「男女二人三脚
」(意味深)に出る 羽目になった
(意味深・出るのにハメ!?)展開は、「フ」が付きし女子の みなさんには「良いの!? 公式じゃん!!!?」と思われたことでしょう。
右か左かで相性が違うなんて、そのまま──バトルマンガで言えば攻撃を「受ける」か「攻める」(意味深)かの違いです(不自然な たとえ)。
密着(意味深)して服をつかみ合い(意味深)足を縛り直す(意味深)とかレベル高すぎィ!
障害物競走
や男女混合リレー
は分かるとしても、高校生の体育祭でパン食い競争
なんて やるのだろうか? ──うらやましい! ほぼ男子校の工業高校生(オレ)には理解不能な世界だぜ……。
普段はベレー帽を被っているロマンが、運動しやすいように 髪をお団子にしていて萌えます! もともと「王子(藤崎)に恋する乙女」として登場した彼女だから、ちゃんと「女の子している」んですよね。イイネ! x 2,048
こんな場面を無口・無表情で撮影し続けた現役男子高校生のスイッチですが、彼の学校での評判からすると、おそらく不快に思う生徒も先生も いなかったと思う。ボッスンだとキャラ的にキワドいけれど……。
ああ、「※ただしイケメンに限る」と書けば終わりか。
後日、スイッチの ところには「体育祭の写真を売ってくれ!」と頼みに来る生徒が多かったのでは? とくに男子が多いことは言うまでもなく(チェリーは確実)、ヒメコも二人三脚で走る兄弟の写真を欲しがりそう。
第 261 話 「クエスト・ダンス 逆襲の戦士」
この話はヒメコに注目です!
非常に珍しく、ヒメコはツッコミ役では ありません! ボケ役でもなく、「ぶどう農家
の人」に徹している。だから新しい笑いが生まれていました。
とくにボッスン──もといスライムに対して、ヒメコが「いやもう ええから
」と乾いた優しい目で お金を渡す場面が最高です!
普段のヒメコだったら、ここは「ペロリポップ☆キャンディ(ペロキャン)」を渡しますよね。そこをお金──しかもファンタジィ世界で よく見る「ゴールド」ではなく お札な点も、「冗談ではないシビアさ」が出ていて笑えます。
最後の修業をした場面の回想でも、ヒメコは汗水垂らして──ぶどうを育てている。「いや なんでやねん! 関係あれへんがな!」と普段の彼女ならツッコミを入れる行動で、完全に笑いが完成しました!
『いぬまるだしっ』や『斉木楠雄のΨ難』・ほかの各種ギャグマンガでは、「2 ちゃんねる」などのインターネット上で流行しているネタをよく取り上げます。読者にも受けが良いのでしょう。
しかし、あまりにも「そのまま」出すことが多くて気になります。コミックスが出るころには風化しているし、何年後かに読んだ読者は首をひねるだけだ。作品は永久に残るのに。
──では、『SKET DANCE』は どうか?
今回は あきらかに『ドラゴンクエスト』を元ネタにしながら、完全に作者が自分のモノにしています。その点が素晴らしい!
この作品では いろんな題材を扱いながら、かならず独自な味付けをしています。そうしているうちに、パロディがパロディでは なくなっていく。
そして最近「今週号の○○は『スケダン』とカブっている」と気付くことが多くなりました。それだけ『SKET DANCE』が今の旬を正確に つかんでいて、多岐にわたる話題を取り上げているからです。
これからの新人作家が勝てるのか──!?
おわりに
「クエスト・ダンス」は 2 年後の続編を(最近は物語的に卒業へ向かう話が多いけれど)楽しみにしています!
──いや、マジで……。